読むことや書くことが不得手で、支援を必要とする子どもの学習に、ICT(情報通信技術)が活用されている。
6月中旬の放課後、東京都葛飾区立高砂小の教室で、3年生3人がそれぞれのタブレット端末をのぞき込んだ。画面には走る子どもの絵の左側に「かっけこ」「かけっこ」「かけこ」と三つの選択肢が並び、正解を選ぶと花丸が表示される。「よっしゃ」と声を上げ、次々と問題を解く児童も。戸惑う児童には塩田太郎教諭(40)が声を掛け、一緒に単語を読み上げた。
児童が取り組んでいるのは、学研教育みらい(東京都)などが、読むことが苦手な子どもを早期に把握し支援するために開発した指導法のデジタル教材だ。プリント版はすでに市販されており、文部科学省の委託で同社が昨年度からデジタル版の開発に取り組んでいる。
同小は同社の協力校で、全児童対象のテストを今春実施。促音の「っ」など特殊音節でつまずいた児童が給食準備中や放課後の約15分間に学年ごとに集まり、問題に取り組む。デジタル版では音声で理解を助けるほか、児童がタブレットを操作して何回もチャレンジできる。「子どもから『またやりたい』という声が必ず出る」と塩田教諭。
読むことが苦手な児童は早めに支援しないと、教科書を理解できず、授業についていけなくなる場合が多い。木室忠明校長は「教科の勉強や日常生活に影響する前に児童の力を伸ばしたい。デジタル版は楽しんで取り組むことができ、学習意欲が高まる」と話す。
文科省の2012年の抽出調査で公立小中学生の約6・5%に発達障害の可能性があると推定され、このうち個別の支援を受けていない児童生徒は38・6%だった。11年の障害者基本法改正で「適切な教材等の提供」が盛り込まれ、同省は「発達障害のある子供たちのためのICT活用ハンドブック」の発行を委託するなど、ICTによる支援を後押ししている。書き順を動画で確認するデジタル教材や、タブレット端末で板書を撮影する例などが広がっている。
ただ、ICTの導入だけで、学習が進むわけではない。西日本の公立小学校で長年、発達障害の児童らを指導してきた教員は、「一人ずつ苦手なことは違い、教員がそれぞれに適した支援をすることが重要だ」と指摘する。教員の指導力が求められ、熊谷恵子・筑波大教授(発達障害心理学)は「ICTになじみが薄く、抵抗感を抱く教員もいるが、学習内容をより深められるので、活用方法を模索してほしい」と話している。
2015年07月17日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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