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ひまわり博士のウンチク

読書・映画・沖縄・脱原発・その他世の中のこと

「アジア記者クラブ通信」259

2014年03月17日 | 本と雑誌
特集 ウクライナ情勢
 
Apc259
 
 再び東西冷戦かと危惧されるウクライナ情勢。ウクライナは分割崩壊の危機にあり、クリミヤ半島をめぐってロシアとEUとのあいだで綱引きがおこなわれている様相である。
 日本のマスメディアはことごとく反ロシアの報道姿勢に偏っているが、はたしてウクライナ新政府は正義であるのか、ロシアのクリミア侵攻は、全面的に悪であると判断してよいのか。
 今号の特集は、両者の主張と思惑を公平に比較するために重要な情報であるといえる。
 
Apc259index
 
1. キエフはモスクワ突破とユーラシア支配の要衝だ
   ウクライナ動乱の真相

 ウクライナ動乱は、米国と欧州連合に後押しされたウクライナや党勢力による政変〝クーデター〟であった。
 
2. ポーランド民族主義者は軍事介入唱える
   バルカン化の危機孕むウクライナ

 ポーランドの民族主義者〝ネオナチ〟は、この機に乗じて「ウクライナに軍事介入し、ポーランド固有の領土を奪還せよ」と唱えはじめた。
 
3. ウクライナ〝新政権〟はネオナチが主導する
   黙殺を装い支援する西側諸国

 ウクライナ市民による講義デモは、突如、なぜ極右が主導する反政府運動へと変貌したのか?
 
 『アジア記者クラブ通信』(月刊)
 1部定価 税込700円
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伊藤孝司『無窮花の哀しみ』

2014年02月28日 | 本と雑誌
Mukyuhana
(風媒社発行 A5判上製226頁 1,800円+税)
amazon『無窮花(ムグンファ)の哀しみ』
 
 いま、安倍政権によって、「従軍慰安婦」問題に旧日本軍の関与を認めた河野洋平官房長官談話の見直しがなされようとしている。安倍総理の盟友であるNHKの籾井会長が、「慰安所は日本ばかりではない」などと、従軍慰安婦を正当化するような発言が問題になったが、安倍政権は「性奴隷制度」そのものを「なかったこと」にしようとしているのだ。
 しかし、日本の右翼や安倍極右政権がどれだけ歴史改竄を企てても、旧日本軍による「性奴隷制度」がまぎれもない事実であること、しかも重大な犯罪行為であることは事実であり、本書はそれを被害女性の生の声と写真で伝えている。

 『日本軍に踏みにじられた尊厳の回復を日本政府に求めながらも、志半ばにしてこの世を去った韓国・朝鮮の女性たち。本書では、私がかつてインタビューをした女性たちの中から、すでに亡くなった韓国人8人・朝鮮人10人の証言を紹介している。……無窮花の可憐な花のような被害女性たちの、深い哀しみを「遺言」としてこの本にまとめた。』(著者)
 
 本書で「従軍慰安婦」という呼称が用いられているのは一ヵ所だけである。それは、以下の一文である。
 『社会でいまもよく使われている「従軍慰安婦」という言葉は、「軍慰安所」で女性たちが受けた被害の実態とあまりにもかけ離れている。被害女性たちは、自らすすんで「従軍」したわけではないし、長期にわたって監禁して集団で強姦する行為を「慰安」とは呼べない。正確に表現するならば「日本軍専用の性奴隷」である。』
 「従軍慰安婦」という言葉が適切でないことを説明するために一度だけ用いられ、以下は「性奴隷」で統一している。このような見解は徐々に広がって入るが、いまのところ一般には通りが悪い。そこで、国会での質問や答弁、マスコミなどではカッコ付か「いわゆる」をつけて用いられることが多い。
 
 この本では、韓国・朝鮮の被害女性に限ってインタビューが紹介されているが、被害は両国に限ったことではない。フィリピン、台湾、中国、インドネシア、そしてインドネシア在住のオランダ人女性までが「軍慰安所」に強制連行されている。(スマラン事件)
 最近のベストセラーの上位に、多くの反韓国・朝鮮関連の書籍が含まれている。若者を中心にした右傾化は、大変危険な状態にある。極右の暴挙に加担せず、「性奴隷」の真実とは何なのか、日本人は、日本の国はどうするべきなのか、本書はいやが上にも真実を見る目を開かせてくれる。
 
「私自身が強制連行の最も確かな証拠ではありませんか」盧清子
「朝鮮語を使っただけで『トキ子』は首をはねられたんです」金英実
「『処女供出』の名目で私たち3人が連行されました」李相玉
「朝鮮と中国の女性150人を並べ、首切りを始めたんです」金大日
「反抗した裸の女は性器を拳銃で撃たれて殺されました」黄錦周
「ひとりで1日30~70人もの相手をさせられたんです」文玉珠
「『妊娠して役に立たないから殺す』と言って、お腹を軍刀で切ったんです」李桂月
「兵隊は彼女の首を切り、その煮汁を飲めと強要しました」裏福汝
 
 (「無窮花=(ムクゲ)。朝鮮民族は、美しい花を途切れることなく次々と咲かせるこの花に、周辺の大国から幾度となく侵略を受けても抵抗を続けてきた国の歴史を重ねてきた)
 
amazon『無窮花(ムグンファ)の哀しみ』


ワシリー・エロシェンコのこと

2014年02月20日 | 本と雑誌
Yaroshenkop
「ワシリー・エロシェンコ像」。中村彝(なかむら・つね)画。

 先日父を知っているというエスペランティストに出合って、気になっていたことを思い出した。
 父の書棚に『エロシェンコ全集』(みすず書房)という三巻本がならんでいた。奇妙な名前なので、ずっと気になっていたのだが、その全集を手に取ることはなかった。父の遺品の中に残っていたはずなのだが、妹が整理した際、どうやら古本屋に売ってしまったらしい。
 そんな訳だから、名前は知っていても著作も評伝もまったく読んだことはなかった。思えば気になっていながら何も読んでいないというのはまったくおかしい。そこで、遅ればせながらいくつかの作品と評伝くらいは読んでおきたいと考えた。
 
 ワシリー・エロシェンコは、1890年生まれのロシアの作家、言語学者、教育者でエスペランティストである。4歳の時に麻疹(はしか)によって失明し、子供時代は盲学校で学び、15歳の頃からエスペラントを学んだ。エスペラントを活用して世界各地を旅し、日本にやってきたのは視覚障害者が「按摩(あんま)」を職業にして自立していると聞いたからだ。
 日本語も達者で児童文学を著し、進歩的な文学者の間では知名度があったが、社会主義運動にかかわるなど、危険思想の持ち主と見なされ国外追放になる。
 ロシアではほとんど無名に近く、日本のエスペランティストの間で高い評価を得ている。
 エロシェンコが知られるきっかけになったのは、やはり日本とかかわりの深い作家、魯迅であった。魯迅の短編小説『あひるの喜劇』(『魯迅選集』第一巻「吶喊」)の中に、「ロシアの盲目詩人エロシェンコ君が、愛用のギタアを携えて北京へ来てまだ間もないころ……」とある。しかし当初、この「エロシェンコ」なる登場人物は、魯迅の創作と思われていたという。それほど知名度がなかったのだ。
 
 さて、作品を入手しようとさっそくネットで検索したものの、ほとんどが絶版で、新本で購入できるのは『エロシェンコ童話集』(偕成社文庫)だけである。それでも、古書市場にはそれなりに出回っていて、『盲目の詩人エロシェンコ』という同じ表題の2冊の本を、古書で容易に入手できた。一冊は1956年発行の新潮社から発行された高杉一郎によるもの(これはたぶん、のちに岩波から出版された『夜あけ前の歌―盲目詩人エロシェ?ンコの生涯』の原本であろう)、もう一冊は恒文社発行のア・ハリコウスキー著、山本直人訳によるものだ。
 『エロシェンコの都市物語』(藤井省三著 みすず書房)というのもあって、東京を追放されたあと、東アジアの都会を転々とする物語で、面白そうだし安かったのでこれも入手した。
 問題は作品である。手に入らなければ童話集でも仕方がないが、できれば選集か全集が欲しい。父親が蔵書していた全集は、状態の良いものだと古書店で1万円近くする。本格的に研究しようというのではないから、手を出しかねていた。地元図書館に蔵書していないかと思ったが、なぜだか杉並中央図書館に2巻と3巻だけがあって、1巻がない。
 先の『盲目の詩人エロシェンコ』のなかで、出版物についても言及されていて、『エロシェンコ全集』全3巻のうち2巻までが作品集で、3巻は回想記と作品についての評論だとある。その1巻と2巻が、1974年に『エロシェンコ作品集』(全2巻)としてを復刻されていることがわかった。その作品集も絶版なのだが、全集にくらべるとすこぶる安い。さらに探求すると、2冊をたった1260円で出している古書店があった。送料を含めても1560円、「これは買いだ!」と思ってさっそく注文した。程度は期待できないが、読めればいい。
 ところがここでさらなる問題が起きた。この古本屋は軽井沢にあり、大雪でいつ発送できるかわからないという。仕方がないので待つことにして、「作品集」なら図書館に蔵書されているのではないかと、あらためて調べた。すると中央図書館をはじめ区内3ヵ所の図書館にそれぞれ2冊揃いで蔵書されていることがわかった。
 カミさんが中央図書館の近くまで用事があるというので、ついでに借りてきてもらおうと頼むことにした。作品集は2冊で1000ページほどになり、10日間の貸し出し期間に読み切れそうもないけれど、端から全部読むつもりはなく、主な作品だけのつもりだし、そのうち古書店から届くだろうと予測した。
 ところがところが、中央図書館は蔵書点検のために一週間休館するという。踏んだり蹴ったりだ。だがありがたいことに、カミさんが翌日、蔵書されている区内の宮前図書館近くまで出かけるという。杉並区は図書館網が実に発達していてありがたい。蔵書数もかなりのものだ。
 
 そうこうしているうちに古書店から連絡が入り、集荷には来てもらえないが、郵便局まで持っていけば翌日の集荷に乗せられるという。それでこれから郵便局に行ってくるというのだ。ありがたい。
 道路は開通しているようだから、たまった荷物を捌くのに時間はかかっても、3~4日のうちには届くはずだ。
 カミさんに借りてきてもらった図書館の本は、どんな保存状態だったのか、表紙のボールが湿気を吸ってぶかぶかになっていた。扉に「昭和49年11月」の印があり、今から40年前だから傷むのはやむを得まい。
 その翌日、なんと朝早くに郵便で軽井沢から本が届いた。安いので覚悟はしていたが、破れこそないものの、天と小口は汚れとシミでひどい状態だった。ハードカバーなので、サンドペーパーがかけにくい。カバーの汚れを落としたあと、手作業で天と小口をシコシコとペーパーでこすって、まあ、我慢できる程度にまで恢復させた。それが下の写真である。
 
Yaroshenko
 
 第1巻の「桃色の雲」はおもに日本滞在時の作品で、多くは日本語で書かれている。表題作の「桃色の雲」は童話劇で、エロシェンコの代表作ともいえるもの。出演者が多いので、学校演劇に向いていると思うのだが、長いので抜粋しないと上演できない。もっとも、児童演劇の指導者で、何人がこの戯曲の存在を知っているだろうか。
 第2巻は表題が「日本追放記」とあるように、「危険思想の持ち主」として国外追放になって、ハルビン、上海、北京、モスクワなどで書かれた作品が集められている。冒頭の「日本追放記」では、自分に降り掛かった理不尽な出来事をおおいに悔やんでいることがわかる。
 「君は日本で、いったいどんなどえらいことをしたんですか? どうして日本から追放されるんですか?」
 「僕がどえらいことをやったから追放されるんじゃなくて、僕を追放した人がつまらないことをしたんだよ」
 親しい友人のなかに社会主義者がいたこと、社会主義の演説会や研究会に参加したこと、雑誌に童話を書いたこと、演壇に立って、ロシアの自由の歌をうたったり、演説もしたこと??が理由だそうだが、時代背景から追放は無理もない。日本人なら治安維持法違反で拷問を受け投獄されている。
 
 それにしても、作品のほとんどが絶版状態というのは残念である。主な作品だけでも岩波文庫あたりで出版できないものであろうか。みすず書房はなかなか版権を外に出さないから、むずかしいだろう。

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桐山襲『パルチザン伝説』

2013年12月31日 | 本と雑誌
Partisan
 このところタイトな仕事が何件も重なって、ブログの更新はおろか読書をする時間もままならなかった。
 年の瀬になってからも、28日、29日と打ち合わせがあり、30日になってようやくけりがついた。で、前から気になっていたこの本を一気読みした。
 
 この作品は1983年に雑誌『文藝』で発表され、翌1984年に単行本化されたものである。しかし、その単行本化にあたっては、大変な紆余曲折があった。
 深沢七郎の「風流夢譚」(1961年)が右翼の攻撃によって葬られてしまった事件のことは、以前このブログでも扱った。本作品「パルチザン伝説」も、ある週刊誌記事がきっかけとなって「第二の『風流夢譚』」扱いされてしまったのである。
 自分はこれまで作品のタイトルと事件の簡単な概要しか知らず、作品そのものを読んだことがなかった。それが雑誌『創』12月号に、この事件の顛末が詳細に紹介されていて、読まずにいられなくなった。ところが、現在入手できるものは第三書館が著者のことわりなく強引に出版してしまった海賊版で、丹念に推敲し手を加えた正規版は絶版状態になっている。したがって、読むことのできたのは古本屋のサイトをあさって入手したものである。

 『創』12月号には、攻撃のきっかけとなった『週刊新潮』の記事について以下のようにある。
 
〈以下『創』12月号より引用〉
 記事のリードを引用しよう。
《「この恐るべき題材に強烈に迫っている作者に敬意を表する」??昨年秋の文藝賞選考の際、選者からこんな賛辞を呈されながらも、その内容があまりにも刺激的に過ぎたために、惜しくも受賞を逸した作品がある。桐山襲という無名の新人によって書かれた『パルチザン伝説』という小説で、革命への情熱に駆られた親子が二代にわたって天皇暗殺を企てるという筋立て。第ニの『風流夢譚』事件を誘発しかねない題材だけに、『文藝』編集部もその発表に関しては慎重を期していたが、この十月号でやっと掲載に踏み切ったのである。》
 作者は、この作品が「天皇暗殺」小説とか「第二の『風流夢譚』」とか政治的な文脈で語られることに強く反発していたのだが、この『週刊新潮』の記事によって、否応なく騒動に巻き込まれることになったのだった。
〈『創』引用終り〉
 
 小説のヒントは現実の事件がヒントになっている。1960年代「東アジア反日武装戦線」による「特別列車攻撃計画」である。著者は「それは新聞にも報道された既知の事件であり、その詳細な記録さえ出版されているものであったから、右翼団体がいまさら反発することはあるまい」とかんがえていたと、同書に併載の「亡命地にて」の中で書いている。
 この作品の主人公が行おうとしていた天皇爆殺計画は、実際あまりにも稚拙で乱暴である。万に一つの成功もなかったであろうし、仮に成功したとしても、日本の天皇制が覆るはずもない。
 したがって、著者が天皇暗殺そのものを肯定していたわけではないことが感じられる。暗殺されるべきは、天皇という偶像の向こう側にある、日本国民の天皇至上主義の精神であった。それは次のような記述から知ることができる。
 空襲が続く終戦直前のある日、隣組の男(これは大工であって、庶民の象徴として描かれている)がやって来たときの一節である。

 ……戦争だから家が焼かれるのは仕方がねえが工場が狙われるのが悔しい、それに宮城が心配だ……
 なるほど、この国のひとびとはかつてない空爆の中でそういうふうに考えているのか??動悸の細波が残っている胸を押さえながら、私は頭のどこかが痺れるのを感じていた。まだ焼かれたりないのか、まだ殺されたりないのか、いや、全部焼かれ。全部殺されてもそう思い続けているのか……
 
 この大工の言葉からわかることは、かけがえのないものの第一が天皇であり、次が大企業、それらを守るためならば自らの生活が犠牲になるのはやむを得ない、ということである。これは平成の現在でも変わっていないのではないか。基本的な部分で、現在の日本は大日本帝国時代と何ら変わっておらず、ただ露骨な軍国主義を民主主義というオブラートにかぶせただけなのではなかろうか。
 作者が読者に伝えたかった最も重要な点は、天皇の意志で始めた戦争を、天皇本人の意志によって終結させることを認めたくなかったのである。なぜなら、天皇はこの戦争の最高責任者であり、天皇の手によって終戦させてしまえば天皇の戦争責任が曖昧になってしまうからである。人民の意思で戦争を終わらせるべきなのである。この小説では、実際にあった陸軍将校による「玉音放送」録音盤奪取作戦を焚き付けたのは、主人公ということになっている。
 ただ終らせるのではなく、この戦争を通じて日本を変えるためには「終らせ方」が重要だった。沖縄返還がただ日本に統合されるのではなく、返還のされ方が重要であったのと同じように。
 案の定、国民は戦争を終わらせるための努力を何らせず、向こうから勝手に転がり込んできた似非民主主義による見せかけの平和に興じているのだ。
 戦後、主人公が見た光景は次のようなものだった。
 
 そして??私が二重橋の広場で視たものは、広場の玉砂利の上にうずくまっている夥しい人間たちの異様な姿であった。夥しい男たちや女たちが、粗末な身なりのままに、異変を告げる虫たちの群のようにうずくまっていた。不潔な啜泣の声や、叫びのようなものが、あたりに満ちみちていた。そして、この時、私は穂積一作が正しかったこと、彼の試みたことが唯一の正しい道であったことを、凛然として理解したのだった。
 
 結果、敗戦から間もなく70年、日本は何ら変わっていない。政府は人民よりも大企業の反映を優先させ、都合良く天皇を利用し、庶民による都合の悪い利用のされ方は許さない。
 下品きわまりない都知事が下劣な行為によって排斥されても、次に立候補を取りざたされている有力候補は、それに輪をかけて品性下劣な人間である。
 この小説の中にこんな言葉があった。
 「国民はそのレベルに合った指導者を選ぶ」

【リンク】
風流夢譚〈電子書籍案内〉
深沢七郎『風流夢譚』
「セブンティーン」~「政治少年死す」

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『茶色の朝』とは

2013年12月10日 | 本と雑誌
Chairo_no_asa
amazon『茶色の朝』

 強硬に特定秘密保護法が成立させられた日の前後、マスコミ報道で「茶色の朝」という言葉が頻繁に出てくるようになった。
 今朝(12月10日)の東京新聞にも、「こちら特報部」という特集の中で、「『茶色の朝』迎えぬために」と見出しにあった。
 『茶色の朝』は2003年に世界中でベストセラーになったフランク・バブロフの寓話である。
 
 茶色以外の犬や猫を飼うことが法律で禁止され、主人公はごたごたはご免だと法に従いペットを殺してしまう。このような乱暴な法律を批判し続けていた新聞は廃刊になった。やがて出版物も規制され、図書館では政府に批判的な書物が棚から消えていった。
 それでも主人公たちは「街の流れに逆らわないでさえすれば、安心が得られて面倒に巻き込まれることもない」と思っていた。
 ある朝、いつのまにか法律が変わっていて、過去に茶色以外の動物を飼っていた者も、「国家反逆罪」として逮捕されると、ラジオのニュースが語っていた。
 突然現れた自警団によって、主人公は逮捕され、「どこか」に連れていかれた。
 
 特定秘密保護法は、条文のほとんどに、適用範囲を無限に拡大できる「その他」という文言が付され、いくらでも都合良く解釈できる。まさに、現代の治安維持法である。
 治安維持法の時代、労働組合をリードしただけ、家にマルクスの本どころか英文の本があっただけで連行された人がいる。劇場では火事のシーンの炎が赤いという理由で中止命令を受け、事前の検閲で俳優はしゃべる科白がなくなった。
 戦前の「治安維持法」は2回も改定され、その度に理不尽さが増し罰則も厳しくなった。何人かで集まっただけで、「天皇制転覆」を謀ったとされ、明らかな証拠がないのに死刑にされることすらあった。
 70年近くも前のことだから、若い人にとっては時代劇、「治安維持法」をよく知らない人にとってはフィクションと思うかもしれないが、近代国家日本の過去に実際あったことである。「治安維持法」を治安を良くするためのいい法律だと思っている人がいると知って驚いた。
 
 『茶色の朝』の最後に、次のような文章がある。
 
(以下引用)
 「茶色の朝」を迎えたくなければ、まず最初に私たちがなすべきこと??それはなにかと問われれば、「思考停止をやめること」だと私なら答えます。なぜなら、私たち「ふつうの人びと」にとっての最大の問題は、これまで十分に見てきたとおり、社会のなかにファシズムや全体主義につうじる現象が現われたとき、それらに驚きや疑問や違和感を感じながらも、さまざまな理由から、それらをやり過ごしてしまうことにあるからです。
 やり過ごしてしまうとは、驚きや疑問や違和感をみずから封印し、「それ以上考えないようにする」こと、つまりは思考を停止してしまうことにほかなりません。「茶色の朝」を迎えたくなければ、なによりもまずそれをやめること、つまり、自分自身の驚きや疑問や違和感を大事にし、なぜそのように思うのか、その思いにはどんな根拠があるのか、等々を考えつづけることが必要なのです。
 思考停止をやめること、考えつづけること。このことは、じつは、意識を眠らされてでもいないかぎり、仕事や生活や社会的責任の違いを超えて、私たちのだれにとっても可能なことです。そして、勇気をもって発言し、行動することは、考えつづけることのうえにたってのみ可能なのです。(『茶色の朝』大月書店)
amazon『茶色の朝』
 
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『夕陽妄語』と加藤周一の考え方

2013年11月26日 | 本と雑誌
Sekiyomogo
 『夕陽妄語(せきようもうご)』は朝日新聞の夕刊に月1回のペースで連載されていた加藤周一のエッセーである。連載は1984年から2008年の亡くなる直前まで続いた。単行本になっているのは8巻の2006年までで、「終章」という形で出版されるうわさのあった残りの部分はいまだに出版されていない。1996年までが朝日選書版3冊に納められているのだが、こちらは文字が詰まっていていささか読みにくい。やっぱりざっくりと組まれた単行本の方がいい。
 
 全巻通して読んだことはないのだが、時おり適当に引っぱり出しては拾い読みする。
 そうしていて昨日、4巻の中の「『やらせ』について」という一文が目に入った。

 ??高山病に苦しむ男を、TV劇のなかで、俳優が演じれば、「やらせ」にならない。はじめからつくり事が約束だからである。同じ場面を、ネパール高原のNHKと区別番組の中で、撮影隊の一人が演じれば、「やらせ」になる。特別番組はありのままの事実を伝えるはずだという約束に反するからである。つくり事を事実であるかのように示すのは、視聴者をだますことで、よろしくない……。
 しかし果たしてそうだろうか。??
 
 テレビドラマでもドキュメンタリーでも、撮影の現場では誰も実際に高山病にかかってはいな久、見せかけだという。ネパールの自然の厳しさを表現するための演出であって、いずれにしても見る人はだまされる。要は、承知でだまされているかだまされたくないのにだまされるという違いに過ぎないのだと述べている。
 
 こんな文章もあった。加藤周一が米国のPBSのために作った番組の事である。
 
 ??私は荷物を持って成田空港の旅客ターミナルを歩いている。「そうして私は米国へ出発した」というような科白(せりふ)が入る。しかしそのとき私は米国に出発したのではなく、手荷物の中は空であった。
 
 やらせを含まないドキュメンタリーなど存在しない……それは事実である。先の高山病についていえば、ネパールの自然の厳しさは事実であり、それを伝える手段としての演技であれば罪は小さい。しかし、大本営発表のように全体の意味をまっ赤なウソで固めたとしたら、その罪は大きい。ところが、われわれはわかりやすい小さな事の方に意識が向きやすい「木を見て森を見ず」である。
 些末な事に意識をとられ、全体を見誤る事がえてしてある。
 とくに日本人社会では、大変立派な仕事をしてきた人物が、立ち小便を咎められただけで人格のすべてを破壊されてしまったりする。大手マスコミ報道はとくにその傾向が強い。
 
 そこで思ったのが、猪瀬直樹東京都知事の収賄事件である。誤解のないように言っておくが、自分は猪瀬知事をまったく評価していない。石原前知事の尻馬に乗って史上最大の得票数で当選したが、政治家としてはまったく評価できないし、悪であるとさえ思っている。これを機会に退任してくれればそれは実に喜ばしい事だ。
 ただし、ここで見落としたくない疑問があった。収賄が事実であるかないかは別にして、この事件の全容を見渡したとき、政治家の多くが普通にやっている不透明な現金の受け渡しについて、「なぜ検察が動いたのか?」という疑問である。しかも、なぜ猪瀬だったのか?
 政府与党と検察・官僚は一心同体といっていい。もし、猪瀬知事が現在の政府にとって重要とされる人物であるならば、おそらく検察は動かなかったであろう。猪瀬知事の収賄がたとえ事実であっても、猪瀬を知事に据えておきたいのならば、何をしてでも握りつぶすはずだ。逆に、政権与党にとって邪魔者だった福島県の佐藤栄佐久知事のように、弟の汚職事件を追及して追い落とすような事を、権力はいとも簡単に行う。一人の人間を生かすも殺すも官僚のさじ加減一つなのだ。
 
 いま、国会では「特定秘密保護法案」の審議が続いている。新聞を読んでいる人ならある程度わかっているけれど、読んでいない人にとっての情報源であるテレビは、詳しい報道をほとんどしない。猪瀬知事の汚職事件はド派手に報道しているにもかかわらずである。あきらかなスケープゴートだ。
 
 何があったのか、政府は何が狙いなのか。東京都知事の汚職という狭い範囲ではなく、その向こうのもっと大きな力がどう動いているのかに意識を向ける事を忘れないようにしたいと思う。
 
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若杉冽『原発ホワイトアウト』

2013年11月24日 | 本と雑誌
Genpatsuw
 友人に勧められて読む。現役キャリア官僚の書いた内部告発ということで、いま関係官庁が犯人探しに躍起になっているといわれている。
 だが、あくまで体裁はフィクションである。現実の人物がモデルと思われる記述が多々あるものの、様々な事象が必ずしも本人と一致していない。たとえば新潟県の泉田裕彦知事とおぼしき人物の身の回りで起きた出来事は、福島県の佐藤栄佐久元知事に近い。
 佐藤知事が収賄容疑で有罪になったことはまだ記憶に新しいが、それが「新崎県の伊豆田清彦知事」という設定になっていて、泉田知事を想像させる。知識のない人にはまるで泉田知事が汚職事件で逮捕されたように思えて、まったく迷惑なことだろう。
 ほかにいくつも例が挙げられるが、名前が似ているからといっても、それがかならずしも実際の人物を描いてはいないといっていい。
 
 しかし、その内容はすごい。邪魔者を排除する検察と政権、及び官僚の連携はなんとも恐ろしい限りである。何の罪もない人間をいとも簡単に犯罪者に仕立て上げる。大手マスコミを利用して情報を操作し、国民を欺く。それらの手練手管が、現役官僚でなければ知り得ないリアルさで描かれる。
 
 ラストでは送電線の鉄塔がテロによって爆破され、行き場を失った膨大な電力が原発内で暴走し、メルトダウンを引き起こす。これは百パーセントフィクションだが、一般に知られていない「原発事故」の要因の一つが描かれる。模倣犯が出なければ良いのだが。
 
 女性記者が若手官僚をハニー・トラップでたらしこみ、情報を漏洩させるシーンがあって、まさに西山事件の男女逆転版なのだが、これはいささか作り過ぎの感が強い。いくら何でもキャリア官僚が美人記者にたらし込まれたといって、審議官室にICレコーダーやビデオカメラを仕掛けたりすることはないと思う。警察が本気で調べればたちまちばれる、素人でもわかりそうな危険行為だ。まあ、小説を面白くさせる効果はあったが。
 案の定「犯人」は特定されて、二人とも逮捕される。そして、下半身問題にすり替えられる。まさに現代の西山事件だ。
 
 政権、検察、官僚の連携は原発問題に限らない。沖縄の米軍基地問題やTPPでも尖閣諸島問題でもなんでも、権力側に都合の悪い人物や組織などは、どんな手段を講じてもつぶしにかかることができるということだ。現在国会で審議中の「特定秘密保護法案」が可決されれば、もっと簡単に「邪魔者を消す」ことが可能になってしまう。
 この本の読後感は、何とも言えぬ恐ろしさが残った。

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宇田智子『那覇の市場で古本屋』

2013年10月15日 | 本と雑誌
Urara
 
 著者は那覇市の第一牧志公設市場の前で小さな古本屋を営んでいる若い女性である。
 大学を卒業してジュンク堂に就職し、ジュンク堂那覇店ができるというので、自ら赴任を申し出て沖縄に移り住んでしまった。そればかりか、とくに理由のない思い付きから、市場通りで古本屋を開業してしまったのだ。
 この近辺には何軒か古本屋があって、沖縄に行けばたいてい立ち寄っている。しかし、市場の真ん前で若い女性が古本屋を開いていれば絶対に目立つはずなのに記憶がない。もちろん店は覗いているのだろうけれど、もしかしたら、興味を引く本がなかったのかもしれないが。不覚である。
 もっとも、沖縄で古本を買うのには躊躇がある。戦後の沖縄の写真を集めた大きな本があって、定価で2万円ほど、古書でも安くて8000円はするのに、やはり市場近くの古本屋で3000円で出ていたことがある。よっぽど買おうと思ったのだけれど、手荷物が多くて持って帰れない。高い配送料を払ったのでは元も子もない。結局断念したことがある。
 彼女の書店「ウララ」は以前からあったごく小さな古書店を引き継いで始まった。間口75センチ、奥行き180センチで、二人以上のお客さんは入れない。2年後に隣のスペースも借りて、さらにいろいろ工夫して三坪ほどになった。それでもせまい。
 彼女の人柄だろうか、店作りから品揃えまで様々な人々の支援をえて、やがてマスコミに取り上げられるまでになった。
 この本も、『朝日新聞』に紹介されたのがきっかけだ。以前にも言ったが、この本の発行元のボーダーインクは地方小出版流通センターの扱いで、大手出版社でなければ扱っていない。Amazonでは端から取り扱っていなかった。以前おなじく地方小扱いの沖縄タイムスの本を八重洲ブックセンターの荻窪店を通じて入手したことがあったので、またそうしようかとも思っていたが、楽天ブックスが「取り寄せ」ではあるが扱っていた。ポイントもたまっていることだしと、注文して気長に待っていると一週間ほどで届いた。2刷になっていた。ちょっと残念。
 ところが、入手してからあらためてAmazonを見ると、扱っているじゃないか。評判を聞いて直接取り寄せたのか、だったら最初からなんとかしろと言いたい。
 
 面白い本である。
 彼女は本が相当好きなだけでなく、書くことも大好きなようだ。適度のユーモアがあり、何よりも情景描写が巧みだ。余計なことは書かず、それなのに読み手に適確に伝わってくる。読み始めて編集のうまさにも感心していたら、後半は雑になった。まあ、それが沖縄である。
 古書店を開きたいと言ったら、東京の出版社の営業マンから、「沖縄では本が売れない」と言われていたのに、沖縄には出版社も古書店も多いことに驚かされる。事実、東京で発行された沖縄の本は総じて売れない。出版界にもヤマトとウチナーの壁は存在するのだ。
 
 市場通りは観光客が多い。小さな店が連なる商店街で、「ちょっと見てってよ」と声をかけられなくなったらウチナンチュとして認められたことになるらしい。
 
 「見て、本屋だよ。本って一冊家にあるだけでおしゃれに見えるよね!」
 若い女性が言い放つ。一冊じゃ逆に格好わるくない? と思いつつ、細長い足とヒールを見送る。
 「なんで女の子がひとりで座ってるの?」
 父親に手を引かれた小さな男の子が私を指さしたときは、キュンとした。
「本を売っているんだよ」
 と教えてあげたかったのに、そのまま行ってしまった。

 
 店の看板の文字に間違いがあると言う。出来上がってから気付いてそのままにしてあるが、だれからも指摘されたことはないそうだ。
 すぐにわかったけれど、たしかに言われなければ見過ごす。

Urara2
 
 ときにプッと吹き出したり、なるほどと思わせられたり、沖縄で商売をやっていなければわからないことに少しだけ触れることができた。たぶん山あり谷ありで苦労も多かったのだろうけれど、彼女のこの本からはそれが見えなかった。いい意味で明るい。今度沖縄に行ったときは必ず立ち寄って声をかけよう。
 
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花田英三『詩集 坊主』

2013年10月14日 | 本と雑誌
Bohzu
 
 入手したばかりの『那覇の市場で古本屋』(宇田智子 ボーダーインク)を読んでいたら、ヘンな詩が引用されていた。
 
 おじいちゃんのからだには
 もう春が来ないのね
 いいね
 好きよ
 
 花田英三という東京出身、那覇市在住の詩人で、1929年生まれ。知らなかった。
 もう一つ、こんなのも引用されていた。
 
 おめおめと生きる愉しさ
 又うんこが一つ
 
 稲垣足穂の「一千一秒物語」や内田百閒の「鶴」、最近では川上弘美なんかの非現実的な文章が好きなものだから、腹を空かせたダボハゼのごとくこれに食らいついた。
 しかし発行元のボーダーインクは地方小出版流通センター(通称:地方小)の扱いで、大手書店でなければ取り扱っていないし、ほとんどが取り寄せである。しかも入荷まで、1週間から10日かかる。
 Amazonでは端から地方小は取り扱っておらず、楽天ブックスは取り扱っているものの、この本はなぜか不扱いだった。
 荻窪の八重洲ブックセンターに注文しておこうかと思いながら、日本の古本屋サイトを見たら、隣駅の西荻の古本屋が半額で出していた。早速電話してチャリを走らせた。
 
 「坊主」とは冒頭の詩のタイトルである。表紙のデザインが花札の坊主をあしらっているが、詩の「坊主」は僧侶の方だ。
 なるほど。
 深読みしたくなるし、想像をかき立てられる言葉の連続だ。
 おもしろい。
 他の詩集も読んでみたいところだが、果たしてどれだけ入手できることやら。
 
 もう一杯
 
 又もう一杯
 
 空が白んでくるころ
 すっかり酩酊して
 よろよろと寝床へ
 寝床には女が眠っていなければならない
 
 酒は尾州のおにころし
 
 奥付を見ると、コード番号の上に紙が張られていて訂正してある。何を間違えたのかと透かしてみたら、文字化けしていたのだ。
 おいおい、校正で気付かなかったのかい、と突っ込みを入れたくなった。沖縄の出版社の面目躍如か。
 しかし、造本は凝っているものの、A5判変形72ページで定価2000円(税別)は高いなあ。たぶん発行部数が少なかったのだろう。
 
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2014年版「憲法9条カレンダー」

2013年10月10日 | 本と雑誌
1
 
 前回は6年前だった。久しぶりに『全国お郷ことば・憲法9条』から方言訳が引用されている。
 先月発売されていて、どうしたのだろうかと思っていたら、今朝、宅急便で送られてきた。
 9条カレンダーは毎回岩合光昭さんのいぬ猫写真とともに憲法九条の条文が載せられているが、この5年間はオリジナルの条文だけだった。
 安倍政権になって憲法が危うくなってきたので、発行元の労働教育センターは力が入ったのだろう。
 
 2
 
 5月はウチナーグチ。こんな感じで入っている。
 6年前はたちまち完売だった。たぶんすぐにまた売り切れるだろう。


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40年目の『久保栄全集』

2013年09月23日 | 本と雑誌
 はて、久保栄と言っても、現代では知らない人の方が多いようだ。ちなみに我が家ではだれ一人知らなかった。
 なんてこった!
 
Kubo_sakae
 
 久保栄は小説家で劇作家、1958年に58歳の若さでなくなっている。代表作は「火山灰地」「日本の気象」「「林檎園日記」など。
 
Kubosakae
 
 久保栄全集はかつて書店の仕事をしていたときに、三一書房の営業が、棚卸しで余ったので安く譲りたいと言うので引き受けた。ただし、全12巻のうち11巻と12巻はないという。ないのはそのうち古本屋で探せばいいからと、引き受けることにした。
 代金は給料が入ったら払うからと言って半月ほど経ち、営業に電話したら退職したという。本の代金を払いたいというと、それはやめた営業が清算していったから本人に払ってくれという。
 しかしその営業とはその後まったく連絡が取れず、結局そのままになってしまった。たしか1000円だか2000円だかだったので、どうでも良かったのだろう。
 今から40年以上も前のことだ。
 
 ところが、11巻と12巻が容易には入手できなかった。11巻はまだしも12巻にいたってはたまに古書店に出ても、その1冊だけで1万5千円とか2万円とか、実にばかばかしい値段が付けられていた。
 11巻と12巻は書簡や覚書のようなものを集めた巻で、研究者でもなければ絶対に必要なものでもない。もともと発行部数も少なかったのだろう。
 だものだからあえて積極的に探求しなかったせいもあって、これはもう自分が生きているあいだに揃うことはないだろうと思っていた。
 それが5年ほど前に11巻が古本屋のウェブサイトに4000円で出ていた。すぐに注文した。
 ところがほどなく、「既に売れていて、サイトから削除するのを忘れていました、申し訳ありません」と返事が来た。
 ああやっぱりダメかと思っていると、一昨年の暮れにふたたび安価で出た。いささか傷んでいたが、とにかく入手できたので、それならばと12巻に網を張っていたのだ。
 ところが、たまに出てもすこぶる高い。万単位の金額を払ってまで欲しいものではないので、まあ何かの間違いで安く出るのを待とうと、ずっとおもっていた。
 それが数日前に、間違いと言ってしまっては古書店に失礼だが、Amazonの中古でなんと2000円で出ていたのだ。相場の十分の一である。
 
 今日、それが到着した。なんと45年をかけて全巻完結。(実際の刊行は1961年11月から1963年の4月まで)
 この全巻を自分が読破することはまずあり得ない。あとは芝居をやっている娘や息子たちが大切にしてくれることを祈るばかりだ。
 
Uno_jukichi
 
 久保栄と言えば「火山灰地」、「火山灰地」と言えば劇団民芸。砂防ホール(都市センターホールだったか)で上演されたときの、宇野重吉の朗読が印象的だった。
 
 先住民族の言語を翻訳すると
「河のわかれたところ」を意味するこのまちは
 日本第六位の大河とその支流とが
 真二つに裂けた燕の尾のように
 まちの一方の尖端で合流する
 鋭角的な懐に抱きかかえられている。
 
 北海道、十勝平野を舞台にした壮大なドラマである。
 もっとも最近では、知っている限り2005年に劇団民芸が上演したのが最後である。しかし、久保栄を知る人が少なくなった昨今、上演されることはもうないかもしれない。
 
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百田尚樹『永遠の0』

2013年08月01日 | 本と雑誌
Eien_no_zero
 
 この本が発売されて間もなく、何人かから「感動した」「涙が出た」と感想を聞かされていた。しかし、零戦の話と聞いてどうせ戦争を美化したろくでもない作品だろうとまったく読む気はなかった。ところがある時、信頼する友人の一人が最新作の『海賊と呼ばれた男」が大変よいという。
「それ、『永遠の0』と同じ作者だよね」
「そう、あれもなかなかいいだろ」
「いや読んでない。何となく特攻とか零戦とか抵抗があってね」
「読んでないのか、だったら読んだ方がいい。文句なしの傑作だから」
 彼は、他のいささか軽薄な友人たちとは異なり、正当な評価を下すことのできる読者だ。
 自分は百田尚樹という作家についてはあまりよく知らず興味もなかったのだが、彼の評価を聞いて読む気になった。
 読み終わり、すごい作品だと感じた。作者の百田氏に大変申し訳ないことをした。
 
 読み始めたものの、大変な繁忙期と重なってしまい、文庫本で600ページ近い大冊がなかなか進まない。緊急に読んでおかなければならない資料や原稿が山積しているものだから、朝の数十分、外出したときの電車の中、あれこれ時間をやりくりして読んでも一日数十ページしか進まない。結局読み終わるのに半月ほどが経ってしまった。

 海軍の本質と兵たちの本音については実によく書かれている。
「お国のためとか天皇のために戦っているやつなんて誰もいやしない。そんなのは戦後誰かが勝手に言ったことだ」
「特攻が志願だなんてウソだ。あれは命令以外の何ものでもない」
こんな台詞を抜き出すと右翼が目くじらを立てそうだが、百田は真実をフィクションの中に上手に潜り込ませ、右寄りの読者も感動させてしまうだろう。
 自分は仕事が昭和史ということもあって、この作品で紹介されているような兵たちの本音のたぐいは、いやというほど読んだり聞かされているので、「涙が出る」ことはなかったが、「その通り」と頷ける個所に何度も出くわした。
 
 戦後60年が経って、姉弟は特攻で戦死した祖父についての調査を始める。戦争体験者は誰もが高齢で、今やっておかなければの証人はいなくなると思ってのことだ。様々な伝手をたどって祖父の戦友たちを訪ね、当時の話を聞き集める。
 「宮部(姉弟の祖父)は臆病者だ」「少尉は腕のいいパイロットだった」「俺はやつをもっとも憎んだ」
 戦友たちの祖父に対する評価は様々だった。それは祖父が軍人らしからぬ優しさで、家族のために生きることに執着し、階級に係わりなく部下とも同等に接していたことにあった。しかし、生に執着していたはずの宮部は、終戦の一週間前に旧式の零戦で特攻に飛び立ち未帰還となる。それは運命だったのか、それとも……
 よく書けた戦争ものというイメージで読み進んでいた。ところが、最後の章(エピローグの前)で「そう来たか、やられた」と思った。姉弟の二人目の祖父が重い口を開いた時、とんでもない真実が明かされたのだ。あれほど生きたがっていた宮部が、想像を絶する出来事から、自ら生きる可能性を放棄したのである。それは彼が、優秀なパイロットであったからこそ可能なことだった。
 最後の最後で不覚にも、フィクションと知りつつ感動してしまった。

 海軍のどうしようもない上層部、人命軽視、特攻兵たちの無駄死に、それらをこれでもかとばかり並べ立てながら、既存の反戦小説とは一線を画す。いや、これは反戦小説ではない。百田は太平洋戦争の無意味さばかばかしさを訴えてはいるが、かといって平和至上主義でもないようである。ただ、この作品だけで百田の思想のすべては読み取れないので、もう二、三作読んでみたい。
 とりあえず『海賊と呼ばれた男』を読もうと思う。しかしこちらは単行本で上下二分冊の大作で、クソ忙しいのでいつ読み終わるかどうか。明日には、某所から膨大な資料が届く予定だ。それに眼を通しながら、さてどう時間をやりくりするか。


『日本国憲法』

2013年06月27日 | 本と雑誌
Kenpo
 出版界で憲法ものは売れないという定説がある。この、小学館発行の『日本国憲法』は例外中の例外である。
 なんと、1982年の初版から累計100万部!
 安倍政権が言い出した96条の一件から憲法が急に注目されたことで、新版の発行となった。もっともどこが変更されたのか、初版が手元にないので比較できない。
 
 どこが調べたのか忘れたが、日本国民の40パーセントが「日本国憲法」を全く読んだことがないという。あの有名な9条ですらである。本当だろうか。さらに、憲法改定推進派の70パーセントが、この薄い冊子レベルの憲法の全体に目を通したことがないそうだ。まあ、これは護憲派も同じだと思うが、この本の帯にある「読んでから考えませんか?」というキャッチコピーはまさにその通りだと思う。
 たしかに、憲法の条文は難解である。ゆとり世代には単語の意味すらわからず、チンプンカンプンかもしれない。しかし、この『日本国憲法』はわかりにくい単語を懇切丁寧に抜き出し、国語大辞典から引用して脚注にしてある。
 さらに、憲法の条文とカラー写真が、1見開きごと交互に構成されている。つまり、憲法と何らかの意味で関連する写真が全体の半分を占めているのだ。
 
 たとえば、こんな写真があった。これが憲法とどんな意味があるんだ、「写楽」編集部の編集だと知って遊びが過ぎると思ったら、ちゃんと意味があった。
 
Famirynude
 
 この家族の父親の生まれ年が昭和22年、日本国憲法が施行された年である。だからってファミリーヌードはないだろうが、売り上げには貢献しているはずだ。この写真だけでたぶん、何千部か実売部数を稼いでいると思う。さすが「写楽」。
 中にはまったく関連性がなさそうな写真もあるのだが、見ているうちに強引にでも意味を導き出そうとする自分がいた。完全にはめられた。
 定価525円(税込)。一家に一冊あってよいのではないだろうか。
 
 本当に変える必要があるのかどうか、きちんと読んでから判断すべきである。憲法とは、政治家が暴走しないように歯止めをかけるためにあるのだが、権力をもつ人間にとっては都合が悪いらしい。だから、様々な理由をつけて、都合のいいように憲法を変えようとする。もってのほかである。
 「GHQによる押しつけ憲法だから」など、改定する理由にならない。押しつけであろうがなかろうが、よいものはよい。
 「9条は、国際社会で通用しない」とは、世界中から戦争がなくなったら儲からなくなる人間が言うことだ。9条のおかげで、日本は戦後戦争をせずにいられた。一人の戦死者も出さずにいられた。そのことを忘れてはならない。
 自民党は「象徴天皇」を「元首」にするという。元首天皇の名のもとに行われた戦争で、200万人の日本人が落とさなくてもいい命を落としている。そのことを忘れてはならない。
 



『「慰安婦」バッシングを越えて』

2013年06月24日 | 本と雑誌
Ianfu
 昨日(6月23日)、西野瑠美子さん等が編集した論文集の出版記念シンポジウムに行ってきた。基調講演を行う中央大学の吉見義明教授にも久しぶりにお会いした。ちょっとお願いしたいことがあったのだけれど、「ずいぶん久しぶりですねえ」と皮肉っぽく言われてしまった。もう少し頻繁に挨拶に行くべきだった。
 頼み事を拒絶された訳ではなかったけれど、「今は猛烈に忙しいので、もう少し落ち着いてからにしてくれませんか」と、あらためてアポイントを取るように言われる。
 まあ、講演会やコラムの執筆と違ってまとまった時間が必要なのだから致し方ない。事実猛烈に忙しいそうだ。例の橋下発言は、こんなところにも影響が出ている。
 『「慰安婦」バッシングを越えて』(大月書店)は、橋下発言を見越して出版した訳ではなかろうが、結果的にタイムリーになった。
 「橋下さんはマスコミが誤解していると言ってませけど、誤解じゃありません。正解です。誰が聞いたってそう(従軍慰安婦否定)と受け取れます」と、吉見教授。
 
 本の内容は非常に良い。日本政府による「従軍慰安婦否定」の構造と、当時の現実はどうであったのかが明確に見て取れる。
 一つの例をとれば、日本軍人が直接女性を拉致して慰安婦に仕立てたのでなければ「軍の関与はなかった」とする政府の強弁に対し、直接手を下さないまでも慰安所の設定が軍の方針であることや、女性差別思想が当時の日本軍の中にはびこっていたことを、多くの文献や旧日本軍人の証言などから、究極的に軍が関与していたことを証明している。
 また、国際社会の批判に対して日本政府がそれを無視する姿勢が日本の外交に及ぼす影響について説く。
 タイトルの「バッシング」はいわゆる「へイト・スピーチ」のことである。「ヘイト・スピーチ」は在日韓国人に対する右翼の暴力的な罵声が有名だが、ネット上ではネトウヨ(ネット右翼)といわれる若者たちが、従軍慰安婦に対してきわめて非人道的な発言を繰り返している。彼等の多くはテレビゲーム感覚で韓国人や元慰安婦の女性をバッシングしていると分析する。つまり、人間としてみていないということなのである。
 詳しくは紹介の本を読むといい。
 お求めはここ→『「慰安婦」バッシングを越えて』
 
 と、いいつつ、実は「紹介の本を読め」は今回のシンポジウムで頻繁に使われた言葉で、いささか辟易とした。
 いただいたレジュメが実によくできていて、それ以上の内容が壇上からはほとんど聞こえてこなかった。
 実際、レジュメを読めば講演を聴く必要はほとんどないと言ってよかった。
 壇上からほとんどレジュメをそのまま読んだような発表を行っておいて、「詳しくは本を読んでください」と露骨な宣伝をする。それも一回や二回ではない。売らんかなの気持ちはわかるが、シンポジウム会場でそれをやっては逆効果だろう。
 参加者は、本に書かれていないことや、疑問点に的確な答えが得られることを期待してくる。当方は多忙なこともあり、パネルディスカッションの後半部分は時間の無駄とこっそり退出させていただいた。

 ただ、本そのものの内容は実にいい。しかし、雑誌『世界』などを読み慣れている人にはどうということはないが、高校生以下にはいささか難解で一般的ではない。
 
 もう一つ関連情報を伝えておきたい。吉見教授は無責任な橋下発言の中に自分の名前が出されたことから、質問と謝罪の要求を行った文書を橋下大阪市長宛に送っていて、それがネット上で公開されている。
 これは、橋本市長に反省を促すというだけでなく、全国民に対して何を学ぶべきかの提唱でもある。参考になるので、リンクを張っておく。
 リンク→吉見義明教授による橋下徹大阪市長への公開質問状


8年目の「全国お郷ことば・憲法9条」

2013年06月01日 | 本と雑誌
Okunikotoba9jo
 2004年発行の「全国お郷ことば・憲法9条」が「クレスコ」という雑誌で紹介された。このブログの読者の方からお知らせいただいた。紹介されたことは自分自身も版元も知らなかった。
 さっそく、発行元の大月書店に電話して、一冊送ってもらった。
 「クレスコ」は全日本教職員組合が編集し、大月書店が発行する教師を対象とした雑誌である。
Cresco1
 日教組の力が以前ほどではないので、どの程度の反響があるかあまり期待はできないが、8年も前の本が今になって紹介されるとは、息の長さを感じて喜ばしい。
 
 「子どもの本のもつちから」という1ページの連載コラムで児童文学者の清水真砂子さんによる。
 筆者は聖書の難解さを例にとった後、「日本国憲法を読むときにも似たようなことが起きて、原文の格調の高さは好きだし、必要な気もするのですが、さて、くらしの中で、たとえば9条を考えてみようとすると、いささか身のこわばるのを覚えます」と、普段話をしていることばで語られた憲法9条は世代間の橋渡しになるとも評価してくれている。筆者は静岡の出身ということで、静岡県榛原郡の方言を引用し紹介している。
 
 発行当時マスコミでも紹介されてそこそこ売れてしまっているので、必要な人はたいてい購入していると思うし、いくら今タイムリーといっても、注目は9条ではなく96条。どの程度売れてくれるか疑問ではある。
 しかし、現在ある在庫を完売したら、たぶん再版はしないと思うから、そうなったらまず手に入らない。Amazonで何万円とかいうばかな値段がつく前に、持っていない人は買っておいた方がいいと思う。
 
Cresco2
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