障害者雇用に悩んでいる企業は多い。2018年4月に企業の障害者法定雇用率(従業員45.5人以上)が2.0%から2.2%に引き上げられ、さらに21年には2.3%に引き上げられるからだ。法定雇用率に達しなければ、100人以上の企業は不足1人に付き月5万円の納付金が必要なため、人事担当者は対応を急いでいる。
かつて年1000万円以上の納付金を支払っていたという住宅建設・分譲が主力のポラスグループ(埼玉県越谷市)は、15年に障害者の雇用を促進する特例子会社、ポラスシェアードを設立した。34人の障害者が図面制作補助や顧客情報電子化、データ入力などで働き、県内で先進的な企業だ。グループ全体の障害者雇用は68人で障害者がリーダーになり管理や指導を担うなど人材も着実に育っている。
特例子会社設立に当たり同社が頼りにしたのが埼玉県障害者雇用総合サポートセンター(さいたま市)だ。障害者雇用では、障害者の立場から見た支援を行う自治体が多い中で、企業の視点からも支援を行っている。
人事担当者への出前研修などを行うほか、障害者が実際に3~5日間企業で働く短期訓練をおこなっており、これは埼玉県独自の取り組みだ。18年は650人が訓練を受け338人が採用された。障害者と仕事の相性を見るだけではなく、雇用経験がない企業に障害者雇用のイメージを持ってもらう。
厚生労働省が19年4月に発表した18年の都道府県別障害者雇用率を見ると、企業の多い地域ほど雇用率が低い傾向があり、首都圏では東京1.94%、神奈川2.01%、千葉2.02%、埼玉2.15%だった。埼玉は今でこそ全国平均の2.05を上回っているものの、11年には1.51と全国最低だった。
雇用改善にセンターが果たした役割は大きく「企業出身者が多く企業の悩みを理解してもらえる」(岩井学ポラスシェアード部長)のも成果を上げている理由の一つだ。
18年末から2人の知的障害者が働く菓子メーカー、亀屋(川越市)では、センターなどの助言に従い事前に「障害者が苦手なこと」と題した紙を配布し従業員に協力を求めた。山口美幸総務経理部部長は「従業員が熱心に障害者を指導している。障害も個性の一つと考えられるようになれば雇用は進むのではないか」と話している。
(さいたま支局長 松田隆)2019/6/12 日本経済新聞