前回のエントリーで「ニュースは鮮度が肝心」とうっかり言ってしまいましたが、当ブログが再三強調しているように、放置して様子を眺めるタイプの、「まずは寝かせてみる」型ニュースもあります。
その「寝かせてみる」ニュースが先日、日本側から飛び出したのでワクテカで様子をうかがっていました。まずはその日本発のニュースをば。
●財布取られる…政府のガス田対応、中川政調会長が批判(読売新聞 2007/04/04/19:47)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070404i312.htm
自民党の中川政調会長は4日、札幌市で講演し、中国が東シナ海の日中中間線付近でガス田開発を進めている問題について、「泥棒が入ってきて、タンスを開け、財布を取ろうとしたら、『タンスを開けるな、財布を取るな』と言うのが普通だが、そうではなかった」と述べ、これまでの日本政府の対応を批判した。
そのうえで、「(中国の)温家宝首相が来るから、安倍首相が中国に行くからと理由をつけて先延ばしにし、黙って自分の財布が取られるのを見ているというのは、国民に対していかがなものか」と語った。(後略)
おっとこれは可燃度がかなり高めの発言、いかに温家宝訪日を控えて友好ムード演出中とはいえ、中国側の反発は必至だ!……とほくそ笑みつつ「泥棒」の訳語は何になるのだろう、「小偸」(コソ泥)あたりかなあ、と考えていました。
ところが意外に喰い付きが悪くて、香港でも翌4月5日の午後になってようやくロイター電と『明報』電子版がようやく報道。これはタイミングからして『読売新聞』の紙媒体の方から引っ張ってきた記事と思われます。
●「ロイター通信」(2007/04/05/13:30)
http://hk.news.yahoo.com/070405/3/251kx.html
●『明報』電子版(2007/04/05/13:35)
http://hk.news.yahoo.com/070405/12/251kw.html
香港でもこんな感じですから、中国国内メディアによる報道は全くなし。
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しかし、さすがは香港。翌4月6日の朝刊では各紙一斉にこのニュースを報じました。ちなみに「泥棒」の中国語は私が予想した「小偸」に加え、「賊」と訳した新聞もありました。なるほど悪い意味で例えられるにしても、「コソ泥」よりは「賊」の方がカッコいいかも知れません。
●『明報』(2007/04/06)
http://hk.news.yahoo.com/070405/12/251rv.html
●『星島日報』(2007/04/06)
http://www.singtao.com/yesterday/chi/0406eo01.html
●『東方日報』(2007/04/06)
http://orientaldaily.on.cc/new/new_c04cnt.html
●『太陽報』(2007/04/06)
http://the-sun.on.cc/channels/news/20070406/20070406014533_0000.html
●『香港文匯報』(2007/04/06)
http://paper.wenweipo.com/2007/04/06/CH0704060010.htm
●『大公報』(2007/04/06)
http://www.takungpao.com/news/07/04/06/ZM-717266.htm
●『聯合早報』(2007/04/06)
http://www.zaobao.com/gj/gj070406_505.html
このうち『香港文匯報』『大公報』及びシンガポールの『聯合早報』は親中紙で、ウェブサイト(電子版)には中国国内からもアクセスできます。つまり中国国内在住でも気付いた人は6日午前にこのニュースを知っていた、ということになります。
ところが、この6日も中国国内で「中川発言」が報道されることはありませんでした。
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こういう情報統制の現場というのはどうなっているのでしょう。中央宣伝部あたりで「これ流していい」「これはNG」と選別しつつ判断しているのでしょうか。大きな流れとしては「日中友好ムード醸成の線で」という方針があったでしょうし、実際にその類いのニュースが嫌になるほど中国国内では流されました。
この前後に温家宝・首相の日本記者団に対する会見や中央テレビ局の安倍晋三・首相インタビューといった格式高めのニュースも大きく報じられています。ただその一方で、集団的自衛権がどうとかミサイル防衛システム云々といったネガティブ調の報道も出ています。総じていえば、
「一応友好基調だけど、それ一辺倒じゃなくて多少は手綱を引き締めておく」
といったバランスとりが行われていたような印象です。友好ムードとはいえそれが表面的な、つくられたものであることは日中双方が承知している訳ですし、安倍首相の肚がいまひとつ判然としない部分があるから懐疑する余地を残しておくか、といった判断が行われたのかも知れません。
小泉純一郎・前首相が2005年秋に靖国神社を参拝したあと、集中豪雨的な反日報道が行われた時期がありましたが、今回はそれとは違ってやや半身に構えた、「一応退路を確保しておく」といったある種の留保がついた「日中友好」キャンペーンといっていいかと思います。
で、「中川発言」、香港では6日の朝刊で一斉に報じられた訳ですが、その翌日である4月7日になっても中国国内のメディアでは報道されませんでした。NG扱いだったのでしょう。「可燃度高すぎ」ということでしょうか。
中共当局におけるこの2日間の躊躇?の理由が知りたいところです。例によって「報道させたい」勢力と「報道させない」勢力の間で綱引きが行われていたのかも知れません。
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その「中川発言」が中国国内でようやく報じられたのが4月8日です。日本側の第一報からは中3日を置いたタイムラグ。このニュースを流すか流さないか、それなりに吟味されたことをうかがわせます。
●「捜狐新聞」(2007/04/08/01:36)
http://news.sohu.com/20070408/n249275398.shtml
●「中国経済網」(2007/04/08/07:32)
http://intl.ce.cn/zgysj/200704/08/t20070408_10966219.shtml
●「新浪網」(2007/04/08/14:59)
http://news.sina.com.cn/o/2007-04-08/145911594876s.shtml
●『中国日報』電子版(2007/04/09/09:11)
http://www.chinadaily.com.cn/jjzg/2007-04/09/content_846276.htm
●『環球時報』(2007/04/09)
http://mil.news.mop.com/o/2007/0409/111826756.shtml
……反日基地外紙の『環球時報』も9日になっていよいよ報道。さあ本腰か?と言いたいところですが、温家宝がきょう(10日)から韓国・日本ツアーですから、せっかくの極上燃料も怒濤の外遊関連報道の中に埋没してしまうのではないかと。それを狙った中3日の「時差」なのかどうかは知りませんけど。
8日の東京都知事選挙で石原慎太郎氏が三連覇を果たしたというニュースも、速報はされたものの本来ならその後に湧いて出て来る極右の石原がどうのこうのという粘着性の強い記事は続きませんでした。
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……てな訳で、抑制されたネガティブ報道が行われる中で日中友好キャンペーンが展開された、という印象を残して温家宝が日本にやって来ます。日本は中国と違って芸人に求められるレベルが高いですから、「親民総理」などと呼ばれている温家宝も特別機からタラップを下りる途中で派手にすっ転ぶくらいのことをしないと笑いはとれません。
もっとも日本人記者団との会見では靖国問題に言及したり、訪日中には新幹線に乗らないといったように、意外に硬質な展開になるのではないかとつい期待してみたくなります。
友好記事絡みで「新華網」で散々使われている安倍首相と握手している写真がなかなか印象的です。作り笑いは得意技の筈なのに、このときの温家宝の顔は笑っておらず、硬い表情のままなのです。
アドリブ上手ではあるものの基本的には直球勝負の小泉前首相と異なり、安倍首相に対して中共はビシッと速球を投げ込まれることはなかろうと安堵しつつも、古井戸の底をのぞくような心持ちでいるのかも知れません。
「つくる会」の混乱、安部政権の成立などにからみ、産経新聞と伊藤正=記者のここ一年ほどの動きが気になります。
このゴロツキ=伊藤は()こういう記事を書いている
http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070410/chn070410000.htm
アホの山羊を誑(たら)し込んだ()のも伊藤ではないか?
八木秀次氏はすでに中共の対日工作の窓口だった
http://blog.so-net.ne.jp/fujioka-nobukatsu/2006-05-31
少しズレますが()こういうのも気になる…
<4月9日>(月)
〇早くも「石原節復活」との声が上がる投票日翌日であります。…
〇でもね、石原節には何か物足りないと思いませんか?
われわれは石原さんの得意な「支那」って言葉を、長らく聞いておりませんよね。
どうも意識的に封印している様子。
考えてみれば当ったり前の話であって、五輪を誘致するためには中国の協力が欠かせません。
ひょっとすると、今週後半に訪日する恩家宝首相にも会いに行くかもしれませんよ。
でもって、来年の北京五輪にはボクもちゃんと呼んでね、ってお願いしなきゃいけません。
http://tameike.net/comments.htm#new
ということで、やはり温のパパを靖国招待であちらの覚悟を見ましょうや!
腐れ中共に媚売ることは永劫無いこと示さないと。
温家宝も大変だと思いますよ。歴史歴史と言い立てれば敵対勢力に乗じられてまた「反日騒動」を仕掛けられるかも知れません。それだけならまだしも「反日」が「反中共」にすり替わる可能性がありますからね。でも歴史問題で得点を重ねないと売国奴扱いされる。今回は台湾問題で日本側の譲歩を引き出せなかったのが痛いかも。
>>アドレスさん
詳しいことは私にはわかりません。ただ御指摘のSankeiwebの記事はマトモな内容に私の目には映ります。
>>dongzeさん
温家宝なんて連れて来なくていいです。安倍首相が堂々と参拝してくれればおk。さすれば温家宝は動揺、胡錦涛は大動揺、糞青どもは大爆発で糞青どもの保護者たちはニンマリ。中共の党大会前に参拝すれば党上層部で御家騒動が起こります。そうなると私もチナヲチのし甲斐があるというもので(笑)。
確かにマトモですが…
「何をスッとぼけやがって…」と思うわけです。
例えば()ここ。
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中国の対日政策促進の最大の障害は「反日教育を受けたネット世代」(中国筋)といわれる。
先のCCTVの報道に対しても、ネット世論の反応は否定的なものが多数を占めた。
温家宝首相は今回の訪日を「(昨年10月の安倍訪中で割った)氷をとかす旅」と述べたが、国内の反日という「厚い氷」はなかなかとけそうもない。
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「明日、雨ふるか?」と聞かれれば…
「知ってくるクセに俺に聞くな」と答えたくなるでしょう?
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