ビニール傘の不幸な一生

2009-09-15 23:59:10 | 独り言&拾いもの


 先週の土曜日、てるてる坊主100個より強力な雨を避ける性質を遺憾なく発揮して、静かで充実した午後のひとときを過ごすことができました。仕事を終え家路につくなり、ポツンポツンと雨が降り出してきました。
(3万歩に乗せるため、家まで遠回りして歩かなければ、本降りになる前に戻っていた)
 明日の仕事の絡みもあって、【ブックオフ】に寄って店を出たときのこと、「あれ、傘がない・・・」

 入るときはまだ大したことがなかったのですが、出るときには本降りの雨になっていました。どこかのバカ野郎が、これ幸いと、傘立てから盗んでいったのでしょう。憮然として、店員に「傘がなくなっているんだけど・・・」と声をかけました。
 店員は「そう言われても・・・」と言ったきり、カウンターから動こうとしません。
「そう言われても、何なんだよ。盗られた奴が悪いとでも言いたいのか? 代傘を持ってこいよ。忘れていった傘とかあるだろうが!」と、怒鳴りつけたいところでしたが、いくら腹を立てているからといって、盗人ではない彼に当たり散らしても仕方ありません。でも、その場に立ち続けました。
 すると店員は、明らかにムッとした表情で無言のままレジカウンターを離れました。傘を捜しに行ったのでしょうか? しばらくして、「お貸しできる傘はありません」とだけ言い捨てて、店員はレジカウンターに戻りました。こちらとしては、犯人に代ってひと言「申し訳ございませんでした」と言ってくれれば気が収まったのに、いよいよ腹が立ってきました。
 古本屋は好きでも、このチェーン店は昔からどうも虫が好かず、ロータリー内にある「みちくさ」と違って、これまで一度しか寄ったことがなかったのですが、この一件でまたまた印象が悪くなりました。とっとと店を出て、斜め向かいの「西友」に寄り、駅前の東西書店で月刊『アーマーモデリング』と竹田津実さんの『子ぎつねヘレンがのこしたもの』を買いました。スーパーでも書店でも、ビニール傘が売られていましたが、ニワトリさんが見向きもしなかったのは言うまでもありません。

 何でこんなことを書いたのかというと、昨日の東京新聞に「風に舞うビニール傘」という特集記事が掲載されていたからです。それによると、「1本300円のビニール傘とは、雨が降っている間だけ使われ、雨が降りやんだ途端にモノとしての価値がゼロになってしまうもの」らしいのです。殆どの人が外出時に傘を持ち歩かず、雨が降ったら300円出して買えばいいと考えていて、それだけのためにわざわざ買うのは嫌だから「傘立てから持ってきてしまえばいい」と考える輩も現れるのでしょう。
 台風が過ぎ去った8月31日の夜、渋谷の駅前には捨てられたビニール傘の山があちこちにでき、目の前で傘を投げ捨てた男性に話しかけてみたら、「もう雨やんだだろ」という答えが返ってきたそうです。私の場合、例えビニール傘でも捨てるという行為ができないのですが、傘の置き忘れが多々あり、お気に入りの傘を電車の中に忘れてきてからは、ビニール傘以外は持ち歩かなくなってしまいました(今の職場になってからは、いつも折りたたみ傘を持っている)。
 取材を続けているうちに、日本は傘に関しても世界一の消費国だったことが判明します。年間販売本数は人口と同じ1億3000万本! そのうち9割がビニール傘だそうです。名古屋工業大学のアンケート調査では、6人に一人がビニール傘の使用期間を「一日だけ」と答えていて、実に1900万本が買ったその日に捨てられている計算になります。ビニール傘は売り物にならないので、ホームレスの人も拾わないとか・・・。
 
 ゴミ収集された傘の骨は金属としてリサイクルされ、ポリエステル部分などは燃やされています。「リサイクルされるなら便利な使い捨てでもいいじゃないか」という意見に対して、記事では「1日で捨てられている傘1900万本を処理するのに、年間1億4千万円の税金が使われている」ことを指摘しています。
 ビニール傘は、安いものだと100円で売られているそうですが、この「安さ」というやつも使い捨てにひと役買っているようです。安かろう悪かろうでも儲かればいいという業者と、一回だけ雨をしのげればいいという消費者がいるせいで、一回使えば壊れてしまうような激安の傘がどんどん作られ、そして捨てられている・・・この環境悪循環の輪から逃れるには、ありきたりだけど、意識を変えるしかないでしょう。
 
 そもそも「雨」というだけで、マイナスのイメージしかなく、そこらへんから変えていかなければなりません。ずっと昔に書きましたが、雨に濡れた風景は実に美しく、雨音を聴いたり雨だれを眺めるとか、そんな楽しみ方もあるし、どこへ行っても普段より空いている、といったメリットもあります。レインコートや長靴や傘で雰囲気を変えてみるのもいいでしょう。片岡義男さんも、雨と番傘の魅力についてあるコラムで書いていました(切り取った記事を机の上に置いたら、くるみさんに引き裂かれてしまいました)。番傘、私も好きです。雨に打たれたときの音が良くて、色が良くて、油紙の香りがまた良くてね~♪ 
 大量生産大量消費の悪循環(それが経済成長ならしなくていい)を断ち切るのは、やはりモノに対する偏愛(愛着)ではないでしょうか。ビニール傘が「マイ傘」になり得るかは、今後の課題だけれど(やはり丈夫な傘が欲しい)、記事の最後に書いてあったように「愛着がエコに結び付く仕組み」を社会全体でつくる必要があると思います。リサイクル=エコではなくて。