日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 仕事でフラストレーションがたまっているので、ちょっと鬱屈を散じさせて頂きます。御迷惑でしょうがお付き合い下さい。

 今朝の香港各紙(2007/09/11)は、

「陳方安生が出馬表明へ」

 という話題で持ち切りでした。
陳方安生(アンソン・チャン)「香港の良心」と呼ばれるオバサンで、同じ香港人でも中国の後押しでWHOのトップになったオバサンが地元香港でも以前から評判が散々で、実務においても悪臭を振りまいているのとは大違いです。

 ちなみに「陳方」というのは複性ではなく、香港の場合は結婚している女性を漢字で表記する際、結婚後の姓の後ろに旧姓を置くのが一般的だからです。アンソン・チャンは旧姓が方で陳さんと結婚した女性ということになります。

 「香港の良心」とは、アンソン・チャンが英国統治時代から優秀な官僚として知られていること、そしてたぶん民主化に比較的寛容で北京(中国政府)が押しつけてくる政策に批判的なスタンスであったことから生まれた称号でしょう。中国返還後の第一次董建華内閣でもナンバー2の座に就いたものの、無能かつ一意専心中共追随の董建華・行政長官(香港のトップ)との確執で野に下りました。

 暫くは大人しくしていたのですが、一昨年冬の民主化デモに参加したことで再び脚光を浴びました。第二次董建華内閣の後を継いだ曽蔭権・行政長官がアンソン・チャンの元部下にあたることも存在感を漂わせる一因でしょう。

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 で、そのアンソン・チャンが立法会議員の補欠選挙に出馬することを今日、表明しました。立法会議員というのは普通選挙である直選議席が全議席数の半数に押さえられていて、残りは業界代表議員のような形で有権者が限定され、かつ親中派が当選しやすい仕組みになっています。こうすることで北京が目の敵にしている民主派が過半数を占めないようになっているのです。

 今回アンソン・チャンが出馬する補選は直選議席なのですが、これがちょっと因縁めいています。元々この席を占めていたのは親中派政党
「民主建港連盟」(民建聯)主席だった馬力というオサーンなのですが、この馬力が1989年の天安門事件について今年、

「虐殺なんか起きていない」
「戦車のキャタピラに潰されて人間がミンチになったといわれているが、ミンチになっているんだから人間か豚かわかりゃしないだろ」

 といった発言をして香港人の大多数を敵に回しました。非難囂々です。民建聯も直選枠で一定数の議席を常に確保していますから主席の妄言に大弱り。

 ところが因果応報とはよくいったもので、この馬力が非難の凄まじさに中国本土へと雲隠れしてほどなく、
あっという間に癌で死亡。溜飲を下げた香港人がたくさんいると思いますが、いちばんホッとしたのは民建聯ではないかと(笑)。

 そして、空席になったその議席をめぐって各政党が候補者を準備していたところ、アンソン・チャンが出馬する意向らしいというニュースが出現。これを受けて民主派系の政党は自らの候補者を引っ込めて
「みんなでアンソン・チャンを担ごう」という方針に急転換。そりゃもう「香港の良心」ですし現行政長官の元上司ですから格も評判も段違いなのです。

 注目の出馬表明はついさっき行われました。香港はしばらくこの話題で盛り上がることでしょう。香港各紙は「馬力の暴言~即死」以来の政治ネタとして張り切っているに違いありません。

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 でもねー、と思うのです。アンソン・チャンは存在感があるとしても、たかが補選への出馬でしょ?行政長官選挙でもあるまいし、当選したって立法会議員のひとりにすぎませんから、議会の勢力図が大きく変わることもないでしょう。別に劇的でも何でもありません。逆にその存在感とは裏腹に、単なる議員のひとりに収まってしまうアンソン・チャンが哀れになります。

 ま、香港の政界がネタ不足というマスコミ側の事情もあるかも知れませんけど、これで大騒ぎしているのをみると、香港の「民主化」への動きもずいぶん後退したものだなあ、というのが私の実感です。

 以下は香港大学が9月4日~7日に実施した世論調査結果(『蘋果日報』2007/09/11)。



 ●2012年に実施される行政長官選挙の直選化(普通選挙)に賛成しますか?

 

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 ●2012年に実施される立法会議員選挙について、半数の議席を直接選挙、残り半数を比例代表制にするとの意見に賛成ですか?


 



 普通選挙制導入に対する香港人の熱意は圧倒的かと思いきや、意外に高くないのです。はっきり「賛成」(支持)と答えたのは行政長官選挙で59%、立法会議員選挙で51%。「一半半」は「どっちでもいい」です。「唔知/難講」というのは「わからない・何ともいえない」てなところでしょうか。

 アジア金融危機の後遺症、ネットバブルの終焉、経済的環境の変化(中国経済の重心が広東省など華南地区から上海周辺へと移行)そして中国肺炎(SARS)といった数々の衝撃と、それに対する董建華政権の無為無策あるいは失政が2003年7月1日の伝説的な50万人デモを生みました。

 香港人はその勢いを駆って、民主派主導のもと
「全面的な普通選挙制導入」という目標に邁進し始めたかのように見えたのですが、経済状況が回復して董建華が胡錦涛にクビを飛ばされて現在の曽蔭権体制が成立したことで、また北京からパンダを贈られたりして、……要するに中国がアメとムチを併用する香港人の扱い方に習熟してきたことで、以前の熱気が色褪せつつあるかのようです。

 「反對/一半半」と回答した人の中には、「中国と事を構えると商売がうまくいかなくなるから困る」という思惑もあるでしょう。これに「唔知/難講」を含めると、

「どうせ最後は中共政権に隷従させられる訳だし」

 という諦めのようなものも含まれているのではないかと思うのです。そこは元来が植民地ですから、「どうせ無理なんだから」という気持ちがすぐ顔をのぞかせます。どうしても嫌になったら社会を変える運動をするより外国のパスポートをとる方が早いし楽だし。……という思考法が香港人らしくもあります。

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 これに加えて中共から押しつけられている香港型愛国主義教育「国情教育」「国民教育」などが普通話(北京語)の授業とともに若い世代には施されている訳で。中国における「民主化の孤塁」ではあるのですが、所詮はこんなもん。

 私にとっては本業及び副業のコラムとコソーリ活動(香港紙での文章発表)を展開できる程度の環境があれば香港なんかどうなってもいいです。

 ……そうだ、今回の一件について次の機会に配偶者の従妹で北京語を使う例の翠ちゃん(Midori)に尋ねてみましょう。

 そういえば翠ちゃんは先日改名して
葵ちゃん(Aoi)になったそうです。ミドリという名前は配偶者が適当につけたものなのですが、広東語を学んでいる生徒さんたちから、

「いまどきミドリ?」
「もうちょっと今風の名前をつけてあげなきゃ可哀想」

 という声が相次いだためアオイちゃんになったとのこと。全国のミドリさん申し訳ありません。という訳で不肖御家人ともどもアオイちゃんを今後とも宜しく御願いします。m(__)m

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 何やら鬱屈を散じたようにはみえませんが、

「お前らは終わりを約束された社会の住人なんだよ。元々海賊版こしらえたりパクリしかできない程度の、レベルの低いお前らにはそれがお似合い。これから中国並の民度にまで墜ちていくのを生暖かく見守ってやるからせいぜい感謝してもらおーか(笑)」

 というのが今回の主題なので、これでいいのです。




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