日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 どうもすみません。「少しずつ更新していきます。」と書いておきながら、はや土曜日になってしまいました。

 体調は回復しているのですが、頭の方がちょっと……。前週来の「まとまった仕事」にようやくケリをつけた、というか先送りに成功したばかりで、まだ余熱が散じていない状態なのです。

 これは副業の方からの依頼で、中文コラムとは別に編集部の示すテーマに沿ってあれこれ書いてくれ、というもの。むろんチナヲチ(素人の中国観察)とは全く無縁のジャンルです。ただ「ヲチ」という点は一緒。とりあえず示されたテーマの中のひとつについてあれこれ書いて出しました。

 ところが聞いてみると一応書籍の形態をとっているらしいのです。私はその全体像を把握しようと「ちょっと構成を見せてみろ。見せなきゃ書かないぞー」と駄々をこねました。それで企画書めいたものに目を通すことになったのですが、その種の読み物としてはかなりズレている部分と、時期的に合わないという印象を受けました。時期的に合わないのは編集部も承知しているようですが、それでも1冊出しておきたいという御家事情があるようです。

 この時期に私を急き立てるのは7月に「書展」(ブックフェア)という香港最大級のイベントが開かれるからでしょう。この「書展」、1日平均入場者数だと確かTMS(東京モーターショウ)を上回っている筈で、毎年、大人しく行列して入場待ちをしている香港人の長蛇の列という珍しい光景を目にすることができます。

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 東京のブックフェアと違って香港の「書展」は基本的に「B to C」。要するに出版社同士の商談の場ではなく、出版社と読者が交叉する舞台です。香港は狭い割に、あるいは狭いがゆえに書籍流通は未成熟で、目にしたときに買っておかないと後で取り寄せが利かない、ということがままあります。

 ……で、来場者たる「読者」はそういう本が売られていることや特売、それに著者サイン会やイベント限定本などを期待してどっと押し寄せることになります。出版社からすればこれは絶好の商機。在庫になってしまった雑誌のバックナンバーを売りさばくという一掃セールでもあります。また、このイベントに合わせて本を出せば普段より好調なセールスが見込めます。

 それで編集部は私を急き立てた訳ですが、「お前ら慌ててこんな本出すくらいなら雑誌で特別企画を組んだ方がいいぞ。本は来年の『書展』に合わせて書いていけば時期も合うし絶対いいものが作れる」と懇々と説きまくり、ようやく企画を先送りさせることに成功しました。

 ただ私はもう中国語でたっぷり書かされています。それは雑誌の特集に回せばいいのですけど、書いていたこちらはクールダウンが必要になります。

 私にとっては稚拙ながらも中国語を書くという作業、これもまた「海軍カレー&海軍コーヒー&零戦」には劣るものの一種の愉悦です。ただ集中力が必要ですから、反日サイトで糞青ども(自称愛国者の反日信者)と戯れるのならともかく、仕事としてその作業をやり終えると何やらボーッとしてしまい、しばらく別のことに手がつきません。昼夜ぶっ通しでやるので床に入ってしまえばいいのですが、まだピリピリした状態が持続しているので眠ることもできません。ただあれはあれで達成感を伴う楽しい時間ではあります。

 ……要するに更新が滞っていたことに対する言い訳を長々と書いているのですが、そういうクールダウンに加えて、中国問題という全く異なるジャンルにシフトチェンジするのも容易ではありません。今週も記事集めという日課は欠かしませんでしたが、興味のある記事に目を通すということまではできませんでした。

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 雑談を続けることになりますが、先日配偶者(香港人)の従妹から電話がありました。幼少のころから配偶者によくなついていたので従妹でも配偶者を「姐姐」(お姉さん)と呼びます。ですから私は「姐夫」。

 ……で、たまたま私が電話をとったので、いい機会だと思って北京語での会話を試みました。いま香港では確か小学校から北京語が必須科目になっている筈です。従妹はハイティーンですからそのカリキュラムで育成された世代ということになります。

 すると驚いたことに、香港人である従妹がペラペラと流暢に北京語を扱うのです。私がコラムを連載している雑誌の編集長が実戦で身につけた北京語よりずっと上手なので私はあんぐりです。

「でもお前、その発音は台湾なまりだな。語尾でわかる」

「そうなの?……あ、それたぶん台湾のドラマが好きでいつも観ているからだと思うよ」

 などと会話しました。語学教室に通っていた人は別として、これまで香港人の北京語といえば両手で耳を押さえたくなるような「やめてくれー」的な発音にばかり接してきた私には大きな驚きでした。香港が名実共に中共の植民地と化しつつあることの証?そんな野暮なことは言わずもがなでしょう。

 本物の「植民」だって着々と進行しているのです。観光客として香港に入った中国本土の妊婦が香港で子供を出産すれば、その赤ん坊は香港人扱いになります。おかげで産婦人科のベッドが占拠されてしまい地元香港の妊婦が困っているというニュースも一時期大々的に流されました。

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 ここで話題を転じます。4月5日は中国で言うところの「清明節」でした。お彼岸のようなものです。

 ちなみに1989年6月4日の天安門事件は「第二次天安門事件」とも呼ばれています。「第一次」は1976年4月5日。1月8日に死去した周恩来首相(当時)を追悼する意味で人民英雄記念碑に市民が自発的に花輪等を持ち寄り、自作の詩を捧げるなどして賑わったのですが、これは文革末期の江青をはじめとする「四人組」に対する無言の批判でもありました。

 少なくとも政権を牛耳っていた「四人組」はそうみなし、「反革命活動」だとして公安(警官)多数を現場に投入、流血の惨事となりました。これが「第一次天安門事件」です。私は上海に留学中、時勢に敏感な学生の多い大学ならこの4月5日に壁新聞でも貼り出されるのではないか、と期待して授業をサボり市内の大学巡りをしたものです。

 そのときは結局空振りに終わったのですが、その10日後に胡燿邦・前総書記(当時)が死去し、それが第一次天安門事件における周恩来の役割を果たして私もとんでもない場所に居合わせてしまうことになるとはさすがに予想できませんでした。

 ●昔話その1(2004/10/29)
 ●昔話その2(2004/10/29)

 さてさて「清明節」。お彼岸のようなものと書きましたが、中国本土でも香港でも先祖のお墓参りに出かけます。おかげで当日は深センのボーダーが香港からの人津波で入境手続きは大渋滞。香港人の多くは先代か先々代が広東省からの密入境者ですから、お墓は広東省の故郷にあるのです。

 ちなみに香港ではこの「清明節」に植民地時代の名残であるイースターを組み込んだ4連休(今年は週末と重なったので5連休)。この期間に桜見物を見所のひとつとするツアー客もたくさん来日します。中国本土でも「清明節」を休日にすべきではないかという議論が最近起きています。

 ともあれ私は由来を知りませんが、「清明節」は中国人古来の伝統行事、ということになるのでしょう。

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 ところが、この「清明節」に異を唱える主張が台湾から飛び出しました。台湾独立派系の新聞『自由時報』の社説です。

 ●清明節の墓参は民間のプライベートな行事という扱いに戻すべきだ(自由時報 2007/04/07)
 http://www.libertytimes.com.tw/2007/new/apr/7/today-s1.htm

 「清明節」は中国人の伝統行事にすぎない。ここは台湾だ。原住民もいる。原住民は「清明節」と無縁だ。さらにいえば台湾は元々それら原住民が住んでいたところに漢人が移住し、地元民と結婚することで融和していった。これが台湾人のルーツだ。だから台湾人を純粋な中国人とする見方は史実に合わない。……ということで、台湾人の本土意識に照らせば「清明節」などは民間のごくプライベートな行事という扱いにすべきだ、といった趣旨です。

 いま「台湾は台湾人の国」ということで、第二次大戦後の国共内戦に敗れて台湾に押し入ってきた外来政権たる国民党、その象徴的存在である蒋介石の像を撤去しようとか蒋介石の名にちなんだ空港や施設の名前を改めようという動きが台湾独立派である与党・民進党の主導で進められています。今回の『自由時報』社説もその線に沿ったものといえるでしょう。

 ああ、違うな。やっぱり台湾は香港とは違うんだな。……と、こういう場面に出くわすと改めて思います。

 例えば香港で世論調査をやると7割以上の香港人が台湾独立に反対と答えています。台湾の蒋介石像撤去運動のような中国色を薄める動きは政治主導のものとはいえ、もし台湾人に対してその是非を問えば、「7割以上が反対」ということはまずないでしょう。

 この動きがさらに進めば、公用語の筆頭に台湾語(ミン南話)が据えられることになるのでしょうか。

 私は台湾の出版社で仕事をしていたとき、社内で台湾語を耳にしたことが1度もなかったのは台北だったからなのかどうか、終始仕事漬けで台北からついに出ることがなかったため私にはわかません。私のいた出版社では、私の編集局に属する部下たちはもちろん、私に遠慮する必要のない別の編集局の方からも北京語しか聞こえてきませんでした。

 ただ、テレビには必ず字幕がついていました。北京語を話せない人や客家に対する配慮だと思います。李登輝氏も総統時代、しばしば台湾語で演説していて、私はその内容を字幕で追った覚えがあります。

 台湾ファンとしてはやはり台湾語が話せる方がいいでしょう。この歳になって語学を初歩からやるのは非常に辛い作業ですけど、取り組んでみようかなと考えたりもしているところです。でもやっぱり時間とれないだろーなー。




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コメント
 
 
 
Unknown (中華好き(台湾・香港限定))
2007-04-08 04:25:42
初めまして。
リンクを辿ってこちらにお邪魔するようになったのは去年秋頃、過去ログを拝見させていただいていたら某所の「半年ROMってろ」を実践してしまいました。
元々は香港映画から入ったのであまり大陸は関心がなかったのですが、昨今の情勢で香港映画人は続々と大陸に出稼ぎに出かけるようになり、大陸方面の記事を探すうちにすっかり自分自身が大陸ネタに嵌っております。
愛する人が香港人なので(って俳優ですが。笑)、広東語を少々話しますが未だに片言のままです。

台湾語の件ですが、友人が台湾人と結婚して高雄に住んでおります。台北あたりですと北京語で済むようですが、高雄は外向きには北京語を使ってくれるものの親戚が集まるとほぼ全編台湾語で会話には全く付いていけない、と嘆いておりました。
バラエティ番組でも台湾語で喋ったりしてますから、北京語はなくならないでしょうが台湾語の比重は上がるかもしれませんね。

ところで、6月に張學友が来日公演しますが御家人さんは興味はないですか? ちょっと観客動員に難があるとの噂を聞いているのでプロモーションなどして見ました。

最初から長々失礼いたしました。
 
 
 
おっ張学友ですか。 (御家人)
2007-04-08 05:33:32
>>中華好き(台湾・香港限定)さん
 はじめまして。「半年ROMってろ」っていうのは意味がよくわかりませんけど、ここはそんな敷居の高いブログではないので、遠慮なくコメントを寄せて頂ければ幸いです。機嫌の悪いときに悪意を込めたコメントに出くわすと「斬り捨て御免」にしてしまいますけど(笑)。

 台湾語は南部でよく使われているということは台南出身の部下から聞いたことがありますけど、やはり素になると台湾語なんですね。台湾の老世代に日本語で話しかけられると嬉しく感じるように、台湾語で話しかけたらきっと向こうも親しみを感じてくれるんでしょうね。

 張学友。四大天王のひとりで、一番歌が上手な人ですね。私は4人の中では劉徳華贔屓ですけど、なぜか張学友のピアノスコアを持っています。あとCDを1枚。右サイドの「記事漁りの友・音楽CD」にも収めてありますけど、ベタに弱い私はもちろん「傷離別 離別雖然在眼前 説再見 再見不要太遙遠」くらいは歌えます(笑)。「モンコック・カルメン」(今すぐ抱きしめたい)のネジが飛んだような演技が個人的には好きです。実は配偶者が学生時代ファンクラブに入っていて、香港にいたころホンハム体育館のコンサートを配偶者を含む香港人たちと観に行ったことがあります。まだ歌手活動をしているとは知りませんでした。

 お好みの俳優さんはどなたでしょう。私の周囲だとイーソンとか黄秋生とか渋好みの人が多いです(笑)。あとは故人ですけど張国栄を慕うファンのエネルギーには圧倒される思いです。私には特定の好みはありませんけど、梁朝偉の出ている映画が好きです。それに梁家輝が絡むと楽しいのでもっと好きです。
 
 
 
楊丞琳(Rainie レイニー・ヤン)の問題発言って? (損政好)
2007-04-09 01:16:00
いつも楽しく拝読させて頂いております。

「流星花園」に出てた娘ですけど、
御家人様、この発言と問題の背景についてご解説頂ければ幸いかと。。。

MyPersonalLinks+ 楊丞琳(Rainie レイニー・ヤン)ってどうよ?~ビビアンスー、インリンに続く台湾アイドル~
http://blog.goo.ne.jp/ykimata/e/f9af0be7534fbb88863ab0114986bb4e
 
 
 
Unknown (胡弓弾き)
2007-04-09 09:50:43
御家人様。いつも拝見させていただいております。
台湾人の家内をつい最近持ったものとしては、
やはり相手の親御さんの言語が台湾語であることを
考えると、どうしても台湾語を勉強しなくてはと
思い、少しずつ勉強しています。
ただ、あの発音の難解さには、正直苦労して
おります。

やはり北京語とは勝手が違いますし、「香」という
字でもあれだけ破音字が複雑だと、それだけで
音をあげてしまいそうです。

 
 
 
Unknown (御家人)
2007-04-11 09:03:39
>>損政好さん
次回のネタにさせて頂きました。基本的には中国人の民族的疾患がまた発作を起こしてしまったと、「馬鹿だなーこいつ」と笑い飛ばすことのできない政治的な余裕のなさによるものかと愚考する次第です。


>>胡弓弾きさん
 台湾語は難しそうですね。特に北京語の素地のある人には辛いと思います。私は広東語で北京語の発音が崩れてしまったという忸怩たる思いがあるので、台湾語に取り組みたいなあと思いつつも躊躇してしまいます。時間的余裕がないということもありますけど。

 奥様が台湾人というのは羨ましいです。仮に私の配偶者が香港人でなく台湾人であれば、配偶者の祖父母とは日本語で会話したり、一緒に童謡や軍歌を歌ったり、東京観光に来たら一緒に靖国神社に行けるのになー、楽しいだろうなー、と思ったりします。ところがよくしたもので、いまはその代わりを全て恩師が務めてくれています。私は果報者です。
 
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