障害者が福祉的就労で得る工賃を、5年で倍増させるとした国と県の「工賃倍増5か年計画」(2007~11年度)が最終年度も後半に入り、計画倒れになっている。実効的な施策が不十分だった上に、リーマン・ショック後の経済危機、そして東日本大震災が直撃。「倍増」など夢の話で、「アップ」どころか06年度を下回る懸念さえ出ている。国は、現行の障害者自立支援法を廃止し、13年8月までに「障害者100+ 件総合福祉法」(仮称)を施行する計画だが、就労支援策の抜本的改革が問われている。
国の計画は、障害者福祉でも可能な限り就労による自立・生活の向上を図るのが目的。福祉的就労のうち、雇用契約に基づく就労が困難な障害者100+ 件に就労の機会や訓練を提供する「就労継続支援B型」と「授産施設」などについて、平均工賃を06年度の月額1万2222円(全国平均)から倍増させるとした。各都道府県で具体的施策を行っており、県は「かながわ工賃アップ推進プラン」を策定し県内平均1万2244円を倍増させるとした。
しかし、今年8月にまとまった10年度の県内平均工賃は月額1万2397円。06年度比153円(1・2%)増にすぎない(全国平均はとりまとめ中)。
対象施設は、商品の袋詰めやシール貼り、紙・段ボールなどの加工・組み立て、パンやクッキーの製造・販売、飲食店経営などが主な作業内容。県はプランで、商品開発や販路拡大の支援、経営相談などの施策を行ってきた。国も、企業が障害者施設への発注を増やした場合に、税制優遇を行う「発注促進税制」などを設けていた。
しかし、こうした施策は効果が不十分か、効果があっても、リーマン・ショック後の経済危機で相殺されてしまった。南足柄市の知的障害者施設「パン工房ハッピー」の職員は「県の経営相談でコンサルタントのアドバイスを聞いたが、もっと福祉現場に沿った話が聞きたかった」と話す。
横浜市神奈川区の視覚障害者施設「横浜光センター」では点訳を主な事業としてきたが、「受注件数が年々減り、工賃も下がる一方」という。
本年度は東日本大震災の影響も加わり、企業からの受注で高い工賃を出してきた施設も打撃を受けた。商品の梱包(こんぽう)作業などをしている相模原市中央区の障害者施設「ワークショップ・SUN」では、「不況の中で受注が減っている。9月は昨年の半分。企業の海外移転など国内の空洞化を感じる」と話す。
県障害福祉課は「プランの実現は難しい。本年度の実績についても厳しい話しか聞いていない」と話す。最終年度の実績が06年度を下回る可能性さえ否定できないとしている。
障害者100+ 件と家族でつくる「障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)」の家平悟事務局次長は「倍という設定自体がおかしく、内容も小手先の施策だった」と指摘。「自立しようと思ったら生活保護を受けざるを得ない現行の障害者福祉の現状を変える必要がある」と述べ、障害者総合福祉法での抜本的改革が必要だとしている。
◆障害者総合福祉法(仮称) 2013年8月までの施行に向け、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が骨格提言をまとめ、厚労省で法案作成に入った。提言は、現在の国の障害者福祉予算が先進国水準を大きく下回っているとし、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均水準まで引き上げが必要とした。また、現在の就労移行支援事業、就労継続支援A型およびB型事業、生活介護事業、地域活動支援センター、小規模作業所などを「障害者就労センター」(労働法適用)と「デイアクティビティセンター」(同法不適用)に再編成。それぞれ十分な賃金補てん、所得保障を行うべきだとした。
カナロコ(神奈川新聞)
国の計画は、障害者福祉でも可能な限り就労による自立・生活の向上を図るのが目的。福祉的就労のうち、雇用契約に基づく就労が困難な障害者100+ 件に就労の機会や訓練を提供する「就労継続支援B型」と「授産施設」などについて、平均工賃を06年度の月額1万2222円(全国平均)から倍増させるとした。各都道府県で具体的施策を行っており、県は「かながわ工賃アップ推進プラン」を策定し県内平均1万2244円を倍増させるとした。
しかし、今年8月にまとまった10年度の県内平均工賃は月額1万2397円。06年度比153円(1・2%)増にすぎない(全国平均はとりまとめ中)。
対象施設は、商品の袋詰めやシール貼り、紙・段ボールなどの加工・組み立て、パンやクッキーの製造・販売、飲食店経営などが主な作業内容。県はプランで、商品開発や販路拡大の支援、経営相談などの施策を行ってきた。国も、企業が障害者施設への発注を増やした場合に、税制優遇を行う「発注促進税制」などを設けていた。
しかし、こうした施策は効果が不十分か、効果があっても、リーマン・ショック後の経済危機で相殺されてしまった。南足柄市の知的障害者施設「パン工房ハッピー」の職員は「県の経営相談でコンサルタントのアドバイスを聞いたが、もっと福祉現場に沿った話が聞きたかった」と話す。
横浜市神奈川区の視覚障害者施設「横浜光センター」では点訳を主な事業としてきたが、「受注件数が年々減り、工賃も下がる一方」という。
本年度は東日本大震災の影響も加わり、企業からの受注で高い工賃を出してきた施設も打撃を受けた。商品の梱包(こんぽう)作業などをしている相模原市中央区の障害者施設「ワークショップ・SUN」では、「不況の中で受注が減っている。9月は昨年の半分。企業の海外移転など国内の空洞化を感じる」と話す。
県障害福祉課は「プランの実現は難しい。本年度の実績についても厳しい話しか聞いていない」と話す。最終年度の実績が06年度を下回る可能性さえ否定できないとしている。
障害者100+ 件と家族でつくる「障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)」の家平悟事務局次長は「倍という設定自体がおかしく、内容も小手先の施策だった」と指摘。「自立しようと思ったら生活保護を受けざるを得ない現行の障害者福祉の現状を変える必要がある」と述べ、障害者総合福祉法での抜本的改革が必要だとしている。
◆障害者総合福祉法(仮称) 2013年8月までの施行に向け、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が骨格提言をまとめ、厚労省で法案作成に入った。提言は、現在の国の障害者福祉予算が先進国水準を大きく下回っているとし、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均水準まで引き上げが必要とした。また、現在の就労移行支援事業、就労継続支援A型およびB型事業、生活介護事業、地域活動支援センター、小規模作業所などを「障害者就労センター」(労働法適用)と「デイアクティビティセンター」(同法不適用)に再編成。それぞれ十分な賃金補てん、所得保障を行うべきだとした。
カナロコ(神奈川新聞)