台湾の選挙、緑陣営(独立志向派)が負けてしまいましたね。
正直、ひどくガッカリしまして、それが未だに尾を引いている感じです。
「台湾立法委員(国会議員)選挙は、台湾派が配票の失敗で高票落選が相次いだため、議席を伸ばすことができず、野党の親中国派に敗北を喫した。」
と、メルマガ『台湾の声』は選挙速報で総括しています。
http://www.emaga.com/info/3407.html
また配票の読み違いですか。9月に行われた香港の立法会選挙(一部議席だけ直接選挙)も、民主派が同じ理由で伸び悩み、思うような結果を得られなかったんですよね。あれにもグッタリきましたが、香港なんて所詮は中共の植民地。中国語でいう「死路一條」(後は落ちていく一方)の夢も希望もない場所ですから、どうでもいいんです(※1)。
台湾は違いますよね。夢や希望があって親日的であることは措くとして、何より日本の国益にも関わってくる大事な国ですから。無念ですねえ。
――――
という訳でモチベーションがかなり低いんですけど、書きたいことはあるので本題に入ります。「中国の主権と領土保全に危害を及ぼす内容」を含んだゲームが発禁になった、という話が前回ですから、今回はやっぱりこれしかないでしょう。
「国家の尊厳を傷つけ伝統文化を辱める内容」を含んだテレビCMの放映禁止。
ええ、例のナイキのCMです。前にトヨタなどもやられていますが、「いかにも」な難癖をつけられて、謝罪するまで叩きに叩かれるというパターンに今回も相成りました。
槍玉に上げられたCMは日本でも放映されているので、御覧になった方も多いかと思います。NBAの若手筆頭格であるレブロン・ジェームズ選手が、ブルース・リーの「死亡遊戯」を彷佛とさせる「恐怖の部屋」にて、バスケ勝負で難敵を退けつつ上の階へと進んでいく、あれです。
細かい内容とかコンセプトといった詳細は公式HPでどうぞ。
http://nike.jp/nikebiz/news/bsk_041029.html
――――
で、何が問題かというと、強敵の中に中国人とおぼしき使い手や中国を象徴するドラゴンなど、要は中国風味のキャラクター(※2)が登場してきて、それがアメリカ人に次々と撃退させられるところが気に入らないようです。
まあ、中国型「プロ市民」や自称愛国者の糞青(反日信者)に特有の妄想が発動したという訳ですが、そういう「専門職」の連中が騒ぐことで、
「言われてみれば……なるほど確かに不快だ。許せん」
と思うようになる一般市民が出てきます。それら「素人」を次々と巻き込みつつ、狂躁の渦がどんどん拡大していくのです。ええ、同時に「悲壮」「屈辱」「憤激」「中華思想」といったお決まりの「支那属性」(だって当時は支那って呼ばれてたしぃ)を沸騰させながら、です。
新華網の記事(下記URL)を参考に、例によって時系列であとづけてみます。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/09/content_2313780.htm
――――
●11月下旬
問題のCM「恐怖の部屋」が中央電視台のスポーツチャンネルや地方のテレビ局で流れ始める。
●11月26日
『華裔晨報』が「中国人を侮辱するかの如き某CM 打ちのめされる『中国のイメージ』」と題した記事で、「恐怖の部屋」に妄想的解釈を施し(※3)、それを端緒に抗議の声が出始め、瞬く間にヒートアップ。
●11月30日
ナイキが声明を発表。「恐怖の部屋」は、困難や恐怖に立ち向かう勇気を持って人生を歩んでほしい、というメッセージの発信がコンセプトであり、中国人や中国を侮辱するものでは全くなく、関連部門による様々な審査をパスした法的にも問題のない広告だと訴える。
●12月3日
担当部門である国家広電総局が「CM『恐怖の部屋』を即刻放映禁止にすることに関する通知」を発令。同CMは中国国内で放映禁止となる。
●12月9日
ナイキが「恐怖の部屋」について公式に謝罪。
――――
ちなみにナイキの最初の声明(11月30日)から12月9日に謝罪声明を出すまでの間、「専門職」によるネット上での非難攻勢はお約束として、マスコミもこのテーマについて論じる記事が多数ありました。
「愛国者の言い分」
「テレビ局の見方」
「関連部門の見解」
「クリエイターの意見」
と異なる立場からの声を紹介。中には「思い込みがすぎる」という冷静な意見もありましたが、トヨタなど過去の例をひきつつ、「作り手の配慮が足りない」「中国の事情を理解していない」と指摘する声がもちろん多数派で、
「だから外資系企業はもっと中国について学ぶ必要があるのだ」
と、最後はやはり中華思想に行き着いてしまいます。それでもマスコミの報道が曲がりなりにも多角的な切り口であったのは、多分ナイキが日本の会社じゃないからに違いありません(笑)。
――――
ナイキの対応も日本企業とは随分違ったものでした。抗議の声が多数寄せられてもすぐ謝罪モードに入ることなく、まず堂々とCMのコンセプトに関する主張を展開したあたりは見事なものでした。それゆえに、
「自説に固執して悔い改めないナイキ」
などと叩くメディアもありましたが、自らもクリエイター(メーカー)であるナイキが、広告をひとつの作品として捉え、その内容に自信と思い入れを持っていたからこそ、非難の中でも胸を張っていられたのだと思います。
それではなぜ最後に謝罪したのかといえば、国家広電総局が同CMに違法認定を下し、放映禁止にされたからです。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/08/content_2310135.htm
えーと、その根拠は「ラジオ・テレビCM放送管理暫定規則」の第6条、
「ラジオ・テレビCMは国家の尊厳と利益を擁護し、祖国の伝統文化を尊重しなければならない」
さらに第7条、
「民族の習慣、風俗を冒涜する内容を含んではならない」
に違反した、とのことです。
――――
審査をパスしたからこそ放映できたCMに、コロリと態度を変えて違法認定する当局はカコワルイとしかいいようがありませんが、そうせざるを得ないほど、抗議の声が渦巻いていたということなのでしょう。
現今の社会状況に照らせば、こうした不満が何らかの弾みで「反政府」ひいては「反中共」に転じる可能性もありますから、まずそれを未然に防がなければなりません。そういう政治的判断が、国家広電総局よりもずっとずっと高いところで下されたのではないかと思います。
――――
それにしても、妄想と支那属性を混ぜ合わせつつ集団で虚構に酔ってしまうあの悪癖、まさに民度のなせる業(香港や台湾ではああならないでしょう)としか言い様がありませんが、何とかならないものでしょうか。赤い手帳を片手に馬鹿踊りに狂っていたころから進歩していないじゃないですか。
そのくせ道具は大幅に進化を遂げていますから始末が悪い。情報にせよ狂躁にせよ、30余年前なら村単位からせいぜい県単位ぐらいでしか共有されなかったものが、いまならネットがありますから一瞬で全国的なムーブメントになるかも知れないのです。
民度が向上しない一方で道具だけ進化することによる弊害は、例えば犯罪記事などを漁ればいくらでも出てきます(※4)。まあその話は別の機会にするとして、実は今回の事件で感じたことがもうひとつあるのです。前回の前座に出た署名論評と同じ流れの中での事象だと思うのですが、気になる動きです。まだ小ネタ(情報が少ない)なんですけど、機会をみて取り組みたいと思います。
台湾の選挙結果を引きずりながら結局またダラダラと長く書いてしまい申し訳ありません。寝ます。
――――
【※1】香港にはたくさん友人がいますけど、他国(例えば豪州、カナダ、台湾など)のパスポートを持っている奴らばかりですから。みんな親の代で香港へ密入境していて、香港に生まれ故郷としての強い愛着(というか香港を「中華」とするような妙なプライド)を持っているのは確かですが、機を見るに敏な連中なので、いざというときの逃げ足は速そうです。
【※2】中国人にはそう見えるんだそうです。でも、それはあくまでも中共統治下に生まれ育った「素の中国人」であって、英国と日本からそれぞれ薫陶(植民地の肯定すべき部分)を受けた香港人と台湾人にとっては、全く気にならないようです。「何それ?」「そりゃ基地外だよ」というのが「素の中国人」の反応に対する私の友人たちの感想です。現地のBBSをのぞいてもそういう反応が主流になっています。
【※3】http://news.xinhuanet.com/sports/2004-11/30/content_2276652.htm。記事を書いた記者は多分江沢民チルドレン(亡国の世代)でしょう。こういうネタをやりたくてウズウズしていたのに違いありません(笑)。
【※4】犯罪ではありませんが、以前紹介した海南島の観光業者によるデモ(「働く時事通信」2004/12/09)も、ネットで檄を飛ばして参加を募ったら500人も集まったのです(まるで大規模突発OFF)。より顕著な例として西安の日本人留学生をめぐる騒動や珠海の集団売春に関する騒ぎがありますし、「反日」が絡まないうえ良性のベクトルとなったケースには、地方の高級幹部夫人が農婦をBMWで轢き殺した「宝馬事件」の真相究明活動などがあります。
| Trackback ( 0 )
|
アメリカがイラクでてんてこ舞ってる今独立派が勝っちゃったらナイキのCMごときでウダウダ言う中国国民がどんな風になるのか、
その結果共産党がどのような行動に出るのか……。
台湾が独立したら香港やチベットも黙っちゃいない、各地で独立の波が高まり内乱が勃発するって言われてますし。
まあ即効ミサイルが飛んできたりはしないでしょうが軍艦の1ダース位は並べそうですよね。
戦を仕掛けるなら万全の状態でやるのが吉かと。
しかし今の小泉・ブッシュ蜜月関係の間なら台湾独立は可能じゃないかと言う希望もあるなぁ。
イラク……。
御高齢ですし、今回の選挙に全てを賭けていたような印象がありますから。
民進党との連立与党と言われていますが、連立といえるだけの選挙協力もなくて、票の喰い合いをして互いに伸び悩んでしまった感じですね。――今さら言っても詮無いことですね。
流れとしては結構追い風だと思っていたのですが、ここは台湾の有権者が下した判断を信じることにします。