昨年4月から連載を開始したこのコラム。2年目に入るにあたり、日曜日から土曜日に引っ越した。「ユニバーサロン」とは、「ユニバーサル」と「サロン」をくっつけた合成語。1998年、毎日新聞のニュースサイトに開設されたコーナーの名前で、すべての人が使いやすい製品やサービスの開発を意味する「ユニバーサルデザイン」をテーマに、視覚障害者の私の視点から期待されるトピックなどをお届けする。
ICT(情報通信技術)の活用で、特に私たち全盲者が願うのは、どこへでも自力で行ける移動の自由と、文字が読める読書の自由の獲得だ。大切なのは「障害者専用の特別な技術」ではなく、誰もが使える汎用(はんよう)製品の中に、障害のある人にも使いやすい機能を搭載するということだ。少子高齢化が際立つ今日の日本。ロボット技術などテクノロジーを利用することで、障害者や高齢者が人手に頼らず自立できるだけでなく、逆に社会に貢献する立場にもなれる。これが、共生社会を前進させることにつながると考える。
視覚障害者の移動に役に立つ、最新のスマホアプリを一つご紹介する。製薬会社のノバルティスファーマがアイフォーンやアンドロイド用に無償公開している視覚障害者用歩行ナビアプリ「ビアオプタナビ」だ。オープンストリートマップなどの地図情報を利用して、現在地周辺の施設を音声で案内するほか、交差点などでどちらに曲がるのかを指示する機能もある。
実際に都内の自宅から最寄り駅までナビを実行させてみると、交差点で振動したり「目的地はこの先、道なりに90メートル」などと音声で知らせたりする。新版ではアップルウオッチに対応したので、スマホを手に持つことなく、振動と音声ガイドが利用できそうだ。
いわした・やすし
10歳で両目を失明した全盲記者。1986年、毎日新聞社入社。点字毎日編集部を経て、98年から人に優しい社会の仕組み「ユニバーサルデザイン」をテーマにネットコラムを配信。53歳。
毎日新聞 2016年4月2日 地方版