山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

言葉を丸める

2018-12-14 | 知育タンスの引き出し
言葉を丸める
我が家のトイレには、ありがたい言葉と絵のついた日めくりがあります。昨日何気なくそれを見ていて、ハテナマークが点灯しました。まったく意味がわからないのです。
「こだわる心が世界をせまくしている。さわやかな心をもとう」
こだわる心、さわやかな心。これらは、何だろう? 私には理解できません。人に教えを説くときは、美辞麗句を並べてはいけません。言葉を丸めてはいけません。
「言葉を丸める」の典型例はケンカの場面です。テメェ、コノヤロウ。周囲の人間にはなにをいっているのかわかりません。
部下と同行をした上司が、「あんな話し方ではダメじゃないか」と吐き捨てます。部下は何がダメなのかがわかりません。これが言葉を丸める世界です。
こだわる心、さわやかな心。何を訴えたいのだろう? 考えこんでしまって、長トイレになりました。
山本藤光2018.02.22

325:雪中大運動会

2018-12-14 | 小説「町おこしの賦」
325:雪中大運動会
――『町おこしの賦』第10部:生涯学習の町
今年の「雪中大運動会」は、標茶町の主催だった。昨年から厚岸町が参加し、弟子屈町、中標津町、釧路町、川湯町、阿寒町と規模はさらに拡大していた。
恭二と詩織は、観戦ハウスの最前列で見ていた。各町から男女各二十人ずつの、小学生選手が並んでいる。昨日まで降っていた雪は止み、絶好の運動会日和だった。観戦ハウスに入り切れずに、土手には幾重もの人垣ができている。
「大盛況だね。私たちが高校生のとき、これの基礎を作ったんだよね」
 詩織は懐かしそうに、会場を見回している。

 最初の競技は、男女五人ずつの選手によるバトンリレーだった。中央にある雪合戦場の周囲には、四百メートルのランニングコースがある。標茶町は、水色の鉢巻きだった。七人の女子小学生が、号砲を待っている。歓声が上がる。乾いた音が鳴った。
標茶町は、三番手を走っている。走っている子どもたちの頭からは、白い湯気が上がっている。
 雪に足をとられて、コーナーで転倒する児童が多い。バトンは次々につながり、結局標茶町は四位でゴールした。得点ボードに点数が記入される。子どもたちの興奮した声が響き渡る。
「恭二、盛り上がってるね。私たちの企画のときは、危ないからって避けていたけど、やっぱりこの方が盛り上がるわ」

 続いて、そり引きリレーが行われた。女児がへルメットをかぶった、男児を引くことになっていた。この競技も標茶町は四位だった。標高生のボランティアが、かいがいしく動いている。
 雪合戦が終わり、最後のプログラムになった。雪中宝探しである。運動会会場の奥に、踏み荒らされていない新雪がある。そこには封筒に入れられた、数字のカードが埋められている。合図で児童たちは一斉に、雪のなかに飛びこむ。そして封筒を持って、得点ボードの前に集る。

「まだ封筒を開いてはいけません」
 高校生は、マイクを持って注意を与えた。
「これから一人ずつ、封筒を開いてもらいます。その得点がこのボードに出ます」
 標茶町は五位だった。一位の阿寒町とは、四十五点の差があった。封筒を開いた児童は、カードを係に渡す。次々に数字がコールされ、そのたびに電光得点板の数字が変わる。
「すごいです。標茶町が十点を引きました。阿寒町一点。釧路町二点」
 すべてのカードが、読み上がられた。
「では最終成績の発表です。第七位厚岸町百四十四点、第六位弟子屈町百五十三点……」

運動会を終えた児童と家族たちは、温泉郷のホテルに案内され、おにぎりと豚汁を提供された。藤野温泉ホテルは、初参加の厚岸町を担当した。恭二と詩織は、厚岸町長の宮村夫妻と同席した。
「楽しい冬のイベントに、参加させていただきありがとうございます。雪中大運動会は、標茶町で生まれたと聞きました。応援ハウスまで完備しているのに驚きました」
 宮村はおいしそうに、豚汁を飲んでからいった。そして続けた。
「瀬口町長には、たくさん教えてもらわなければならないことがあります。これをご縁に、ぜひよろしくご指導ください」
 詩織は立ち上がり、大きな声で伝えた。
「食事が終わったら、フロントでタオルを受け取って、温泉に入ってください」
 子どもたちから、歓声がわいた。

067cut:叱られに行こう

2018-12-14 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
067cut:叱られに行こう
――11scene:発想の転換
影野小枝 寺沢さんの運転する車です。漆原さんは、朝から同行をしています。現在午前9時45分です。
漆原 さて、代理店さんを終えたし、これからどうする?
寺沢 オフイスへ戻って、たまっている提出書類を作成します。
漆原 この時間に、面談できるところはないのか?
寺沢 だって、10時前ですよ。こんな時間に訪問したら、叱られますよ。
漆原 叱られたことがあるのか?
寺沢 いいえ、ありませんけど、先輩たちはみんなオフイスへ戻っていますし……。
漆原 よし、叱られに行こう。病院なら、ドクターに会えるはずだ。いちばん近場の病院はどこだ?
寺沢 丘の上病院です。
漆原 そこへ行こう。何が採用になっている?
寺沢 AとDです。
漆原 楽しいな、寺沢。未知の体験ができるのだぞ。
寺沢 はい。
影野小枝 寺沢さん、渋々うなずいたみたいです。

071:考えるヒント本を3冊

2018-12-14 | 銀塾・知だらけの学習塾
071:考えるヒント本を3冊
――第5講義:考える
小林秀雄『考えるヒント』(全4巻、文春文庫)には、考えるためのヒントが満載されています。最初に巻末解説の、江藤淳の応援演説を紹介させていただきます。

――ところで、この本の読者は、どのページを開いてみても、読むほどに、いつの間にかかってないようなかたちで、精神が躍動しはじめるのを感じておどろくにちがいない。それは、いわば、ダンスの名人といっしょに踊っているような、あるいは一流の指揮者に指揮されてオーケストラの演奏をしているような体験である。(解説より)

江藤淳が書いているように本書を読むと、ものごとを深く考えるとはこういうことなのだ、と気づかされます。小林秀雄の領域に到達するのは至難の業ですが、何かを見る、そこから思考を展開するという所作は参考にできます。

――考えるとは、合理的に考える事だ。どうしてそんな馬鹿げた事が言いたいかというと、現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら、能率的に考える事が、合理的に考える事だと思い違いしているように思われるからだ。当人は考えている積りだが、実は考える手間を省いている。そんな光景が到る処に見える。物を考えるとは、物を掴んだら離さぬという事だ。画家がモデルを掴んだら得心が行くまで離さぬというのと同じ事だ。(小林秀雄『考えるヒント1』「良心」P67-68)

外山滋比古『思考の整理学』(ちくま文庫、500+α紹介作)は、考えることと忘れることに言及した著作です。こちらは思考の飛躍が極端で落ち着きませんが、考える方法の入門書としてわかりやすいと思います。詳細については、「山本藤光の文庫で読む500+α」を参照してください。

もう1冊、丸谷才一『思考のレッスン』(文春文庫)もお薦めです。こちらも「山本藤光の文庫で読む500+α」で紹介しています。考えるレッスンの基本は読書と書かれています。本を読み、どう考えを深めるべきかが解説されていますので、ぜひ読んでみてください。


山本七平『「空気」の研究』新装版出た

2018-12-14 | のほほんのほんの本
山本七平『「空気」の研究』新装版出た
山本七平『「空気」の研究』(文春文庫)の新装版が出ました。活字が大きくなり読みやすくなっています。未読の方にはお勧めです。帯には「誰もが空気を読み忖度する現代を予見した」とあります。生涯に必ず読んでおくべき著作として、強く推奨いたします。といいながら、まだ書評は発信していません。イザヤ・ベンダサン名義で書いた『日本人とユダヤ人』(角川文庫)を天秤に乗せて、どちらを紹介すべきか迷っているのです。1著者1著作の紹介が、足かせになっています。
山本藤光2018.12.14

おめおめ

2018-12-14 | 知育タンスの引き出し
おめおめ
いまごろ「おめおめ」とあらわれおって。この「おめおめ」の由来が書いてありました。見出し語だけを見て、漢字を想起してみました。何も浮かんできません。

――昔は気後れしたり、ひるむことを「怖(お)め」といった。そこから、この言葉を二つ重ねて「おめおめし」という形容詞が生まれ、(後略)(『すぐに使える・言葉の雑学』PHP)

「よくよく考えると」「いよいよ始まる」など、同じ音をならべた副詞はたくさんありますね。
山本藤光2018.12.14

私の書庫模様

2018-12-14 | 妙に知(明日)の日記
私の書庫模様
分類しているジャンルがあります。「日本論」「日本語」「文章」「読書」「歴史」「哲学」は必ずその棚に収納します。そのほか「日本の古典文学」は、アイウエオ順に作品名で並べています。引き出す頻度が高いからです。他は棚番号を購入本リストにつけて、どこにあるかがわかるようにしています。大半は背表紙を向けず、積み上げてあるだけです。背表紙を向けて並んでいるのは、書評を発信した本が中心です。もちろん待機本(積ん読本)も背表紙を向けて並んでいます。そう考えると3万冊の書籍のほとんどは小口底を見せて、雑に積み上げられているのです。そうしなければ、収納棚が間に合いません。
山本藤光2018.12.14