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日生オペラ「マクベス」

2023-11-12 11:17:17 | オペラ
11月11日(土)の昼に日生劇場で、ベルディのオペラ「マクベス」を見る。ダブルキャスト2回公演の1日目。ほぼ満席で、年齢層は中高年中心。

シェイクスピアの芝居を、ヴェルディがオペラ化したもので、全編にわたりヴェルディ節満載で楽しめる。演出は粟國淳で、オーソドックスでわかりやすい演出だが、舞台が暗すぎてよく見えないという問題がある。セットにお金がかけられないということもあるが、黒の暗幕の前で黒と灰色の人物たちが演じる。夜の場面が多いこともあり、照明は暗めというだけでなく、上からの照明を使わずに横からの照明が中心。舞台は暗くても良いのだが、主演級の歌手にはきちんとスポット照明を当てないと、一体だれが歌っているのかわからないことがある。

セットは傾斜舞台のプラットフォームがあり、流木のようなオブジェが上がったり下がったりする。セリをうまく使った演出で、演出そのものは良いと思うのだが、照明が暗すぎるのが欠点だろう。衣装はアレッサンドロ・チャンマルーギで、全体として第一次世界大戦当時の衣装のイメージ。19世紀的な服装から20世紀的な服装へ変わる当時のノスタルジックなもの。登場する兵士たちの一部には、第一次世界大戦当時のイギリス軍が使った特徴的なヘルメットをかぶせていた。

歌手では、マクベス役を歌ったバリトンの今井俊輔が良かった。マクベス夫人役の田崎尚美は、前半は喉が暖まっていなかったのか不調で金切声のようになっていたが、後半は調子を取り戻して、本来の美しい声で歌った。歌手もなかなか大変だなあと思った。前半はバリトンの今井とバスの伊藤貴之の二重奏など聞かせどころもあるが、テノールが出てこない。後半になって、やっとテノールの宮里直樹が登場して、美しい歌声を聴かせた。

オーケストラは読響で、指揮は沼尻竜典。よく乗った演奏で、後半は大いに盛り上がった。舞台が暗いことを除けば満足のいく公演で、ヴェルディを堪能した。こうした芝居は、心情吐露のアリアが多いオペラの方が、オリジナルの台詞劇よりも、主人公の感情変化がよく分かって面白いという気がした。

少し時間があったので、外人観光客で込み合う町で銀ブラを楽しみ、帰りがけにフレンチのビストロで食事。ホタテのテリーヌ、牛ほほ肉の赤ワイン煮込み、カスタードプディングなど、飲み物は南仏のグルナッシュ。

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