『イップ・マン 序章』 ~一番なりたい人物

2011-03-01 23:52:25 | 映画&ドラマ



 あれほど映画を見ているのに、毎月1日の「映画の日」に映画館に行ったことが殆どないニワトリさんですが、今日は『イップ・マン 序章』を新宿武蔵野館で見てきました。1000円で見られるなら夜勤明けも何のその!というわけです。この映画なら眠りに落ちる心配はないし・・・。

 映画館(1)ではアカデミー作品賞を受賞した『英国王のスピーチ』を、映画館(2)では『イップマン 序章』を、映画館(3)では続編になる『イップマン 葉問』を上映中でした。映画館(2)は客席が少ないので、今日が映画の日でなくても満席だったと思いますが、『英国王のスピーチ』同様「立ち見」がでるほど盛況でした。
 意外だったのは客層。カンフーおたくか格闘技命みたいな人々が集まるのかと思いきや、老若男女わけ隔てなくほぼ均等に客席が埋まっていきました。ちなみに、ニワトリさんの左隣りはアニメが好きそうな眼鏡のお嬢さん(大学生かな?)で、右隣りは長髪の若者でした。

 先に公開された続編がヒットしたため、『序章』が晴れて公開されることになったのですが、映画が始まると『葉問』の文字がスクリーンに映し出されたので、おっちょこちょいのニワトリさんは、一瞬入る部屋を間違えてしまったのかと思ってしまいました。勘違いしないように説明すると、『イップ・マン 序章』の原題が『葉問(イップ・マン)』で、続編『イップ・マン 葉問』の原題はごく普通に『葉問2』なのでした。
 そんなわけで、これから『イップ・マン』を見ようと考えている人は、時系列にしたがって『イップ・マン 序章』から見るべきでしょうが、自分と同じように続編の『イップ・マン 葉問』から見ても何の支障もありません。
 というのも、2→1と遡って見ていくと、『葉問』のあのシーンで登場した人物(伊武雅刀似のあの人)は『序章』の彼だったことがわかるし、『葉問』では(中山美穂&伊東美咲似の奥さん)と慎ましく仲睦まじい家庭を築いていたけれど、最初からそうだったのではなく、紆余曲折を経てあのような形になっていったことがおぼろげにわかってきます。怖いもの知らずの葉問がかなりの恐妻家だった・・・なんていうのは、あとでわかったことだから微笑ましく思えるのかもしれません。
 また、あんなに貧乏なのに悠然と構えていられたのは、戦争という過酷な時代を経験していたからなのだと納得する一方で、葉問がお金に無頓着なのは、働かずに生活できるほどお金持だったから、逆に金銭に対する執着心を持たなかったのだろう・・・など色々なことがわかってきて、それはそれで面白いと思ったからです。

 それにしても、ドニー・イェンの格好良さは半端ではなく、彼の体技はダンスの神様フレッド・アステアのように「洗練」されていて「優雅」で「完璧」です。『イップ・マン 葉問』でも述べましたが、お茶を飲んでいるときとか、静かに座っているときとか、戦っていないときの「静」のシーンの立ち振る舞いが実に素晴らしい! 拳を交えたときの比類のない強さと美しさは言うまでもありません。武器の扱いも完璧で、心技体共にブルース・リーを超えたと言っていいでしょう。
 日本の描き方も別に問題なく、悪役ならば国籍がどこであろうとあれぐらいのことはやるでしょう。「サトー」のようなニンゲンはやられて当然だけれど、詠春拳の練習具(木人椿)に見立てられてボコボコにされてしまった「三浦閣下」(池内博之)はちと気の毒だった? 池内さん、頑張ってましたよ!

 アクションシーンはどれも素晴らしいのですが、弟子を決して取らなかった彼が、綿花工場を窃盗団から守るために老若男女問わず護身用に詠春拳を教えることを決意し、工場内で皆一緒に稽古をする場面をイチ推しします。稽古する葉問や皆の瞳の輝きと、全身にみなぎる力が実に印象的でした。何のために武術があるのか、誰のための武術なのか、その答えが、このシーンに集約されているような気がしたのです。


子供っぽいことを言うと、イップ・マンは今一番なりたいHEROです!