ひまわり博士のウンチク

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松林宗惠監督「風流交番日記」

2012年09月01日 | 映画
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 この映画を初めて観たのは、小学生のとき、それも教室でだった。公開されて間もないこの映画のフィルムが16ミリになってなぜ学校にあったのかはわからないが、一度ならず観た記憶がある。
 教室で映画を見せるのは、教師の都合で自習になったり、他のクラスと授業の進行速度をあわせるための時間調整だったりする。現代では考えられない。
 戦後の小学校では、授業の一環として児童が揃って映画館で映画鑑賞をしたり、16ミリに落とした劇映画を一つの教室に一学年を集めて観せるということはしばしばあった。多分、教師も教室も不足気味であった当時、上級生が映画を観ているあいだに、空いた教室で下級生が授業をやったり、あるいは教師が会議に入ったりしていたのだと思う。
 戦後の産めよ増やせよのいわゆる団塊現象で、子どもの数が急速に増えたのに教室が足りず(もちろん教師も)、午前と午後の2部授業というのもあった。
 テレビがまだ普及していなかった時代、映画は娯楽の王様だった。夏休みには校庭で映画鑑賞会が行われたりもしていた。それで記憶に残っているのは「ダニー・ケイの牛乳屋」。
 
 で、この「風流交番日記」、公開は1955年、ちょうど敗戦から10年目だ。監督の松林宗惠(まつばやし・しゅうえ)は僧侶でもある、希有な体験を持つ映画監督だ。
 交番は新橋駅前に実際にあった。鉄筋コンクリート造りの立派な建物である。駅周辺はまだ閑散としていて交通量も少ない。
 出演は、若き日の小林桂樹、宇津井健、ベテラン巡査として志村喬。ヒロインは当時を代表する美人女優の安西郷子。三橋達也の細君になった人だ。ほかに、のちに明智小五郎で名を挙げる天知茂や、丹波哲郎らも端役で登場する。
 
 ストーリーは、現在ではあり得ないことの連続である。美人令嬢の好感を得ようと手錠を見せ、あげくふざけて彼女の手と自分の手を手錠でつないでから、鍵を忘れたことに気付いたり、勤務中に結婚披露に招かれて制服のまま酒を飲んだり、札つき美人詐欺に百円捲き上げられてしまう警官もいる。
 コメディーであって深刻な話はない。たいした事件も起きず、警官たちはいずれもお人好しで気さく、どちらかというとのんびりした映画だ。
 まだ戦後色の強い時代、戦時中の特高や憲兵などのイメージを払拭したい民主警察が、「愛される警察」の宣伝を目的とした映画ではないかと勘ぐりたくなる。いや、実際その目的はあるのだろう。
 街の風景や警官の日常など、現代ではとても信じられないようなことが当たり前に行われている。そのあたりを見比べてみるのも面白い。
 
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