視覚障がい者や視力が低下した高齢者などにとって、通帳や契約書類など、個人情報に関わる読み書きは、大きな悩みの種になっている。こうした中、独自に「読み書きサービス(代読・代筆)」を行う自治体が注目を集めている。東京都品川区では今年1月から、区内の2地域で同サービスを始めたほか、北海道函館市も4月から、市内の視覚障害者図書館で同サービスを展開している。これらの先進事例と公明党の取り組みについて紹介する。
東京・品川区 専門の窓口を開設
書類の代読や代筆などに対応
「書類の字が小さくて読めない」「耳が遠くて、業者の話が聞き取れない」。京浜急行線の青物横丁駅から歩いて5分ほどの場所にある東京都品川区の「第二地域センター」窓口には、こうした相談が1カ月に約10件寄せられている。
この窓口は「支え愛・ほっとステーション」という取り組みで、一人暮らしの高齢者などを支援するため、同区が社会福祉協議会に委託し、今年1月から開設されたものだ。自宅の電球交換や買い物の付き添いなどのサービスのほか、視覚障がい者や視力が低下した高齢者に対し、代読や代筆も行う。利用時間は午前9時から午後8時までで、利用料は30分間ごとに200円だ。
相談対応を行うコーディネーター(調整役)の加藤千尋さんは、「利用者からは『とても助かった。また利用したい』という声が寄せられている」と語る。
また、サービスの提供開始後、課題が明確になってきたという。同区高齢者福祉課の原明彦課長は「代読・代筆サービスを行う際、商品購入など利用者の契約行為に直面することがある。行政としては踏み込めない点があるので、対応を検討していく必要がある」と話す。
北海道函館市 専用図書館で支援を実施
「視覚障がい者や視力が低下した高齢者にとって、生活に関わる情報支援は欠かせない」。こう強調するのは、特定非営利活動法人(NPO法人)函館視覚障害者図書館(北海道函館市)専務理事の森田直子さんだ。
函館市は、地域活性化交付金を活用し、2011年度から視覚障がい者や高齢者に対し、同図書館で代読・代筆サービスを始めた。
同図書館によると、毎月約10人が同サービスを利用しており、「障がい者用の割引証への記入や、年金に関する書類の代読、そして買い物をする際の情報支援が多い」という。
視覚障がい者や高齢者を対象にした代読や代筆などのサポート体制は、全国的に不十分な状況だ。視覚障がい者の外出を手伝うガイドヘルパーなどが代読・代筆するケースもあるが、断られることが少なくない上、個人情報が漏えいする危険もある。このため、森田さんは「公的な代読・代筆サービスの需要は高い」と語る。
また、こうしたサービスを提供するには、そのための財源確保が大きな課題だ。函館市の場合、来年度以降の財源確保ができておらず、森田さんは「視覚障がい者の約80%は中途失明者であり、点字が読めないなど情報弱者だ。利用者からはサービス継続を求める声が多い」と述べ、経済的支援の必要性を訴えている。
支援員の養成が重要
守秘義務の厳守で課題も
「読み書きサービス」については、一定の専門技術が必要だ。特に代読の場合、単に文章を読み上げるだけでなく、写真やイラストの説明や、情報を整理する技術も求められる。20歳代に失明した後、代読支援を利用してきた田中章治さん(埼玉県川口市、66歳)は、「経験や専門知識の有無によって、代読支援には大きな差が生じてしまう」と指摘する。
このため、NPO法人「大活字文化普及協会」内に設置された「読書権保障協議会」(岩井和彦会長)は、専門の支援員などのスタッフを養成するため、講習会などを開催している。
今年7月に東京都品川区で行われた講習会では、定員の2倍超の約200人から応募があり、自治体職員や介護従事者、ボランティアなどが参加し、代読・代筆に関する講習や発声練習を行った。
講習会担当者は「読み書きは社会参加に不可欠であり、支援に取り組む自治体が今後、増えていくことが予想される。このため、専門スタッフの養成を行うとともに、守秘義務の厳守などの課題に関するルールづくりが求められる」と指摘している。
公明党はこれまで、「読み書きサービス」の実現・拡充を精力的に推進してきた。特に品川区では、山元敬子区議や三上博志前区議らが、議会質問などで同サービスの実施を提案し、今年1月に実現させた。
また、都議会公明党の伊藤興一都議は、今年2月の定例会で「読み書きが困難な視覚障がい者や高齢者に対し、全国に先駆けて支援する仕組みを」と要請した。
これに対し、都福祉保健局長は「未実施の自治体に事業実施を働き掛ける」とした上で、「代読・代筆の知識習得を図るなど研修を充実する」と答弁している。

視覚障がい者のために書類を代読する森田さん(左)
公明新聞:2011年10月21日付
東京・品川区 専門の窓口を開設
書類の代読や代筆などに対応
「書類の字が小さくて読めない」「耳が遠くて、業者の話が聞き取れない」。京浜急行線の青物横丁駅から歩いて5分ほどの場所にある東京都品川区の「第二地域センター」窓口には、こうした相談が1カ月に約10件寄せられている。
この窓口は「支え愛・ほっとステーション」という取り組みで、一人暮らしの高齢者などを支援するため、同区が社会福祉協議会に委託し、今年1月から開設されたものだ。自宅の電球交換や買い物の付き添いなどのサービスのほか、視覚障がい者や視力が低下した高齢者に対し、代読や代筆も行う。利用時間は午前9時から午後8時までで、利用料は30分間ごとに200円だ。
相談対応を行うコーディネーター(調整役)の加藤千尋さんは、「利用者からは『とても助かった。また利用したい』という声が寄せられている」と語る。
また、サービスの提供開始後、課題が明確になってきたという。同区高齢者福祉課の原明彦課長は「代読・代筆サービスを行う際、商品購入など利用者の契約行為に直面することがある。行政としては踏み込めない点があるので、対応を検討していく必要がある」と話す。
北海道函館市 専用図書館で支援を実施
「視覚障がい者や視力が低下した高齢者にとって、生活に関わる情報支援は欠かせない」。こう強調するのは、特定非営利活動法人(NPO法人)函館視覚障害者図書館(北海道函館市)専務理事の森田直子さんだ。
函館市は、地域活性化交付金を活用し、2011年度から視覚障がい者や高齢者に対し、同図書館で代読・代筆サービスを始めた。
同図書館によると、毎月約10人が同サービスを利用しており、「障がい者用の割引証への記入や、年金に関する書類の代読、そして買い物をする際の情報支援が多い」という。
視覚障がい者や高齢者を対象にした代読や代筆などのサポート体制は、全国的に不十分な状況だ。視覚障がい者の外出を手伝うガイドヘルパーなどが代読・代筆するケースもあるが、断られることが少なくない上、個人情報が漏えいする危険もある。このため、森田さんは「公的な代読・代筆サービスの需要は高い」と語る。
また、こうしたサービスを提供するには、そのための財源確保が大きな課題だ。函館市の場合、来年度以降の財源確保ができておらず、森田さんは「視覚障がい者の約80%は中途失明者であり、点字が読めないなど情報弱者だ。利用者からはサービス継続を求める声が多い」と述べ、経済的支援の必要性を訴えている。
支援員の養成が重要
守秘義務の厳守で課題も
「読み書きサービス」については、一定の専門技術が必要だ。特に代読の場合、単に文章を読み上げるだけでなく、写真やイラストの説明や、情報を整理する技術も求められる。20歳代に失明した後、代読支援を利用してきた田中章治さん(埼玉県川口市、66歳)は、「経験や専門知識の有無によって、代読支援には大きな差が生じてしまう」と指摘する。
このため、NPO法人「大活字文化普及協会」内に設置された「読書権保障協議会」(岩井和彦会長)は、専門の支援員などのスタッフを養成するため、講習会などを開催している。
今年7月に東京都品川区で行われた講習会では、定員の2倍超の約200人から応募があり、自治体職員や介護従事者、ボランティアなどが参加し、代読・代筆に関する講習や発声練習を行った。
講習会担当者は「読み書きは社会参加に不可欠であり、支援に取り組む自治体が今後、増えていくことが予想される。このため、専門スタッフの養成を行うとともに、守秘義務の厳守などの課題に関するルールづくりが求められる」と指摘している。
公明党はこれまで、「読み書きサービス」の実現・拡充を精力的に推進してきた。特に品川区では、山元敬子区議や三上博志前区議らが、議会質問などで同サービスの実施を提案し、今年1月に実現させた。
また、都議会公明党の伊藤興一都議は、今年2月の定例会で「読み書きが困難な視覚障がい者や高齢者に対し、全国に先駆けて支援する仕組みを」と要請した。
これに対し、都福祉保健局長は「未実施の自治体に事業実施を働き掛ける」とした上で、「代読・代筆の知識習得を図るなど研修を充実する」と答弁している。

視覚障がい者のために書類を代読する森田さん(左)
公明新聞:2011年10月21日付
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