私たちの可能性は無限 白沢繁樹さん(39)=鹿児島市
「come on HIFUMIYO BASE」。鹿児島市紫原の住宅街に、しゃれた看板の一軒家が見える。昨年10月に開所した障害者の就労継続支援の事業所「ひふみよベース紫原」。中に入ると最近の音楽が聞こえてきた。誰が利用者か職員かわからない。事業所代表の白沢繁樹さんは言う。「利用する人を利用者とは呼びません。一緒に仕事をするメンバーです」
工賃支給日に事業所を訪れると、知的障害のある利用者から「(工賃は)いくらぐらいと思う?」と尋ねられた。20〜23日間勤務したと聞いて10万円くらいと思ったが、実際は8000円だった。「これがまかり通っている世界があるんだな」
白沢さんは新たな事業を提案したが、事業所側は「この子たちはできないからいいんです」と取り合わなかった。「疑問符がいっぱい頭に浮かんだ。事業が駄目だから工賃も低いのではないか。それなら、僕にも変えられるかもしれない」。そう思った。
「ひふみよ」は、障害があるため一般企業への就職が困難な人に就労機会を提供し、知識・能力向上に必要な訓練などを行う「就労継続支援B型」の施設。作業は2種類ある。
「CWS」(クリエーティブワークセクション)と呼ぶ作業部門は、インターネットでの情報収集や写真撮影、イラスト制作などを手がけ、鹿児島市内の美容室のロゴマークなどを制作した。「MWS」(マニュファクチャリングワークセクション)と呼ぶ作業部門は、自社商品のインスタントラーメンの包装や通販商品の発送などをしている。どちらもスキルアップできる仕組みで、得意な作業は何か、個々人に最適なやり方は何かを探る。障害者差別解消法でいう「合理的配慮」だ。
県によると、14年度の就労継続支援B型の平均工賃は月額約1万4000円。ひふみよの1月時点の平均工賃(17人)は1万8413円で、今後さらに上げていくつもりだ。
事業所には知的、精神、身体障害者や難病患者がいる。「あなたはできない」と言われてきた人が多いと、白沢さんは感じる。
「周りから『できない』と言われたら、できない。可能性は無限で、限界を決めるのは自分だけ。自分のやったことが社会に影響を与えていると感じてほしい」
毎日新聞 2016年3月31日 地方版=随時掲載