21世紀航海図;歴史は何も教えてくれない。ただ学ばない者を罰するだけ。

個人の時代だからこそ、個人を活かす「組織」が栄え、個人を伸ばす「組織」が潤う。人を活かす「組織」の時代。

自動車産業を立て直すために、

2009年01月10日 09時59分30秒 | Weblog
 自動車産業を立て直すために必要なのは需要の喚起だ。そして、自動車の年間生産台数・耐久年数が急激に伸びている以上、需要をも急激に伸ばす必要がある。現状の自動車市場は、企業間競争だけでなく新車・中古車間の競争もあり、産業全体が過剰競争に陥っている。

 自動車需要を伸ばすと言っても、すでに1人1台所有しているアメリカや、公共交通機関が発達している日本でこれ以上の需要の伸びは期待できない。先進国では需要は既に飽和している。自動車の耐久年数が伸びている以上は、新車販売台数は減り続けるだろう。自動車部品メーカーは、中古車向けの交換部品の生産・販売網の確立に力を入れていくべきだ。

 自動車産業全体としては、発展途上国で需要の喚起を図っていくしかない。しかし、道路等・インフラが整備されていない発展途上国では、先進国での需要の落ち込みをカバーできるほどの急激な需要の拡大を期待できない。100万人が100万台の車で通勤できる日本の都市とは違い、道路が整備されていないインドの都市に100万台の車が溢れかえれば、渋滞が発生し交通は麻痺する。「潜在需要」は旺盛でも、物理的な要因で、発展途上国での自動車需要の伸びは抑えられているのである。

 この状況を打開し、発展途上国で自動車需要を喚起するために必要なのは道路網の整備である。しかも、現地政府にインフラ整備計画の運営能力が欠如しているのなら、民間が主体となって道路建設を進めていくべきである。

 日本には「通行料」を徴収するだけで道路の建設費を捻出し、利益を出している日本高速道路株式会社がある(笑) 東京の首都高速道路は毎年10兆円近い現金を生み出している。
 この事業モデルを応用し、北京・ソウル・台北・バンコク・ムンバイに有料の首都高速道路を整備するべきである。通行料金を高く設定することにより、利用者を裕福者層に限定して、総利用者数を減らす。これで渋滞の発生を抑えることができ、「空いている」からこそ、忙しいビジネスマンにしてみれば、高い通行料を支払ってでも利用したい道路網になるのである。鉄道網が整備されていない地域では、環状型の有料道路を走る高速バスが最適の公共交通手段になるかもしれない。
 一方、高速道路の利用者数が増え、一般道を走る自動車の数が10%でも削減されれば、一般道でも渋滞の緩和が期待できる。
 また、道路建設事業を通じて数10万人規模の新規雇用が生み出される。経済が活性化され、最低所得水準を押し上げられ、自動車を買うことができる人の絶対総数の増加が期待できる。

 有料の首都高速道路を整備することで、スピードを出したい裕福者層には大型車が売れ、日常生活に一般道を使う市民には小型車が売れるようになるのである。渋滞で自動車交通がマヒしているような国では自動車は売れない。

 「環状首都高速道路網整備」となると1兆円から5,6兆円規模の初期投資が必要になってくるが、トヨタ自動車の場合、現金預貯金だけで2兆円以上あり、日本の自動車産業全体では余剰資金が10兆円近くあると考えられる。受動的に資金を取り崩しながらジリ貧に陥っていくよりも、積極的に資金を投資に回し新事業に打って出る方が希望がある。
 特に北京の首都高速道路の整備は、今がチャンスである。土地バブルが崩壊した直後であり、比較的安く用地を買収できる。その上に長期的にみれば、地価の上昇から潜在的資産価値上昇が期待できる。さらに、物価の上昇があれば、通行利用料の引き上げを通じて、短期で初期投資資金を回収できる可能性もある。しかも、地震が少ない地理的関係上、一度建設した道路基盤は永遠に使い続け、利益を生み出し続ける。3兆円かけて建設した高速道路でも、資産価値の上昇と営業キャッシュフローで、10年程度で負債を完済できる。
 日本の首都高速道路株式会社のキャッシュ・フローを見る限り、有料高速道路の運営は儲かる。専門子会社を設立し、将来の現金収入を担保に資金を集めることもできる。もちろん、現地政府と共同で子会社を設立することも可能だ。

2007年には年間総新車販売台数は4000万台に達した。期待平均耐久年数は20年だから、市場には8億台の自動車が溢れかえっていることになる。この膨大な数の自動車を吸収できるだけの道路網は世界に存在しない。そして、この新車過剰生産の反動として、2008年の自動車市場は急収縮したのである。自動車産業が利益を出せるようになるには、2通りしか選択肢が無い。発展途上国でインフラの整備をし需要を喚起するか、GM/トヨタ自動車を倒産・清算させ、過剰競争を解消するかだ。

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