日本のマスコミが詳報しているので皆さんもう御存知でしょうが、台湾の国会にあたる立法院(定数113)の選挙が1月12日に投開票されました。
3月に行われる台湾総統選挙の前哨戦という重要な意味合いをも持つこの選挙で、野党である中国国民党が全議席の三分の二を超える81議席を獲得するという歴史的大勝利を達成。
一方、選挙前から苦戦が予想されていた与党・民進党(民主進歩党)の獲得議席数は目標としていた50議席を大きく下回るわずか27議席にとどまり、陳水扁・総統が早々に大敗の責任をとって党主席を辞任すると発表しました。
もし私が台湾人だったら。……と考えてみました。
日本には台湾という隣国があります。しかしながらこの国家は、国際社会において国家として認知されることが少なく、日本も国交を結んでおりません。
しかも、中国によって根拠なきまま併呑されかねないという危険を常に抱えている国です。
中国は「併呑」の方法について、武力侵攻という選択肢を捨てようとはしません。つまり、いつ中国が侵略戦争を仕掛けてくるかわからない、という可能性の上に息づいているのが台湾という国家です。
ただし厳密にいえば、台湾も国家として正常なカタチを整えてはいません。中華民国という国名のもと、中国全土はおろかモンゴルまでをも領土と定めている憲法をいまなお有しています。正すべき虚構が、正されぬまま現在に至っているのが現状です。
むろん、虚構を正そう、正常な国家に生まれ変わろう、という動きは台湾人の中にあります。「正名・制憲」運動というのがそれであり、台湾に似合った国名へと改め(正名)、現状に則した新憲法を制定する(制憲)というものです。
と前々回書きましたが、台湾人・御家人は本省人として李登輝・前台湾総統の熱烈なファンである一方、「正名・制憲」の支持者であることでしょう。
選挙では死票になることを覚悟の上で、李登輝さんが支援する第三勢力の小政党・台連(台湾団結連盟)に投票し、実際に死票となって台連が保有していた全議席を失ったという選挙結果にガッカリしていることと思います。
「死票になることを覚悟の上で」
とは、今回の立法院選挙には小選挙区&比例代表制という、二大政党制を形成しやすい選挙システムが導入されたからです。この制度の下では、ミニ政党は往々にして二大政党の争いの中で埋没してしまうことになります。実際に選挙戦は民進党と中国国民党の一騎討ちという様相を呈し、台連をはじめとする小勢力はほぼ全滅状態となりました。
「正名・制憲」の支持者であり、二大政党制志向型の選挙システムである以上、現実的選択として民進党に投票するという手もあるでしょう。しかし台湾人・御家人はそれを激しく拒否しました。
憧れの李登輝さんが民進党路線と決別したという以前の問題として、民進党が分裂状態ともいえる内訌をここ何年も繰り返しており、誰が主軸なのかが不明瞭なほど迷走を続けていたことに嫌気がさしたからです。反感というべきかも知れません。
「台湾台湾というけれど、その台湾と台湾人を放り出して内部闘争に明け暮れているじゃないか」
という思いです。自分は中国人だとは全く思っていないので、中国国民党に投票することは絶対にありません。どうせ死票になるのだから投票所へ行かないという選択肢もありますが、有権者としての責任を果たすべきだとして台湾人・御家人はそれも拒否したのです。
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ちなみに職業はやっぱり地元出版社の一編集局長で、同時に旗下の何冊かの雑誌の中のひとつを編集長という形で直率している、という設定でよろしく(笑)。収入は中の上レベルで生活も安定していますが、不景気のため統括下にある各雑誌の販売部数と掲載広告数の伸び悩みに悩んでいます。
編集局が抱えている各編集部の部下たちは士気旺盛ながら、世相を反映して薄給に甘んじざるを得ず、可哀想なので台湾人・御家人はときどき無理をして大盤振る舞いをしてやります。部下たち、特に若手には「ちゃんとした仕事があるだけまだマシ」という気持ちが強いようです。残業で日付が変わったりすると、何人かを引き連れて大手ネットカフェで朝までネトゲに興じて憂さ晴らしをしたりもします。
それゆえ政府にはもっとマシな経済運営をしてほしいという思いはありますが、台湾人・御家人は気質的に「正名・制憲」の実現をより重視しています。ただし、性急にそれをやることで社会に激震が走っては困るという思いもあり、このあたりの心境はなかなか複雑です。
3月の台湾総統選挙については、京都大学の後輩というよしみで李登輝さんが謝長廷を応援することを期待しています。立法院選挙の敗戦の責を負って陳水扁が党主席の座を謝長廷に譲ったことで、民進党も少しは意思統一が図られて状況が改善するかも知れませんし、立法院で三分の二以上の議席をとった上に中国人・馬英九が総統になって、政権も議会も中国国民党一色というのは真っ平だという気持ちがあるからです。
ちなみに、台湾人・御家人は地元大学で日本語を専攻し,その後東京に留学した経験を持つ親日家です。高齢ながらも壮健だったいまは亡き祖父が留学中に来日して、祖父の戦友が祀られている靖国神社に二人で参拝したり、祖父の昔話を大人しく拝聴しつつ、東京観光をしたり富士山を遠望したりしたことを大切な思い出にしています。
……悪ノリしてきたのでこのくらいにしておきましょう(笑)。
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今回の選挙結果は、そう小難しい分析を必要とするものではないように思います。
与党である民進党と陳水扁・総統が余りにも情けなさ過ぎた。それが際立っていたために、比較的失点が少なかった中国国民党に、少々の期待と民進党への幻滅によって多数派の票が一方的に流れた。……これに尽きるのではないでしょうか。
中国国民党への一辺倒で台連など少数勢力に恩恵が回らなかったのは、二大政党制志向型の選挙システムによるものです。
民進党は政権党であることを忘れて党内部で複数の派閥が異なる主張を掲げて足の引っ張り合いを延々と繰り返した一方、陳水扁も現実からやや乖離した部分がありました。
出たとこ勝負や場当たり的な、ひいては支離滅裂めいた政権運営(その少なからずが民進党のお家事情の反映だったりもします)が特に2期目である過去4年間に目立ったことで、有権者からとうとう愛想を尽かされたといったところではないかと思います。汚職嫌疑などもありましたね。
台湾人意識の高まり、本土派の台頭という流れに上手く乗り、敵対勢力は統一候補を出せなかったことで共倒れになった1期目の陳水扁制権は、いわば政治主導の一種のブームが成立させたものです。
ただ当時、台湾企業からのオファーを受けてその会社の東京駐在員を務めたり後に現地で編集局長をやったりしていた私に言わせると、消費意欲の減退からくる各種大衆向け雑誌の販売部数減、というのは出版各社ですでにその気配をみせていました。
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その後の本格的な不景気に対して有効な対策を打てなかったことは明らかに陳水扁&民進党の失策であり、今回この点を衝いた中国国民党の戦術は陳腐ながらも妥当なものでした。
ただ2000年からの8年間を仮に中国国民党が政権運営を担当したとしても、現状に比べて劇的な改善が実現していたかどうかは疑問です。逆にいうと、難しい状況下で政権運営を行う破目になった民進党がババを引いたという面があると思います。
とはいえ接戦の末に総統選に勝利した2期目は台湾人意識や本土派がすでに定着し、いよいよ成熟した政権運営者としての能力を求められた4年間にもかかわらず、陳水扁も民進党も書生集団のまま成長できませんでした。
本来が中国国民党による一党独裁&戒厳令統治下で民主化運動に奔走していた活動家たちですから仮に行政手腕に乏しかったとしても不思議ではないのですが、有権者の期待を裏切ったことは事実でしょう。
その結果、前回の立法院選挙(2004年12月)で民進党は敗北し、中国国民党など野党連合に議席の過半数を奪われるという「ねじれ現象」が生じました。これによって陳水扁政権の政策運営がスムーズに進まず、本来し遂げたかった政策が実行できなかったのは惜しまれるところです。
ともあれこのため台湾人の多くを占める現状維持層(たぶんその多くが潜在的「正名・制憲」派=潜在的独立派)を「理想よりパン」に走らせてしまった、という面があると思います。
ただし、「理想よりパン」の一言で単純に片付けていいとは思えません。
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比例代表枠(34議席)だけをみれば、中国国民党が20議席をとったのに対し、民進党は4割ちょっとに当たる14議席を獲得しています。これだけをみると民進党は歴史的惨敗と表現されるような負け方ではありません。
「それでも14議席を確保した」
といっていいでしょう。そもそもこの比例代表枠における民進党の政党別得票率(36.9%)は前回選挙より1.2ポイント増えているのです。中国国民党も比例代表枠に限っていえば「衆望を担っての大勝」とはいえない成績です。
私が思うに、問題はむしろ「理想よりパン」となる以前に民進党の「理想よりドタバタ」が目立ったことで、現状維持層において「政治離れ」が進んだことかも知れません。
というのは、今回の投票率(小選挙区)は「60%を割り込んだ!」といわれた前回の立法院選挙(59%)よりもさらに低い58.5%。比例区は58.3%です。要するに有権者の4割強が投票所に足を運んでいません。
「微減」と表現することもできますが、総統選挙の前哨戦と位置づけられた今回の立法院選挙は前回とは重要度が違います。それにもかかわらず、なのです。
ちなみに総統選挙の投票率もついでに挙げておくと、2000年が82.69%、2004年が80.28%と立法院選挙とはまるで格が違います。その総統選挙の露払いとなる今回の立法院選挙の投票率が意外に低かったことは、もう少し注目していい事実なのではないかと思います。
ともあれ民進党はまず党内の意思統一を図った上で、適切な行政能力を有したオトナの政党として成熟することが望まれます。同時に「正名・制憲」を引き続き掲げるにしても、潜在的独立派を含めた現状維持層にも受け入れやすい方法論を改めて模索する必要があるでしょう。
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「歴史的大勝」といっていい圧勝ぶりを示した中国国民党は、議席の三分の二以上を獲得したことが最大の成果。立法院で三分の二が賛成すれば、総統罷免の是非を問う国民投票を実施することができます。そこで過半数の支持を得られれば総統解任となるのです。
この切り札を手にした意味は大きいでしょう。たとえ3月の総統選で馬英九が敗れたとしても、返す刀でバッサリ、ということが可能になるからです。
とはいえ中国国民党は、この大勝利を手放しで喜ぶ訳にはいかないでしょう。
選挙戦の勝利には国民党の組織力・資金力を生かした支持層固めがあったことは否定できませんが、民進党に愛想を尽かした現状維持層が二大政党制志向型の選挙システムのおかげで大量に中国国民党へと流れ込んだという側面も無視できません。
また、有権者の4割強が選挙にソッポを向いたという事実があります。過去2回の例に照らせば、3月の総統選挙にはその「4割強」の半分の票が選挙戦に新規参入してくる訳です。常識的にみれば、「選挙になんか、行かないよ」と今回背を向けた有権者の多くは、中国国民党の根強い支持者とは考えにくいでしょう。
それらが意味するのは、台湾人意識の定着した多数派から選択されたことによって、中国国民党はうかつに軸足を移したり舵を大きく切ることができなくなった、ということです。本土派の多くから得票したために、現状から対中融和路線へとシフトするにしても「中華民国」色を再び強化するにしても、ハンドルさばきに神経を使わなければならなくなります。
中国中国とあまり言い過ぎると、台湾人意識が浸透している多数派が逃げていくかも知れません。いきおい、今後の議会運営にせよ仮に馬英九が次期総統に就任したとしても、その政策には今まで以上に縛りが入ることになるのです。
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同時に、今回の大勝利を受けて、国民党内部でも本土派の台頭、あるいは本土派と中国人意識派の対立が強まる可能性があります。このあたりは流動的要素が多くまだ先が読めませんが、とりあえず本土派に配慮したスタンスをとらないと3月の総統選挙に影響が出るかも知れません。
このあたりの機微については中国国民党執行部もよく承知しているようで、総統罷免に関する国民投票実施動議を独力で成立させることが可能になったことを受けた呉伯雄・党主席は早くも、
「陳水扁総統の罷免に動くことはない」
と言い切っています。ただし今後、次期総統が誰になるにせよ、議会での数を恃んでこれまで民進党が進めてきた台湾本位型の教育改革や公共機関の改名(「中華××」→「台湾××」など)を白紙に戻すような動きに出ると時代に逆行することとなり、台湾人の一大反発を呼びかねないことでしょう。
私自身は、これだけの議席を獲得した中国国民党は国民政党としての意識を強め、それを行動で示す必要があるのではないかと考えています。積極的であれ消極的であれ自党を支持してくれた有権者に配慮して、現実に則して身軽になるべきではないかと思うのです。
台湾人意識がこれだけ浸透している以上、党名から「中国」の二字を削るべきではないでしょうか。
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台湾ではすでに「本土派」が主流であることが明確になっています。
常に多数派を形成する現状維持層の多くが中国との統一を望まず、台湾本位のカタチを守るべきだという意識が顕著になっているとすれば、民進党は「正名・制憲」を最終的目標に掲げつつも、より現実的なアプローチをとり得る成熟した政党へと脱皮しなければなりません。
中国国民党も台湾本位意識の定着を無視せずに「虚構」へのこだわりを排し、自らを投票結果だけではみることのできない真の民意にすり合わせるべく努力していく必要があります。
勝者も敗者も、進んで自らを変えていくようにしなければならない、ということです。
きたる総統選挙については、とりあえず大勝利の勢いに乗っている中国国民党が優勢というのが素直な読み方でしょう。ただし前例に照らせば、今回の立法院選挙に参加しなかった有権者の半数が総統選挙では投票所に足を運ぶことになるでしょう。単純にいえばこの層は全有権者の約20%という規模になりますから事態を流動的にする要素ということができます。
中国国民党は目下のところ「勝って兜の緒を締めよ」という姿勢ではありますが、今後2カ月間、本土派と中国人意識派の党内対立を押さえ込んで一枚岩でいられるかどうかがポイントです。
民進党は大敗によってそれまで党主席の椅子に執着しているとみられていた陳水扁があっさりと辞職しました。これは今回の選挙において、陳水扁の民進党に対する最大の功績といえるかも知れません。謝長廷を軸とする形で挙党体制が確立される可能性が高まったからです。
●中国国民党支持層とは考えにくい「全有権者のうち20%」が「新規参入」してくる。
●中国国民党は本土派と中国人意識派の内部対立を生起させずに一枚岩でいられるかどうか。
●民進党は「謝長廷体制」でしっかり意思統一が実現できるかどうか。
●「中国国民党が議席をとりすぎた」ことを受けて、有権者の投票性向が変化するかどうか。
……という4点が、現時点で考えられる総統選挙を左右する要因といえるかと思います。まだまだ先が読めない、というのが率直な感想です。
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余談として中国側の動きについて。現時点までは一貫して事実のみを伝える記事中心の抑制した報道に終始しています。余計なことを口にして台湾人の反発を呼びたくないからでしょう。3月の総統選挙が終わるまでこの姿勢が維持されるものと思われます。
話題をやや生臭いものにするとすれば、民進党の大敗によって対外強硬派の突き上げが弱まるであろうことから、胡錦涛はホッとしていることでしょう。
ただし同時に、中国国民党が勝ち過ぎたことに胡錦涛は当惑しているかも知れません。前述したように中国国民党は本来の支持層以外からの大量得票があったことで、現状維持から一歩踏み出すことが逆に難しくなる可能性があります。
「現状維持」が続けば続くほど、台湾人は中国本土の政治制度や価値観の異質さに違和感を強める機会が増え、台湾本位意識が高まることになるでしょう。本省人と外省人との垣根が低くなり、やがて「台湾人」でまとまっていくのは自然の流れ。それが中国の望む状況でないことは、いうまでもありません。
すでに掌中に収めている香港とは違って、中国は台湾に愛国主義教育を押しつけて若い世代から台湾人を馴化させていくことができませんから、指をくわえて眺めているほかないでしょう。中国国民党を通じた「遠隔操作」は、中国国民党が政策選択の幅が狭まるであろうことから十分に機能しなくなります。
放っておけば、
「あいつらとは価値観が共有できない。対話を成立させることのできない相手だ」
という結論に台湾人はやがて到達することになりかねません。……という流れに対外強硬派がいつ気がつくか。これは時限爆弾です。もし胡錦涛自体が台湾については強硬派なのであれば、事態はいよいよ剣呑なものとなります。いずれにしても、
「お前ら議席とり過ぎorz」
と困っているのではないかと思います。総統選挙で馬英九が勝てば、いよいよ困ることになるでしょう。
今年も御家人様のチナオチ、楽しく拝見させて
いただきたいと思います。
>台湾ではすでに「本土派」が主流であることが明確になっています。
とおっしゃっていましたが、
このあたりは実際のところどうなのでしょうか。
私の狭い視野では、
大方の台湾人の考え方として、
「大陸と統一するのはいや」
「でも経済の上で大陸をはずすことはできない。」
「統一とか独立よりも安定がいい」
「なんとなく中華、中国という名に愛着を
もっており、完全に捨てようにもすてられない」
こういった考え方を持った人間が多いように
感じます。かなり簡単に書きましたが、
こういうところが御家人様のおっしゃっている
本土化ということなのでしょうか。
かつて本土化=独立(形はどうであれ)と
いう単純な図式で考えておりましたが、
そうではないのでしょうか。
日本人の立場として正直、何を考えているのか
わからなくなります。
いくら民進党のグダグダがあったとはいえ、
本当に自分の国をなんとかしたいと
思うのなら、国民も、第三の選択肢を
選んでもよいはずだし、また李登輝氏も独自に
人材を発掘し、民進党、国民党へ対抗するための
布石として候補を立てることもできたのではないか
という考えが私の頭をよぎります。
このへん、御家人様はどうお考えになりますか。
今さら私が言うような事でもないですけど、中華民國軆制はレーニン・スターリン体制を擬似していますからあちこちに國民黨の組織が張り巡らされてますよね。四年前の總統選擧の際は連戦のポスターが台湾鉄路局の長距離特急列車に貼ってありました。今は大分改善されたのでしょうが、軍だってもともとは、「國軍」ではなく、「國民黨軍」ですからね。
以前の話題ですが、法輪功メンバーが来日中の中国の大臣に抗議するために神戸に集結してましたが、北京出身の女性メンバーと話しました。私は「台湾が好きで共産党が嫌い」とはっきり言いましたが、彼女は「台湾からも仲間がいっぱい来てます」と平気で言ってました。法輪功は反中国共産党の立場なら台独派ともダライ・ラマとも手を組む姿勢のようですね。ちなみにアメリカにいた頃反中デモに参加しましたが、三者が自然と集結してました。また、台湾副総統呂秀蓮が法輪功の修行している写真がサピオに載っていた記憶があります
余談ですが私は三年前に李前総統を、先月は謝候補を、いずれも京都で見ています。まあ、私は過去にはブルース・リーやジャッキー・チェンの映画に悪役で出ていた俳優も見ていて、「ミーハー的」感覚の持ち主ですが。
長々とすみません
「本土派」「台湾本位意識」というのはあくまでも私の個人的な定義ですが、「自分は台湾人だ。中国人ではない」という認識を身につけている人たちのことです。これに対し「中国人意識派」というの「自分は台湾に住んでいる中国人」という人たち。
「私は香港人」
「私は香港に住んでいる中国人」
という香港の図式に似ていますが、中国本土との接触が香港ほど緊密でない分、「中国人意識派」の「私は台湾に住んでいる中国人」という気持ちにはより強いものがあると思います。台湾は元々中共政権から分裂した訳ではありませんし中国本土と地続きでもなく、中国本土との接触は香港のように緊密ではありません。ですから総人口の8割以上を占める本省人にとって、「大陸と統一するのはいや」という意識はごく自然にあると思います。
「でも経済の上で大陸をはずすことはできない。」
というのは政治とはまた別の次元。日本でも中国で余程の動乱でも起きない限り、経済的に中国と簡単に縁を切ることなど無理、という考え方が一般的かと思います。ですから「本土派」「台湾本位」の人たちが同じように考えているのは全く不思議ではありません。ただ台湾は経済の対中依存度が日本よりずっと高いですし、それによる産業構造の空洞化への危機感もありますから、「これで大丈夫なのか」という声もまた日本より強いように思います。
「統一とか独立よりも安定がいい」
というのは、中国が武力侵攻という選択肢を未だに放棄していないから現状維持が望ましい、ということでしょう。台湾名義による国連加盟の是非を問う国民投票(入聯公投)の実施に対し世論調査で高い支持率が出ていることから、台湾を正常な国家として生まれ変わらせるべき、と考える人が多数派を形成していることは確かだと思います。ただそれで中国と戦争になっても困るので選挙などでは現状維持を選択しているのではないかと。
ですからやや粗っぽいものの「本土化=独立派(潜在的支持者を含む)」という表現は一応成立すると思います。ただ「独立」の方法論や目標とすべきカタチについては、恐らく「正名・制憲」が主流だとは思いますが、「中国との緩やかな連邦制」(台湾もまた国家として国際社会に認知されているという前提の下で)などもあって様々だと思います。
「なんとなく中華、中国という名に愛着をもっており、完全に捨てようにもすてられない」
という声は、私が公私両面で接触した台湾人たちの中には1人だけしかいませんでした。「中国人意識派」のタクシーの運転手で、私を新聞記者と決めつけて「陳水扁や李登輝みたいな奴ばかりじゃない。俺のような意見もあることをしっかり記事にしてくれ」と下車する間際に釣り銭を受け取った私の手をがっしりと握られてしまいました(笑)。
ただ実際のところ、台湾人にしても漢字を使っていますし、台湾語も福建の方言である以上、それら「中国的なもの」を完全に捨て去るということはあり得ない話でしょう。私が接触した台湾人たちもそんな極端なことは言っていません。ただ「中国人」と呼ばれることを嫌がり反発して「おれは台湾人だ。中国人ではない」と言い切っていました。もし中国が武力侵攻という選択肢を放棄するという夢のような話が実現すれば、台湾内の議論は「統一か独立か現状維持か」ではなく「独立」の方法論や目指すべきカタチをどうすべきか、という点に集約されていくと思います。
「本当に自分の国をなんとかしたいと思うのなら、国民も、第三の選択肢を選んでもよいはずだし、また李登輝氏も独自に人材を発掘し、民進党、国民党へ対抗するための布石として候補を立てることもできたのではないかという考えが私の頭をよぎります」
との御指摘は正しいと私も思います。しかし今回採用された小選挙区&比例代表制という二大政党制志向型の選挙制度下においては第三勢力を台頭させるというのは非現実的といえるのではないでしょうか。小勢力の地盤と組織力・資金力では二大政党になかなか太刀打ちできないという問題もあります。そのあたりの不満やある種の失望感が総統選挙の前哨戦にもかかわらず投票率が低かった、という点に反映されているのではないかと愚考する次第です。
これは「そういう人もいる」と片付けてしまってもいいのかも知れませんけど、一応まじめに考えてみるとすれば、どの方面について陳水扁をこき下ろしているのかをみてやる必要があります。台湾の政権担当者・政権運営者としての資質なら陳水扁は「泛緑」からダメ出しされても不思議ではなく、その対極として連戦なり馬英九の名前が挙がることもあると思います。しかし統独論争や台湾をどういうやり方で正常な国家にすべきか、というテーマであればまた別な話になるのではないかと思います。
民主化が実現されたとはいえ、中国国民党による一党独裁制の残滓がいまなお存在していることは事実だと思います。この点については「虚構」を改め「正名」を推進させた陳水扁・民進党を、台湾をより現実にすり合わせることに取り組んだという意味で評価すべきだと思います。
法輪功のことは私にはよくわかりません。東京の「正名・制憲」派はチベットやウイグルのグループと一緒に反中デモを打つことがあるようですけど、私が実見した限りでは法輪功系団体の参加は確認できませんでした。著名人との接触自慢なら私も負けませんけど(笑)、人名を並べてみても下らないのでやめておきましょう。
私は素人ですから分析なんてほどのことはできません。東京在住でもありますし、だからといって岡目八目の利を生かせる頭もないですし。ただ中国国民党が意外な層を取り込み過ぎて逆に身動きが取れにくくなる、ということは素直に眺めてみて得た感想です。それから民進党にお灸をすえるつもりで中国国民党に投票した有権者は同じ投票行動に出た人が余りに多いことにビックリしていることでしょう。選挙結果に「それなら民進党に入れておくんだった」と悔やんだ人は少なくないと思います。その悔やみが3月の総統選挙に反映されるかどうか、興味深いところです。
実はこのエントリーを書き終えてから中国国民党のくだりは毒林檎(香港)あたりなら売れるだろうと思って中国語1200字に仕立て直すべく想を練っていたのですが、更新された14日付の電子版をみたら連載コラムを持っているチャイナ・ウォッチャーが似たようなことを書いていてガッカリです。じゃあ『明報』いこかと思ったら社説が固まっているので無理ぽ。台湾の『自由時報』あたりならハードルが低いですし泛緑へのエールにもなるかも知れませんけど、所詮は小学生の作文のようなものですから掲載されて笑い者になるのもちょっと。……てな訳で今回はコソーリ活動を断念。でも未練がましく香港の月刊誌を狙う気になるかも知れません(笑)。アドさんその節はまたよろしくお願いします。m(__)m
それにしてもいいですねー台湾在住なんて。日本に戻ってからなかなか東京を留守にできない仕事になってしまったので恋しさが募るばかりです(笑)。昔の仲間が散発的に遊びに来てくれるのがせめてもの慰めになっています。年末進行に追われつつ、旧正月休みに誰か来るんじゃないかといまは楽しみにしているところなのです。きっとまた冥土喫茶に連れて行かれるんでしょうけど。orz
もちろん目的はミーハーですが。
往きの機内で読んだ自由時報には投票を呼びかける檄文としか思えないような過激な見出しが並び、到着した台湾にはあのでかでかとした広告看板。
残念ながら投票日当日だったので噂の選挙カーはTV画面で見るだけでしたが日本の選挙速報は投票が締め切られた夜からなのに台湾では投票日当日の午後から選挙一色なのですね。
それが何処のチャンネルも緑惨敗の文字ばかり。
さすが大陸御用だけのことはある、という感じでしたわ。(ここは日本も偉そうなことは言えないけど)
私と同行者は藍色圧勝に「馬英九の人当たりのよさ(一見)とパフォーマンスに騙された人が多いんじゃないか」などと愚痴をこぼしておりましたが御家人さんのそうそう急激に変われないだろう、とのお言葉でなんだか安心しています。
ところで、本来のミーハー活動ですが東京公演を観に来た台湾や香港のファンから「日本はノリがよくて羨ましい」と常々言われていたんですが衛星頻道で東京公演の模様が放送されたこともあり、今回台北の観客が一気に東京に近づきました。
アップテンポの曲には立って一緒に踊る、でも基本的に自分の席から前に行かない。素晴らしいです。
香港公演で以前はほとんど居なかった大陸の観客が今回は毎回かなりの数居て、その所為でエリア毎に柵とガードが付いてる。どんどん前に来て気が付くと席数より人が多いなんて今までありえなかったことが今回は起きています。
それに引きずられて香港人のマナーも悪くなっているような。
そろそろ広東語学習は北京語学習に切り替えの時期なんでしょうかね。
あ、でも習うとしたら北京風巻き舌は嫌です。おっとり台湾風を習いたいですね。いまさら簡体字を覚えるのも大変だし。
『自由時報』は台湾紙の中では確かに異色。でも台湾の色がいちばん出ているように感じられるので好きな新聞です。
ところで台湾でコンサといえば野外、というイメージが強かったのですが、ちゃんとした入れ物があるとは知りませんでした。「日本はノリがよくて羨ましい」ということは、台湾の観客は割と大人しく拝聴するような感じだったのでしょうか。マナーをわきまえているところは大陸の連中との明らかな差ですね。民度なのでしょうか。香港のファンが少しずつ大陸風に染まっていくのは見たくないですね。
>そろそろ広東語学習は北京語学習に切り替えの時期なんでしょうかね。
配偶者が広東語を教えているので何となくわかるのですが、やはり「流星花園」~F4で劇的に変化しましたね。香港迷がつい浮気して、気付いたら深入りして本気になっていた、といったところでしょうか(笑)。明星の層の厚さも香港を引き離しつつありますし、台湾の明星は自分で曲書いたりしますし。それから広東語では中国語の文章が書けない(台湾人には通じにくい)のもイタいところですね。
あと映像面でいえば台湾は特に台北でロケ地に恵まれています。この違いは絶大ではないかと。尖沙咀のスターフェリー乗り場から新世界あたりまでの遊歩道とか尖東の歩道橋とかセントラルの動く歩道?とか、香港はそういうのばっか。最近は華仔があの歳で頑張っているのが痛々しくみえてきているのです。
成田までお出迎えの際は是非事前に御一報下さい(目印つきで)。めざましTVとかチェックしておきますから(笑)。
ちなみに新嘉坡は私は行きませんでしたが朋友が行っております。私は香港台湾の他は馬來西亞(雲頂)くらいですね。ww
台北は小巨蛋なる大きいんだか小さいんだかはっきりしろ!と言いたい名前のアリーナが2年ほど前に完成しております。
1万人規模のイベントが室内で出来るようになりました。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。