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著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

志を立てる

2018-12-01 | 知育タンスの引き出し
志を立てる
「志」(こころざし)という漢字をみただけで、どん引きしてしまう人は多いかもしれません。慶弔などの贈物の表書きとは別に、一般的には「志を高くかかげる」などと用いられます。「志」を確認しておきたいと思います。

――人生における、その人としての到達目標。理想。(新明解国語辞典)

志と夢はちがいます。引用した辞典の「そのひととしての」の意味を理解してください。身の丈にあった、ちょっと高めの目標に挑む気持ちが「志」などです。

中国の賢人・孔子は『論語』のなかで、次のように説いています。

(以下引用)
子曰、吾十有五而志乎学、三十而立、四十而不惑、五十而知天命、六十而耳順、七十而従心所欲不踰炬

訓(よ)み:子曰わく、吾(われ)十有(ゆう)五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る。六十にして耳順(みみしたが)う、七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こえ)ず。(貝塚茂樹訳注『論語』中公文庫、第一巻・第二章四より)

『論語』では、志を立てるのが15歳とされています。そして一本立ちするのは、30歳ということです。

世阿弥『風姿花伝』では、年齢別の能のトレーニングのあり方を伝えています。7歳からはじまるトレーニングのあり方を読んで、自分はもう遅いと思われるかもしれません。
そんなことはありません。『風姿花伝』からは、歳を重ねるにつれ少しずつレベルを引き上げることの大切さを学ぶことができます。ちなみに私は、渡辺淳一『秘すれば花』(初出2001年サンマーク出版、講談社文庫)をお勧めしています。

自分自身を向上させるために、やらなければならないことは何? いまの自分を少しだけ変えることで、達成してみたいことは何? ぜひ志を立ててもらいたいと思います。

313:白タク

2018-12-01 | 小説「町おこしの賦」
313:白タク
――『町おこしの賦』第10部:生涯学習の町
 巡回バスでの一日の仕事を終え、加納雪子は満足感にひたっていた。買い物籠を抱えて、バスに走り寄る子どもたち。満面の笑みを浮かべて、迎え入れる老人たち。
 そんな加納雪子を、現場局長の猪熊勇太が執務室に呼んだ。
「どうだった? 巡回バスの一日は?」
「やりがいを感じました。みんな喜んでくれています」
「職員の巡回体験が一巡したら、バスはワンマンに戻すつもりだ」
「え? なぜですか?」
「あの仕事は一人でこなせる。体験を終えた職員には、自分の持ち場で町民のために、さらになにができるかを考えてもらう」
「加納にはそのための個人面談をしてもらいたい」
「巡回バスの乗車は、そのための体験だったんですね。局長、私にまで内緒にして、ずるいです」
「先入観を入れない。その方がよいアイデアがでるからね」
雪子は一週間に一度の巡回バスを楽しみにしていた、佐藤老婦人のことを思い出していた。そしてひょっこりと「白タク」という言葉が浮かんだ。老人を買い物や病院へ連れてこられる、運転手の存在がちらついたのである。お金をとらなければ、それは白タクとはいわない。
ボランティアとして運転できる人を募るのは、違法じゃない。雪子はそんなことを考えていた。

054cut:客の好みで調理が変わる

2018-12-01 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
054cut:客の好みで調理が変わる
――09scene:プロフェッショナル魂
影野小枝 2人は向かいのラーメン屋さんにいます。20分並んで、店内に入った漆原さんと熊谷さんは、さっきと同様に、みそラーメンを注文しました。
料理人(漆原に向かって)麺とスープは、お任せでいいですか?
熊谷 ぼくはいつも麺硬めですが、漆原さんはどうしますか?
漆原 (料理人に向かって)私はお任せでお願いします。(熊谷に向かって小声で)お客さんの好みで、麺やスープが変わるのか?
熊谷 そうです。前の店のときから、そういう方針でした。あの料理人のすごいところは、2回目からは何も質問しません。お客さんの好みが、すべてインプットされているようです.
漆原 腕に自信のある料理人は、おれの味を黙って食えってなりがちじゃないか。それだけでもすごいのに、お客の好みを覚えているのか?
熊谷 だって、ぼくには質問しなかったじゃないですか。
漆原 この店、何時までやっているの?
熊谷 たいてい、夜の10時ころには「完売」って札が出ています。スープか麺がなくなった時点で、閉店になります。 
影野小枝 漆原さんは、ラーメンのはしごをしました。そして閉店時間を確認しましたね。何を考えているのでしょうか?

058:起承転結を意識する

2018-12-01 | 銀塾・知だらけの学習塾
058:起承転結を意識する
――第4講義:書く
文章を書くときに、心がけたいことがいくつかあります。

まずは、何を書くのか。
書きたいことについて、4つほどの見出しが思い浮かばなければ、まとまった文章にはなりにくいものです。

次の文章は、塾長のブログに掲載したものです。
4つの見出しを意識して書いたものではありません。しかし、自然に「起承転結」で構成されています。引用してみます。

(引用はじめ)
タイトル「会社が合併する」

(起)
全社員が衛星テレビに注目していた。
合併の発表だろう、との予感はあった。
(承)
これまでにも、何度か合併のうわさが流れていた。
どこの会社を買収するのだろうか。
私たちはそんな話をしながら、
社長の発表を待った。

(転)
「ロシュグループと中外製薬との統合がきまりました。
日本での存続会社名は、中外製薬となります」
緊張した表情で、社長が告げた。
目の前が真っ白になった。
32年間勤めてきた会社の名前が消える。
合併よりも、そのことの方がショックだった。
社長は、何度も「チャンスだ」と繰り返した。
声が微妙に、震えていた。

(結)
何がチャンスだ、と思った。
そして、なにも聞こえなくなった。

文頭の「起承転結」は、本稿のために付加したものです。
起承転結は、文章を書く上での基本です。

(起)は、ひとつの事実や目的を最初に提出して、
書きおこす部分。
塾長の「会社が合併する」では、ショッキングなそのときの情景から書き起こしています。

(承)は、それを受けて話を広げる部分。
塾長の文章は、ショッキングなできごとの背景を描いています。

(転)は別の分野へと話を転じて、さらに発展させる部分。塾長の文章は、再び現実の場面に話を転じています。

(結)は、だからこうなのだという結論の部分。
塾長の文章は、ショッキングなできごとの結末を書いています。

一般的な文章での、起承転結の代表例を紹介したいと思います。塾長は高校時代に、この文章を覚えました。

(起)京都三条糸屋の娘
(承)姉は十七、妹は十五
(転)諸国大名弓矢で殺す
(結)糸屋の娘は目で殺す

北上次郎・編『14歳の本棚』(新潮文庫)がいい

2018-12-01 | のほほんのほんの本
北上次郎・編『14歳の本棚』(新潮文庫)がいい
北上次郎・編『14歳の本棚』(新潮文庫)は、部活学園編、初恋友情編、家族兄弟編の3部になっています。中学生になった孫にプレゼントしました。この3部作は、探し出してでも中学生に読ませたい高質の作品集です。部活学園編のガイドを引用させていただきます。甘酸っぱい薫りが、たちこめてくるでしょう。

――中学生時代、それは毎日がドキドキに満ちた人生で一度だけの時間。『14歳の本棚』全三巻は、「中学生小説」の傑作・名作を、誰もが認める読書界の目利きである編者が深い愛情をもって選んだアンソロジーです。最初は部活学園編。放課後の教室やグラウンドの片隅を舞台に、どの頁を開いても、時代を超えた少年少女のひたむきな姿があふれ、やがてあの頃のあなたを懐かしく呼びおこします(「BOOK」データベースより)。
山本藤光2018.12.01

てだまにとる

2018-12-01 | 知育タンスの引き出し
てだまにとる
「てだまにとる」は、自分の意のままにあやつることです。この語源をご存知ですか。

――「手玉」はお手玉のこと。(中略)小さな布の袋を、歌を歌いながら上に投げたり手で受け取ったりして遊ぶ、お手玉のように自由自在にもてあそぶ意から。(日本語語源辞典)

「てだまにとる」が小豆の入ったお手玉からきているとは、思いもよりませんでした。
山本藤光2018.12.01