阪神大震災の被災地を支えてきたボランティアが高齢化している。震災が発生した1995年は「ボランティア元年」と呼ばれ、多くの団体が生まれたが、現在は全体数が減少し、高齢者を中心とする団体も6割に上る。復興住宅で暮らす住民のケアなど、その経験は現在もニーズがあるだけに、専門家から「若者が参加できる仕組みが必要」とする声が出ている。(浅野友美)
◆解散後再結成
「毎日本当にムシムシしますね」「熱中症に気を付けてくださいね」――。
神戸市須磨区の「市営新大池東住宅」。被災した高齢者が暮らす復興住宅の集会室で、ボランティア団体「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」の女性スタッフが、住民らに部屋の換気や、水分補給の大切さをアドバイスしていた。
同団体は、震災半年後、医師や看護師らで結成し、西区の仮設住宅で見守り活動を開始。被災者が復興住宅に移っても茶話会や訪問事業を続けたが、リーダーの黒田裕子さんが昨年9月、73歳でがんのため他界し、今年3月末に解散した。だが、新大池東の住民が「茶話会を続けて」と署名を集めて要望したため、4月に再結成を決めたという。
住民はお年寄りが大半で、茶話会の準備や連絡業務は難しかったといい、要望の中心になった小山鉄男さん(75)は、「茶話会でみんなの元気な顔を見るだけで、頑張ろうと奮い立つ。ボランティアには、長く見守ってほしい」と話す。
ただ10人で活動を再開したが、平均年齢は60歳代後半。代表の宇都幸子さん(71)は、「今後さらに年齢を重ね、担い手は減る。若い戦力があれば助かるんですが」と肩を落とす。
◆「65歳以上」6割
兵庫県社会福祉協議会によると、県内のボランティア団体数は、2004年度の8785から昨年度は7063まで減った。昨年7月に団体の中心となる年齢層を調べたところ、2515団体が回答し、96年度に23・0%だった「34歳以下」は昨年度は1・0%。96年度に38・8%だった「65歳以上」は昨年度は62・9%となった。毎年の追悼式に使う竹灯籠を準備してきた市民団体「神戸・市民交流会」は、高齢化を理由に今年度末の解散を決めた。
◆世代交代
世代交代を図る団体もある。震災後のボランティアネットワークから生まれた「被災地NGO恊働センター」(神戸市兵庫区)は今年5月、代表を務めていた村井雅清さん(64)が、新代表の頼政良太さん(27)にバトンを託した。
頼政さんは広島市出身。阪神大震災を直接知らないが、神戸大1年だった07年、能登半島地震の被災地で初めて同センターが行う足湯ボランティアに参加し、東日本大震災の被災地でも活動した。村井さんは「リーダーには、最後の一人まで手を差し伸べる覚悟があるかが問われるが、その点で任せられる」と期待する。
被災地で活動する団体に助言してきた室崎益輝・神戸大名誉教授は、「ボランティアは行政がカバーできない部分を支えてきた。経験や専門性は他の被災地で生きており、実践的な活動を通じて若者に引き継ぐことが望ましい。行政には学生への奨学金など、若者を育てる仕組みを考えてほしい」と話す。
「被災地NGO恊働センター」を設立から支えた村井さん(右)と新代表の頼政さん。村井さんは「若い人は失敗しても立て直す時間がある」と話す.
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