◇夢、目標に生き生き 「パラリンピックに出たい」
基山町の東明館中学1年、密川花蓮さん(12)=福岡市東区=は障害児と健常者が一緒に活動する水泳教室に通っている。慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)で足が自由に動かずバタ足はできないが、上半身だけを使ったクロールで滑らかに泳ぐ。「水の中は何も音がなくて気持ちいい。泳いでいると、スッキリするんです」
小学校低学年の頃よく転んだり、歩くのが周囲から遅れたりすることが目立つようになった。階段を上る際、手すりに両手でしがみつく様子もあり、整形外科へ。検査を重ねたが、異常は見つからなかった。
3年前、しゃがんだ状態から支えなしで立ち上がることもできなくなっていた。改めて神経内科で検査をすると、両手首と両足首から先の感覚がなくなっていることが判明。CIDPの疑い、と診断された。
両親は気づけなかったことを悔いた。「運動神経が悪いからだろう」。そう考え、花蓮さんは家の周りをジョギングしたり、週4回、水泳教室に通ったりした。それでも追いつかなかった。「周りの人は、もっと努力していると思っていた」。病気発覚後、花蓮さんはそうつぶやいた。
「疑い」の診断から2日後、感覚のない状態がひじ、ひざまで広がった。母恵利さん(43)は慌てて通院させた。正式に診断を受け、治療を始めた。
通っているリハビリ施設は高齢者が多く、花蓮さんも消極的だった。一般の水泳教室にも通ったが、タイムを競うことを優先する雰囲気になじめなかった。
その後、一時通っていた車椅子バスケットの活動を通じ、現在の水泳教室を知った。障害があることを意識せず、水泳を楽しめる場を見つけ、恵利さんの目にも、花蓮さんは生き生きとしているように映る。「パラリンピックに出たい」。そんな目標も口に出せるようになった。
症状は進行している。足には装具を付け、今年初めからツエを常時使うようになった。顔がむくむなど外見にも出る副作用にも悩む。「いつまで今の状態が続くのか分からない」(恵利さん)と、不安も多い。
中学校は、姉が通っていることや中高一貫制などの条件で選んだ。電車とスクールバスを乗り継いで通う。校舎にはエレベーターがなく移動時は階段の昇降も伴うが、友人が荷物を持ってくれるなど周囲の理解もある。「友達とおしゃべりして過ごしている時間が一番楽しいです」
将来目指しているのは「パパと一緒に働きたい」と医者になることだ。
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◇慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
末梢(まっしょう)神経組織に炎症を起こしてしまう自己免疫疾患の一種。手足に力が入らなくなる歩行障害や、感覚障害などの症状が出る。医療費助成の対象になる特定疾患に指定されており、10年度の受給者数は2328人。
毎日新聞 2012年07月15日 地方版
基山町の東明館中学1年、密川花蓮さん(12)=福岡市東区=は障害児と健常者が一緒に活動する水泳教室に通っている。慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)で足が自由に動かずバタ足はできないが、上半身だけを使ったクロールで滑らかに泳ぐ。「水の中は何も音がなくて気持ちいい。泳いでいると、スッキリするんです」
小学校低学年の頃よく転んだり、歩くのが周囲から遅れたりすることが目立つようになった。階段を上る際、手すりに両手でしがみつく様子もあり、整形外科へ。検査を重ねたが、異常は見つからなかった。
3年前、しゃがんだ状態から支えなしで立ち上がることもできなくなっていた。改めて神経内科で検査をすると、両手首と両足首から先の感覚がなくなっていることが判明。CIDPの疑い、と診断された。
両親は気づけなかったことを悔いた。「運動神経が悪いからだろう」。そう考え、花蓮さんは家の周りをジョギングしたり、週4回、水泳教室に通ったりした。それでも追いつかなかった。「周りの人は、もっと努力していると思っていた」。病気発覚後、花蓮さんはそうつぶやいた。
「疑い」の診断から2日後、感覚のない状態がひじ、ひざまで広がった。母恵利さん(43)は慌てて通院させた。正式に診断を受け、治療を始めた。
通っているリハビリ施設は高齢者が多く、花蓮さんも消極的だった。一般の水泳教室にも通ったが、タイムを競うことを優先する雰囲気になじめなかった。
その後、一時通っていた車椅子バスケットの活動を通じ、現在の水泳教室を知った。障害があることを意識せず、水泳を楽しめる場を見つけ、恵利さんの目にも、花蓮さんは生き生きとしているように映る。「パラリンピックに出たい」。そんな目標も口に出せるようになった。
症状は進行している。足には装具を付け、今年初めからツエを常時使うようになった。顔がむくむなど外見にも出る副作用にも悩む。「いつまで今の状態が続くのか分からない」(恵利さん)と、不安も多い。
中学校は、姉が通っていることや中高一貫制などの条件で選んだ。電車とスクールバスを乗り継いで通う。校舎にはエレベーターがなく移動時は階段の昇降も伴うが、友人が荷物を持ってくれるなど周囲の理解もある。「友達とおしゃべりして過ごしている時間が一番楽しいです」
将来目指しているのは「パパと一緒に働きたい」と医者になることだ。
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◇慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
末梢(まっしょう)神経組織に炎症を起こしてしまう自己免疫疾患の一種。手足に力が入らなくなる歩行障害や、感覚障害などの症状が出る。医療費助成の対象になる特定疾患に指定されており、10年度の受給者数は2328人。
毎日新聞 2012年07月15日 地方版
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