土曜日ですから雑談とさせて頂きます。
ホットな話題というか何というか。……とにかく最近はニュースが盛り沢山です。内憂外患でいえば中共政権にとっては「内憂」が際立ったという印象でしょうか。
吉林市の化学工場爆発で松花江が汚染されたのを隠蔽し、明らかになってみればロシアとの国際問題に発展しかねない様相。隠蔽には色々裏事情があったのでしょうが、それを一身にかぶって吉林市副市長が自殺しました。一方で相次ぐ炭鉱事故、勝利油田のリストラ工員の陳情騒動、そして広東省汕尾市で起きた農民たちを武装警察が突撃銃で掃射した事件……。
一言でいえば、二十余年来の改革開放政策の膿が極端な形で一気に噴出したという観があります(膿と違って噴出しても決して快方には向かいませんが)。いずれも一党独裁という制御装置を持たない政治制度が市場経済というメカニズムに乗ったことで生まれた暴走と、その結果です。汕尾市の銃撃事件も汚職疑惑が発端でしたね。さらに遡ってみれば闇炭鉱や炭鉱に絡んだ官民癒着があり、土地収用をめぐる汚職と強制執行での官民衝突があり、農民による民主化が潰されました。
一方で各地での爆発事件があり、重複投資に代表される地方政府の強い開発欲求とそれを抑え込もうとする中央への抵抗があります。適度に減速しつつソフトランディングする筈だった経済は、中央たる胡錦涛政権の統制力の弱さもあり、減速はおろか昨年を上回る勢いの爆走ぶりです。
そうした弊習を荒療治で改めて一気に構造改革を成し遂げるのが胡錦涛政権のテーマだと思っていたのですが、あれやこれやで……もはや遠い昔の夢物語になってしまいました(笑)。
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勝利油田の陳情についても実は笑えない事件です。不景気のためリストラされた工員は、解雇時に年功を積み上げてもらい、その分の給与+補償金を支払われて退職しています。それが好況に一転したことで「それならもっと寄越せ」というのはムシが良すぎると思う一方、カネは払ったものの再就職などのケアを行わなかった地元政府と勝利油田の冷たさを考えてもいいかも知れません。
とは、リストラ工員たちは恐らく40歳-50歳ないしはそれ以上の世代だと思うのですが、この世代にはかつて「社会主義の優越性」と謳われ、住宅から福利厚生まで丸抱えでもちろん終身雇用は常識といった「国営企業」の感覚が身体に染み付いているだろうと思うのです。だから「民営企業」とか「失業」といった以前は存在しないとされた事象がどうにも実感できない。実感できないまま解雇され、解雇されてみてから呆然としたのではないでしょうか。
事件の詳細は明らかではありませんが、解雇となれば住宅から何から取り上げられて路頭に放り出されたとしても不思議ではありません。再就職も難しい年齢ですから退職すれば自動的に失業者となり、それゆえ困窮一直線。……というケースが多かったのではないでしょうか。
中共政権下でも現在の若い世代なら、そういった新しい世間の仕組みを頭で理解できますし、実感もできるのでしょう。でも40歳以上の世代にそれを求めるのは無理というものです。この価値観あるいはルールの急激な変化についていくことができない結果として大挙陳情という行動になったのではないかと思います。……私は所有制改革が本格化する以前の国営企業労働者、といった世代を知っているので、ついそんな風に考えてしまいます。
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それから広東省汕尾市・東洲鎮の事件について。本当は木曜日に日中関係のネタを用意しておいたのですがこの事件のおかげで吹っ飛ばされてしまいました。今朝の香港紙(2005/12/10)は電子版をみる限り親中紙と『星島日報』以外はこの事件を報じています。前回登場した右胸を撃たれたものの一命をとりとめた唐氏の写真、これは香港のケーブルテレビ局「有線電視」が撮影したものを『蘋果日報』がキャプチャーして使っていました。他に病院で泣き崩れる女性たちの姿もありました。
正確な死傷者数は未だに不明のままで、前回のコメント欄で紹介した通り、村民たちは遺体確認をさせてほしいと現場を固める警官隊の前で跪き哀願しています。
●反体制ニュースサイト「大紀元」(gb=簡体字版)
http://www.epochtimes.com/gb/5/12/9/n1148284.htm
http://www.epochtimes.com/gb/5/12/9/n1148325.htm
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当局が何ら発表を行わず、村内への道路も封鎖されているので真実は相変わらず闇の中です。その中で噂が飛び交い、死者数は4名から8名、19名、さらに30数名説から70名説まで飛び出しています。『東方日報』は警察車両が村内を巡回し、スピーカーから事件で死者が出たこと、遺族は身元確認に来ること、というアナウンスを流していたとの情報を紹介していますが、これまた噂レベルです。
飛び交う情報を拾っていくだけなら興味深いものもあります。『蘋果日報』は農民のリーダー3名を当局が指名手配したと報じています。一方で『明報』や『成報』は広東省当局が事件の調査に乗り出し、事件に関係した役人(汕尾市当局者など)が香港に出境しないよう手配したというニュースを伝えています。
●『東方日報』(2005/12/10)
http://orientaldaily.orisun.com/new/new_c3.html
●『明報』(2005/12/10)
http://hk.news.yahoo.com/051209/12/1jff5.html
●『成報』(2005/12/10)
http://www.singpao.com/20051210/international/790694.html
実弾射撃を許した汕尾市当局に対し広東省当局と中央政府は国際世論なども考慮して別の対処をするのではないかと前回書きましたが、どうやらそうなりそうな雰囲気です。ただ中共にとっての政治的善悪の認定であり、法律をも超越する「定性」は「反政府活動」のような形に、つまり発電所建設を邪魔したことで農民たちの行動は「中共に対して悪」という認定になるでしょうから、市当局からは汚職と武力弾圧(やりすぎ)による処分者を出す一方、農民側からも逮捕者が出るのではないかと思います。
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最後くらい日本に関係する話をしましょう。麻生外相が12月7日、東京の日本記者クラブで「わたくしのアジア戦略」と題する講演を行いました。この中で麻生外相はアジアにおける日本の役割として、
●成功例と失敗例を進んで示す「実践的先駆者」
●経済、安全保障両面での安定勢力
●国対国の関係に上下概念を持ち込まず、対等な関係を結ぶ国
……という「3つの定義」を掲げました(『読売新聞』2005/12/08)。
ところがこれが中国国内メディアの記事になると、
「日本の外相、『外交戦略』演説で日本はアジアの領袖を目指すと発言」
と、全く別な内容にねじ曲げられてしまっています。
●「新華網」(2005/12/08)
http://news.xinhuanet.com/world/2005-12/08/content_3893196.htm
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実際の記事でいうと、講演の題目からして「私のアジア戦略――日本はアジアの経験的先駆者(領袖)」となっています。「先駆者=領袖」とは呆れて物が言えませんが、それで記事のタイトルが「アジアの領袖を目指すと発言」となる訳です。悪意を込めた歪曲報道というのはこういうものなのでしょう。
もっとも中国新聞社が配信したこの記事の元ネタはシンガポールの「早報網」(親中紙『聯合早報』の電子版)ではありますが、中共からみてもしっくりくるものだから国営通信社(新華網)にも掲載されたのでしょう。……あるいはこれも、中国が「ASEAN+3」で首脳会談・外相会談をキャンセルしたのに日本が一向に動じる気配を見せないことへの焦りを示したものなのかも知れません。
だってその場になったら中国外相の紅衛兵じゃなかった李肇星の方からわざわざ麻生外相に接触していますから。
●日中外相が接触=歴史で立場伝える-ASEAN会合(時事通信 2005/12/10/03:00)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051210-00000009-jij-pol
李肇星カッコ悪いぞ(笑)。まあ命令されて仕方なくなんでしょうけど、日本が譲らないでいるとこうして向こうからすり寄ってくるのです。私はいま日中関係がガチの正念場だと考えていますから、日本はここで甘い顔を見せることなく、譲らずに知らんぷりしていればいいと思います。
李登輝氏にも早く来日してもらいましょう。なあに東京見物の際に運転手が道を間違えてうっかり靖国神社に乗り入れてしまえばいいのです(笑)。そこに偶然出くわすのがファンタジスタか都知事ということで。
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ああ業務連絡であることを忘れていました。
常々考えていたのですが、毎日結構な量の記事を集めるのにここで使うのはその1割もありません。で、使われずに蓄積される一方の余剰資源を何とかしようということで、ニュースに一言適当なコメントをつけるだけのブログ「楽しい中国ニュース」を立ち上げました。
時間的に余裕がないので1日せいぜい10本くらいしか紹介できないでしょうが、黙って流してしまうには勿体ないネタから挙げていくつもりです。お暇なときにでもお立ち寄り下さい。
なお、当ブログでも満足にレスをつけられない状態なので、勝手ながら「楽しい中国ニュース」ではコメントやトラックバックを受け付けないこととします。お問い合わせがあれば当ブログ(gokenin168@goo.jp)にメールして下さい。あとレイアウトの崩れなどもあるでしょうからそれもメールで御指摘頂ければ幸いです。
という訳で、大したものではありませんが当ブログ共々今後とも宜しくお願い申し上げます。
m(__)m
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http://hannichi.seesaa.net/article/10410997.html
御家人さんも、もうすぐ「○那デビュー」するんじゃないですか?もちろん、自分の意志とは関係なく(笑)
「ブログハンティング<嫌韓・嫌中をこえて>」p312-313
コメント欄のネットウヨが煩いみたいな書かれ方ですが・・・。
御家人さんの紙メディアへの進出近し?
仮にそうなっても、ここはおいておいてください。お願いします。
いつも非常に楽しみに拝見させていただいております。新しいブログの方もブックマークに入れさせていただきました。そちらも毎日拝見させていただきます。毎日大変かと思いますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
年末から春節への忙しい真っ只中でしょうが、チナヲチの更新もよろしくお願いいたします。
ところで、上の「ろろ」さんの紹介されているブログで日本語の上手な中国人が来て、何かと妙なことを書いていますが、これは工作員でしょうか?それとも目が覚めない普通の中国人?
http://jp.chinabroadcast.cn/151/2005/12/10/1@53716.htm
まゆげの中国での知名度ってどんなモンなんでしょうか?
こいつの知名度が高いとすれば『村山談話』の認知度も高そうなもんだけど
多分一般市民はそんなモノ知らないもしくは覚えちゃいないですよね
しかしこの談話もアジア・アフリカ会議での小泉スピーチで一気に裏返りましたねよ。
とすると『村山談話』を覚えてる稀有な中国人にして見れば日本に免罪符を与えてしまった重罪と言うことになるのかな?
しかし中国で出版……いや3セクの公共工事見たく作る事自体が目的なんでしょうが……売れるんですかね?
早速ブックマークさせて頂きました。これで益々自分で記事漁りしなくなるような。。。まったく御家人さんのお仕事には感謝。願わくば中国からアク禁にならないように。。
最近、リニューアルされたときの設定でしょうか?
こちらExplorerの最新版(たぶん)、
システムはSP2上で拝読させていただいております。
それで、
最小文字だとそれなりに読めるのですが、
文字のサイズを小から上にあげると、
改行幅が狭くなり文字間がなくなって非常に読みづらい状態になります。
これは、他の人には出ない症状なのかしらん?
SP2のせいなのでしょうか?
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。