現金ですねえ全く。まあ三千年もの時間をかけて磨き上げられたその面の皮の厚さが中国人の持ち味なんでしょうけど。
いやなに祝電の話です。自民党総裁となった福田康夫氏が昨日(9月25日)、国会で首相に選出されました。
するってーと間髪入れずに、中国の温家宝・首相から福田首相に祝電が届きました。外相に就任した高村正彦氏には楊潔チ・外交部長からの祝電が。
●「新華網」(2007/09/25/20:08)
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-09/25/content_6791480.htm
おかしいですねえ。2005年9月の衆院選で自民党が圧勝し、小泉純一郎・首相(当時)が再選されたときには祝電を寄越さなかったじゃないですか。それもちゃんと理由をつけて。当時の外交部報道官がちゃんと対応しています。
●小泉圧勝に祝電なし。「だって日本の内政問題だし」(笑)(2005/09/14)
記者:先週末に日本の小泉首相が再選を果たしたが、中国側はこれについて祝意を示さないのか?
秦剛:終わったばかりの日本の衆院選は日本の内政問題だ。私はこの問題について評論する立場にはない。強調しておきたいのは、中国政府は中日友好関係を発展させていくという……(以下原則論)。
記者:今回の衆院選は自民党の圧勝だった。日本国民の多くが小泉首相を支持していることの現れだと思うが、中国側はこれをどうみているのか?
秦剛:日本の衆院選は日本の内政問題だ。日本の有権者がどの政党、どの指導者に投票したかは日本国民が自ら決めること。どの政党、どの指導者が政権を運営することになっても、中日関係が改善され発展することを我々は望んでいる。
記者:小泉首相は対中関係において色々批判されているが、今回小泉首相が再任を果たしたことで、中日関係はどのような発展をたどると思うか?また、中国は小泉首相に祝電を贈る用意はないのか?
秦剛:中国側としては……(以下原則論。祝電に関する質問はスルー)。
【※追記】コメント欄での御指摘により、中国政府は9月22日になって小泉首相に祝電を送ったことが判明しました。訂正してお詫び申し上げます。それにしても福田首相には就任当日に即祝電なのに、小泉首相には1週間以上のタイムラグというのは、中国側に何か不都合でもあったのでしょうか?(笑)
うーん。衆院選は「日本の内政問題」だけど、自民党総裁選はそうではない、ということでしょうか?麻生太郎・外相が誕生したとき、当時の中国外相だったあの子泣きジジイの李肇星が祝電を打った、という話を聞いた記憶もありません。
やっぱあれですか、ポスト小泉を争う自民党総裁選に出馬しないことを表明する以前、中共系メディアが一時期「福田のフックだ」を盛んに持ち上げていたくらいですから、首相就任となれば願ったりかなったりという浮かれ気分で、つい「日本の内政問題」という枠を取っ払ってしまったとか。
党三役の顔ぶれをみれば温家宝が舞い上がるのも理解できますけどね。「しっかり責任を負う大国」を自認するのであれば、そうコロコロと原則を変えたりはしないでしょうに。
「中華」(世界の中心)を自称したり三千年の歴史を自慢したり「寛容な民族」と照れもなく自らを誇ってみたり、それから大国崛起だ平和的台頭だなどと騒いだりしている割に、実は懐が狭いんですよね。特に日本に対しては理性的な対応ができないようで。何事も感情論に走った物言いが目につくような気がします。私個人の感想ですけど。
ついでに温家宝が発した祝電の内容を紹介しておきましょう。適当な翻訳ですからアテにしちゃいけませんよ。
中日両国は一衣帯水の友好的隣国だ。両国の平和的共存、世代を超えた友好、お互いを利する協力、そして共同発展は、両国及び両国人民の根本的利益に合致し、またこの地域の平和、安定と繁栄をも利するものだ。中国政府はこれまでと同じように中日友好政策を堅持する。また全面的な中日戦略互恵関係を構築して、両国関係を長期的に健全かつ安定したものにするための努力を日本と共に行っていきたいと願っている。
美辞麗句が並んでいます。中共政権が美辞麗句を並べたときは「中共語」として翻訳しなければなりません。くどいようですが、私なりの解釈を改めて以下に並べておきます。
●【温家宝来日】言いたい放題やりたい放題!それでも日本は拍手喝采。orz(2007/04/13)
野暮を承知で申し上げますが、中共政権が言うところの「対話」「協議」とは「中共の言い分の押しつけ」「中共からの命令伝達」であり、「協力」とは「中共への奉仕」ということで、「平和」とは「中共による制圧下での非戦時状態」という意味。
「友好」とは「中共に従順」です。「友好団体」「友好人士」なんて中共に呼ばれている連中の顔ぶれを思い浮かべればわかるでしょう。中共のいう「中日友好」とは「日本が中共に従順な国であること」という意味です。「孫子の代まで友好を」なんて冗談じゃありません。
ちなみに「交流」とは「中共の価値観の押しつけ&軽度の洗脳」。軽度の洗脳とは、
「中国はいい国だ」
「日本は昔なんてひどいことを中国と中国人にしてしまったのだろう。反省しないと」
という気持ちにさせることです。
それをわかっている人が少なすぎますね。政治家も国民もです。ざっくりと言えば、30歳以下だと天安門事件(1989年)をリアルタイムで認識していないでしょう。中共が牙をむいたシーン、流血・粛清を伴う常軌を逸した政治運動といった中共本来の得意技を「体験」していないのです。「中共政権=かなりオシャレであか抜けた北朝鮮」ということに気付いていません。
むろん、「対話」「協議」「協力」「友好」「平和」「交流」といった「中共語」も正確に翻訳できない訳で。
嫌な局面になりましたねえ。何が嫌って、温家宝が嬉しそうにしているのが嫌。温家宝を喜ばせている日本の政界も嫌。それでも自分の投じた一票がほんのほんの少しだけでも反映された結果なのですから、自分にも責任があります。
ま、こうやって喜んだり苦々しく思ったりすることもできない中国国民(香港・マカオ含む)に比べれば日本人は遥かに恵まれているんだけどさ。……と考えても慰めにならないし。orz
本稿とは関係ありませんけど、展示会の取材で来日した仕事仲間や古馴染みの編集者たちと一夕を共にした際、
「お前ら一国家二制度って知ってるか?『国家』っていうのは中共一党独裁政権のことだ。『二制度』ってのは中国本土型奴隷制と香港・マカオ型奴隷制。そうだろ?」
と言ったら香港人たちに大ウケしました。お前ら笑ってる場合かよー。
……てオチにならないですよね。ああ嫌だ嫌だ。