低体温症
寒さや雨などで体の熱が奪われることによって起こる全身的な障害。体温が34~33度以下になると、体温を上げるために体が震えるなどの対寒反応が消え、錯乱や意識消失、不整脈などの症状が出る。30度以下になると死亡するケースが多くなる。低体温症で死亡することを凍死という。2009年7月16日には、北海道・大雪山系を縦走する中高年の登山ツアー客15人とガイド3人がトムラウシ山で遭難、ガイド1人を含む8人が凍死した。
登山ブーム 遭難多発 中高年10年で1.6倍 専門家「気象情報収集を」 北アルプス8人死亡
北アルプスの3千メートル級の春山で遭難した福岡県の12人の大半は60歳以上だった。高齢者や女性の登山ブームを背景に遭難事故は増加する一方だ。特に雪が残るこの時期の山は天候が変わりやすく、ベテランでも危険が伴う。軽装や準備不足のまま出掛けて事故に遭うケースもあり、専門家は「冬山と同じ十分な装備と慎重な登山を心掛けて」と、春山の恐ろしさに警鐘を鳴らす。
残雪が陽光に照らされキラキラと光る5月の北アルプス。その美しさゆえに人気で、登山愛好家なら誰もが憧れる。昼間なら半袖でも登れるが、ひとたび天候が崩れると風速30メートル以上の猛烈な吹雪に見舞われることも。全九州アルパインガイドクラブの浦一美代表(65)は「天候の急変に要注意だ。20度ぐらいの寒暖差もまれではない。20キロ程度の冬山の重装備がいる」と強調する。
長野県警によると、遭難者はズボンにアンダーシャツ、さらに1、2枚着ていたが、防寒具はなく、テントの備えもなかった。ある幹部は「この時期としては軽装」と言う。「初夏の陽気の九州に比べ、5月でもふぶく山は想像しにくかったのか…」。久留米山岳会の森山義人会長(64)は悔やむ。
中高年の登山ブームに続き、若い女性の「山ガール」も増え、遭難事故も増加傾向だ。警察庁によると、事故は2001年の1220件が、10年は1942件に。同年の遭難者は2396人と過去最多となった。遭難者のうち40歳以上の中高年はこの10年で1・6倍に増えた。
遭難は道迷いや滑落といった原因が多い一方で、悪天候で大勢が亡くなった例もある。09年7月には北海道大雪山系で、ガイドを含む登山ツアー客18人が遭難、8人(59~69歳)が低体温症で死亡した。今回遭難者が出た白馬岳でも06年10月、荒天の影響で福岡県などの4人が亡くなった。
ガイドを伴わずに登山する場合はさらに危険が高まる。北アルプスの登山経験がある「長崎朝霧山の会」の杉山義昭会長(64)は「山岳会などの勉強会に参加して山の恐ろしさを理解してほしい」。浦代表は、現地の山岳ガイドとともに登ることを勧める。「悪天候なら延期できるよう余裕のある計画を立て、天候を予測するための情報収集も欠かさないでほしい」
西日本新聞 -(2012年5月6日掲載)
寒さや雨などで体の熱が奪われることによって起こる全身的な障害。体温が34~33度以下になると、体温を上げるために体が震えるなどの対寒反応が消え、錯乱や意識消失、不整脈などの症状が出る。30度以下になると死亡するケースが多くなる。低体温症で死亡することを凍死という。2009年7月16日には、北海道・大雪山系を縦走する中高年の登山ツアー客15人とガイド3人がトムラウシ山で遭難、ガイド1人を含む8人が凍死した。
登山ブーム 遭難多発 中高年10年で1.6倍 専門家「気象情報収集を」 北アルプス8人死亡
北アルプスの3千メートル級の春山で遭難した福岡県の12人の大半は60歳以上だった。高齢者や女性の登山ブームを背景に遭難事故は増加する一方だ。特に雪が残るこの時期の山は天候が変わりやすく、ベテランでも危険が伴う。軽装や準備不足のまま出掛けて事故に遭うケースもあり、専門家は「冬山と同じ十分な装備と慎重な登山を心掛けて」と、春山の恐ろしさに警鐘を鳴らす。
残雪が陽光に照らされキラキラと光る5月の北アルプス。その美しさゆえに人気で、登山愛好家なら誰もが憧れる。昼間なら半袖でも登れるが、ひとたび天候が崩れると風速30メートル以上の猛烈な吹雪に見舞われることも。全九州アルパインガイドクラブの浦一美代表(65)は「天候の急変に要注意だ。20度ぐらいの寒暖差もまれではない。20キロ程度の冬山の重装備がいる」と強調する。
長野県警によると、遭難者はズボンにアンダーシャツ、さらに1、2枚着ていたが、防寒具はなく、テントの備えもなかった。ある幹部は「この時期としては軽装」と言う。「初夏の陽気の九州に比べ、5月でもふぶく山は想像しにくかったのか…」。久留米山岳会の森山義人会長(64)は悔やむ。
中高年の登山ブームに続き、若い女性の「山ガール」も増え、遭難事故も増加傾向だ。警察庁によると、事故は2001年の1220件が、10年は1942件に。同年の遭難者は2396人と過去最多となった。遭難者のうち40歳以上の中高年はこの10年で1・6倍に増えた。
遭難は道迷いや滑落といった原因が多い一方で、悪天候で大勢が亡くなった例もある。09年7月には北海道大雪山系で、ガイドを含む登山ツアー客18人が遭難、8人(59~69歳)が低体温症で死亡した。今回遭難者が出た白馬岳でも06年10月、荒天の影響で福岡県などの4人が亡くなった。
ガイドを伴わずに登山する場合はさらに危険が高まる。北アルプスの登山経験がある「長崎朝霧山の会」の杉山義昭会長(64)は「山岳会などの勉強会に参加して山の恐ろしさを理解してほしい」。浦代表は、現地の山岳ガイドとともに登ることを勧める。「悪天候なら延期できるよう余裕のある計画を立て、天候を予測するための情報収集も欠かさないでほしい」
西日本新聞 -(2012年5月6日掲載)