ひまわり博士のウンチク

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和田中改革をどうみる

2008年03月25日 | 受験・学校
 「東京都杉並区の区立和田中学校(藤原和博校長)が、大手進学塾と連携して今年1月からスタートさせた有料授業「夜スペシャル(夜スペ)」を巡り、区民49人が24日、「校舎の目的外使用にあたる」として、区教委などに、夜スペの実施の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。」(gooニュース)

 「数々の教育改革で知られる東京都杉並区の区立和田中学校は22日、PTAの役職を簡素化し、区のPTA協議会(P協)から脱退することを決めた。4月以降、PTAは地域の協力者で作る「和田中地域本部」の一部門となる。文部科学省は新年度から、和田中をモデルに「学校支援地域本部」を全国1800カ所に置く方針。都市部を中心にPTAの担い手は減っており、保護者だけに頼らない和田中方式は広がる可能性がある。」(gooニュース)

■弱者切り捨ての「夜スペ」
 ご存知のように、「夜スペ」は教育格差を助長することから、杉並区内では反対の声が少なくありません。この「夜スペ」に参加できるのは誰でもというわけではなく、一定以上の学力が条件とされています。しかも有料。
 つまり、生徒の学力を底上げするのではなく、上位の生徒を一層レベルアップさせようというもの。すなわち、国に貢献させるためのエリートを作ることが、この「夜スペ」にはあるわけです。
 学業成績の良くない生徒を「弱者」と決めつけ、あえて「勝ち組」を作り出すために、公立中学の教室を利用していることになります。
 ご存知のように、学校の勉強ができないことイコール無能な人間ではありません。このようなシステムが進められれば、テレビドラマの「エジソンの母」に出てくるケンタ君のような存在は落ちこぼれにされてしまうわけで、優れた才能がむざむざ失われることになるのです。
 すなわち、この学校でいう優れた才能とは、国家がコントロールする教育に従順に従い、成績を上げていくことなのです。

■組織を分断するファシズムのやりかた
 その和田中は、P協を脱退し「地域の協力者」による「和田中地域本部」によって運営されるそうです。
「(1)PTAは地域本部の一部門の現役保護者部会とする(2)各クラスの保護者から役員を選ぶ仕組みは変えないが、会長は選出せず役職も少なくする(3)区内のPTA役員が集まる会合には今後参加しない??が主な内容。」(gooニュース)
 つまり、全国レベルはおろか、地域レベルでの横の連絡も分断しようとしています。PTAという大きな力を、学校単位の小さな集団に分断してコントロールしやすくしようというものです。
 歴史上でも、遠くは封建社会の農民に対し、近くはアジア太平洋戦争中の国民に対し、為政者は人が集まることを極端に嫌いました。戦後も、安保闘争が活発だった頃には、広場で数人が集まって集会などを開いていると、警官が飛んできて解散を命じたものです。イスラエルではパレスチナ人の勢力を分散させるために、パレスチナ人居住区を分断しています。
 国が教育を思い通りに運営するためには、PTAが大きな組織として機能していては都合が悪いのです。
 和田中学の藤原和博校長は、P協から脱退する理由について、「役職を簡素化して無駄を減らし、PTAの負担を軽減する」ためだと言っていますが、それが脱退の理由とはどうしても信じられません。P協には小さな組織ではできない協力体制が存在し、改革はP協の中でもできるからです。それをやらずに、なぜいきなり「脱退」なのでしょうか。
 文科省は新年度から和田中方式を推進すると言っています。和田中学のPTAはむざむざと、組織を分断する国の策略にはまってしまったというわけです。
 おいしそうな話にはたいてい裏があることをくれぐれも知っておくことです。

■目的はネオリベラリズム(新自由主義)の推進
 ネオリベラリズム(新自由主義)とは、民営化、規制の緩和、市場の自由化などによって、企業間の競争を活発にし、大企業がより多くの利益を得、中小企業は淘汰されるメカニズムです。これは1970年以降アメリカやイギリスで始まり、短期間で金融政策に大変革を実行させました。これは、社会主義国の中国でも実施され、資本主義化の推進力になりました。
 急激な金融経済の発展とは裏腹に、反面、労働組合の力は押さえ込まれ、格差を生み出す元凶にもなっていったのです。
 日本では小泉内閣が郵政民営化を実施したことが記憶に新しいですが、かつて「三公社五現業」といわれた公営企業がことごとく民営化されたことで利益が優先され、国民に公平なサービスが行き届かない状態を生んでいます。
 政治家や大企業の経営者が莫大な利益を庶民から吸い上げることを目論み、格差社会を推進するためには、国民の「反乱」はあらかじめ押さえ込んでおく必要があります。それが組織の分断であり、政治家や大企業の経営者の味方になってくれる「勝ち組」エリート集団を作る教育なのです。
 すなわち、そのモデルが和田中学。もし全国の学校がこうなったら、未来はどんなことになるか想像するのも恐ろしいことです。

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