monologue
夜明けに向けて
 



 授業で自己紹介の時自分の星座を言わなければならないのでアクエリアス と言った。蟹座はキャンサーと教わった。ホームステイの話題が出た時、ユダヤの家庭だけには入りたくないという人が多かった。ユダヤの家に入るとこき使われるぞ、という。ユダヤについての知識はそういえばシェークスピアの「ベニスの商人」の強欲な商人がユダヤ人だったな、とか「アンネの日記」に代表される第二次世界大戦中のホロコーストの被害者ということぐらいだった。入りたくないといってもだれがユダヤ人かという見分け方も知らないし、わたしは漠然とそんなものかと思っていた。

 毎朝、6時頃起きて、裏のハリウッドサインを見上げると、たまになにか飛行機のようでそうでないような飛行体が上昇していった。この裏あたりがUFOの基地になっているのかも…、と思ったりした。黒かった壁に白いペンキを塗っていると奥さんがハズバンドはキャンサーという。初めは授業で習った蟹座のことかと思った。しかしそれは癌のことだった。かかっているのではなくUCLAの癌科の医師だったのだ。大変な職業だと思った。
可愛い息子がふたりいて食事中、叫び声が絶えなかった。夜、わたしが疲れて椅子にもたれて眠っていると足に小便してゆく。それに気づいた奥さんが「オー・マイ・ロード」と嘆声をあげる。いつもなにかあると「オー・マイ・ロード」だった。テレビや街では「オー・マイ・ゴッド」を聞くことが多かったので不思議だった。訊いてみると「うちはジューイッシュなので、『オー・マイ・ロード』というのよ」という。それでこの家はユダヤ人家庭なのだ、と初めてわかった。
fumio


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