介護・介助の仕事に限らず、人が定着しづらい職場では、長期的なミッション(使命)の達成は難しいし、その分野の成熟も遅れてしまう-。障害者の自立を目指すNPOで事務を担当する筆者の仕事論は、職種を超えて共感を呼びます。
仕事というものは、どんな仕事でも99%はしんどいばかりで、ごくまれにある、ちょっと楽しいことのために続けられると思っている。皆さんはどうですか?
一年ほど前、介護の世界では高名な方の講演を聞いた。その中で講師が言ったことだが、「介護の職場は慢性的に人手不足。職場環境に不満があったり、万一、事業所が無くなったら、次の場所に移ればいいんですよ」。
困ったことをおっしゃる。確かに人手不足の業種ではあるけれど、それで労働力の流動性の高さを正当化されて良いものか。
人が次々と変わるような事態は、労働力のレベルの不安定につながり、長期的な展望での職場環境の整備が困難になる。流動化の最大の原因の一つであろう給与水準の引き上げも、難しくなる。
福祉の職場は、政治の状況で左右される。制度がひとつ変われば、経営基盤にも影響が出る。そのような将来の見えない場所でいつまで働けるか。悪循環が常にある職場だ。
また、企業には個々の文化がある。ましてNPOは、まず「ミッションありき」。いずれも長い時間をかけて育て、達成される。
労働者の長いリレーなくして達成は難しく、労働者の激しい入れ替わりは、企業文化がリセットされ続けることを意味する。それは同時に福祉の世界の成熟の妨げになるのではないだろうか。介護の事業所といっても、会社であるからには介護以外の職種の人(事務ですね)もいるだろう。事業所に何か起きた場合、介護の資格があれば転職はたやすいかもしれないが、そうでない人はどうなるのか。主業務だけでなく、企業全体を見渡すことが経営者には必要だ。
さて、文福の仕事も、99%のしんどさと1%の楽しさでできているが、ちょっと自慢できるのは「上司が全員車椅子利用者」。こんな会社はあまりない。

「上司が全員車椅子利用者」の企業のバイト募集ポスター。もちろん常勤職員を目指す人も募集中
(NPO法人文福・堀田正美)
中日新聞-2012年10月16日
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます