(岩波書店版「芥川龍之介全集」第7巻口絵)
今日は「河童忌」である。
河童忌とは芥川龍之介の命日で、代表作「河童」に因む。
芥川 龍之介(1892年(明治25年)3月1日 - 1927年(昭和2年)7月24日)は83年前のこの日、雨の降りしきる田端の自室で服毒自殺をした。享年35歳である。
「河童」はほとんどが短編で占められる芥川作品の中では最も長い。長いといっても岩波文庫でわずか73ページである。
しかし、如何にもユニークなこの作品の中には、芥川ワールドがぎっしりとつまっている。
これは河童の世界に模した、人間世界のパラレルワールドである。時代的なギャップはあるものの、人間界で常識とされていることの正反対のことが、河童の世界での常識なのだ。
悪い遺伝を撲滅するために、不健全な河童と結婚する。
結婚したいと思った雄を、雌が徹底的に追いかける。(これは現代と同じか)
1955年発行の岩波版「芥川龍之介全集」が手元にある。全19巻別巻1の20冊で、別巻の「芥川龍之介案内」に雑誌「新潮」が主宰する座談会形式の「河童」評がある。
尾崎士郎、横光利一、林房雄、葉山嘉樹ら、文學界のそうそうたるメンバーが、「河童」についての(それぞれ勝手な)印象を語っている。
尾崎士郎「僕はこの作品を読み始めてから何か特殊なものに触れるだろうという期待をもって読んで行ったが、結局終いまで行って何にも触れなかった」
尾崎士郎は、通俗的な面白さに過ぎないとか、随筆をまとめたようなものだとか、ぼろくそ言っていて、それなのに「ある意味で好きなんだ」とは何が言いたいのか。
横光利一は「子供っぽいところがある」と言ったかと思うと、林房雄は「これは全面的な社会批評だ」という。
大物連中が集まって大混乱しているところが面白い。
当時としては、それだけユニークな作品だったと言うわけだ。
ぼくが生まれて初めて読んだ岩波文庫が、芥川龍之介の「鼻」であった。短いので、旧字旧仮名だったが中学生のぼくにもすぐに読めた。
「鼻」や「蜘蛛の糸」は、教科書にも全文が載る作品である。
しかし、その短い小説の中に、溢れんばかりのウンチクが込められているのが凄い。
高校生と中学生の子供たちが夏休み用のお薦め本リストをもって来た。最近は若者の活字離れが顕著であるせいか、我々が夏休みといえばこの時とばかりチャレンジした、トルストイやドフトエフスキーの大長編はまったく見当たらない。
何も夏休みを利用しなくても、と思えるような作品ばかりだ。
そういった意味では、芥川作品は、活字が苦手な彼らにお勧めだと思うのだが。
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