◆3回の講座でワークショップ
同大学を主催する市民組織「ウニベルシタスつくば」(徳田太郎代表)の幹事で、これまで、演劇的手法を用いたワークショップを開き地域の人と人をつなぐ試みを続けてきたつくば子ども劇場元事務局長の赤松洋子さんと、障害者向け教材を使ったり、最新のバリアフリー研修制度を紹介するワークショップを開いてバリアフリーな社会に向け取り組んできた同幹事でつくばバリアフリー学習会代表の北村まさみさんの2人が企画した。
計3回の講座で、第1回は14日開催。耳の不自由な人も不自由でない人も一緒に楽しめる楽器「共遊楽器」を研究、製作している筑波大学情報学群非常勤講師の金箱淳一さんが、自身が製作した共遊楽器を紹介したり、参加者が新しい共遊楽器を考案するなどした。
2回目は来年2月、視覚障害者と一緒に写真撮影などをする。3回目は4月16日、つくばカピオイベントホールで、コンテンポラリーダンスを楽しむ講座を開く。
北村さんは、今回の試みについて「(デザインする最初の段階から高齢者や障害者、外国人などの意見を取り入れる)インクルーシブデザインに近いのでは」と話し「アートは違いを知り、認め合うツールになる」と話す。
共に楽しめる楽器開発
14日開かれた第1回ともに楽しむアートコモン・ラボでは、筑波大講師で楽器研究者の金箱淳一さんが、「音楽って「聴く」だけのもの?~聞こえる人も、聞こえない人も「共に楽しむ」共遊楽器」をテーマにワークショップを開いた。
市内外の健常者や聴覚、視覚、身体障害者など20代~60代まで約30人が参加。ミュージシャンや臨床心理士などの参加もあった。
金箱さんは大学時代、バンドを組んで演奏活動をし、大学院卒業後、玩具メーカーで新しいおもちゃを企画する仕事に就いた。すでに販売されている障害者と健常者が一緒に遊ぶ「共遊玩具」というおもちゃに出合ったことが共遊楽器開発のきっかけだという。
ワークショップで金箱さんは、自身が開発した。ギターの溝を指でなぞったり、弾く位置を変えると異なる音が出る「マウンテンギター」や手のひらでたたくとLEDが点滅する「クラップライト」などで、音を肌で感じられる空気の振動にしたり、目に見える光に変換した楽器だ。
続いて参加者はグループに分かれ、障害がある人もない人も一緒に話し合いながら新しい共遊楽器を考え紙粘土で試作品を製作。
人のぬくもりが感じられ抱きつくと和音や光が出る楽器、輪になって座り真ん中の人が演奏すると振動や光が伝わるシートなど、さまざまなアイデアが出された。
参加者は「中途で耳が聞こえなくなった後は音楽とは無縁だと思っていたが楽しめると分かった」、「道具次第でだれでも音楽を楽しめることがわかった」などと感想を話し、金箱さんは「人の脳にはいろいろな感覚を統合する感覚統合という働きや、一つの感覚を失うと他の感覚が敏感になる感覚代行という働きがある」「音楽の本質は共有」などと話した。
アートコモン・ラボの第1回公開講座で、金箱淳一さん(右)がたたく打楽器の音に合わせて体でリズムをとる参加者
2015年11月18日 常陽新聞スマートフォン版
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