『グッド・バッド・ウィアード』  ~疾走する爽快感!

2009-09-27 23:59:30 | 映画&ドラマ


撮影中にくるみさんがやってきて、慌ててシャッターを切ったら見事ブレました・・・


 昨日の土曜日、Angela さんもお勧めの『グッド・バッド・ウィアード』を観てきました。入場料が割安になる夜間に府中で鑑賞するつもりだったのですが、いつの間にか終わっていて、電車賃も合わせるとかなりの出費になってしまいました。せめて、並ばずに良い席を取ろうと、新宿バルト9のオンライン・チケットを利用したのですが、予約番号を控えて来なかったので発券できず、チケットカウンターのお姉ちゃんに調べてもらっている間に上映時間を過ぎてしまい、イライライラ・・・番号をもらい急いで発券、何とか本編上映前に滑りこめました。
 映画が終わると、ニワトリさんはエレベーターに向かわず、階段を9階から1階まで一気に駆け下り、眩しい陽光の下に飛び出すと、肩で風切って歩き始めました。テーマ曲の「悲しき願い」(サンタ・エスメラルダのフラメンコ風アレンジで)が大音量で頭の中を駆け巡り、足取りも非常に軽快です。
 映画の魔法が効いている時間は、人車一体の境地というか映画の主人公と一体化しているため、「指一本で列車を止めてみせる」ぐらいの大きな気持ちになっているのですが、魔法が切れた今は、チョン・ウソン(グッド)やイ・ビョンホン(バッド)というより、どちらかというとソン・ガンホ(ウィアード)の体型に近い中年親父がよくもまあ~、穴があったら入りたい気持ち・・・ソン・ガンホも非常に格好良かったので、ウィアード(変な奴)は自分のことだったのだと悟った次第。

 アジア映画だと、ジョン・ウ―作品でチョウ・ユンファが見せてくれた両手撃ち(使ったのはベレッタM93)以来の格好良さ? 『GOOD,BAD,WEIRD』は(短い時間ではありましたが)私を「HERO」に成り切らせてくれました。その昔、ウルトラマンやセブン、仮面ライダーやデビルマンに変身したように・・・。
 『グッド・バッド・ウィアード』は、題名とクライマックスシーンをマカロニウエスタンから拝借していますが、映画が活動写真と呼ばれていた頃と同じ躍動感と疾走感に満ちていました。
 先ほどジョン・ウーの名前が出たので彼をダシにさせてもらうと、「白い鳩がスローモーションで飛び立つ」のではなくて、眼光鋭い鷹が空を急降下して線路に落ちていた腐肉をかすめ取ったかと思うと、疾走する満鉄の大型機関車に瞬時に切り換わるオープン二ング・ショットに、この映画の全てが集約されています。そこから先は、生身の人間によるアクション、アクション、アクション! ジェットコースター映画やCGだらけのアクション映画とはまるで違う、疾走する喜びに満ちた「幸福な映画」です。「走れ、映画!」と叫びたくなる作品は本当に久しぶりで、蒸気機関車も、サイドカーも、馬も人間も実に嬉しそうな表情で走っていました。敵味方入り乱れての全力疾走は、ラストの対決以上に映画的なシーンであり、『駅馬車』のワンシーンまで思い出しました。「いや~、映画って本当にいいですね~」(ねっ、水野さん!)

 それにしても、どうして原題の「THE UGLY」(卑劣な奴)が、「WEIRD」(変な奴)に変わったのだろうと、かすかに思ったのですが、映画を観てその理由がわかりました。ソン・ガンホが演じたユン・テグは雑草のようにたくましいコソ泥で、コメディロールを演じていることもあって、誰もが好感を抱いた筈。『続・夕陽のガンマン』では、イーライ・ウォラックが卑劣漢だけど憎めない人物をうまく演じていて、彼が劇中口にしたように、本当の卑劣漢は「善い奴」を演じたクリント・イーストウッドではないかと思わせるあたりが非常に面白かったのですが、ソン・ガンホが同じ役回りを演じるだけでは勿体ない、と考えたのかもしれません。その結果、この人物は原題の「UGLY」ではなく「WEIRD」になりました。それもかなり怪物的な・・・。
 同じことは、「BAD」を演じたイ・ビョンホンにも当てはまります。『続・夕陽のガンマン』では、凄腕の上に頭が切れ、目的を達成するためには手段を選ばない冷酷非情な人物をリー・ヴァン・クリーフが好演していましたが、『グッド・バッド・ウィアード』になると、複雑な内面を持つ残虐な殺し屋に変更されました。この複雑な内面が時折表面ににじみ出てくるキャラクターを、イ・ビョンホンは上手く演じていましたが、よくよく考えると「悪役といっても、トラウマをかかえた自己顕示欲の強い人物が後先を考えずに子供のようにめちゃくちゃ暴れているだけだったの?」となってしまったのが残念です。「悪(ワル)」の魅力は、大人であることに尽きると思うのですが・・・。
 二枚目スターが悪役を演じる場合は、もう一つの『グッド・バッド・ウィアード』ともいってもよい『レッド・サン』のアラン・ドロンを参考にするといいと思います(『レッド・サン』では、「GOOD」が三船敏郎で、「UGLY」がチャールズ・ブロンソンでした)。

 『続・夕陽のガンマン』には南北戦争という横線が張られていて、物語を長く(完全版は178分!)複雑にしてしまったのですが、20万ドルをせしめるのは「善い奴(イーストウッド)」なのか「悪い奴(クリーフ)なのか「卑劣漢(ウォラック)」なのか、核心をその一点に絞っていました。『グッド・バッド・ウィアード』には、日本の植民地という時代背景が確かにあるものの、そのこと自体には深い意味がなく、その代わり、三人の行動原理が「金」だけではないところで「深み」を持たせたかったのでしょうが、核心がぼやけてしまったきらいがあります。

 ところが、脚本のミスを全く問題にしないほど三人が格好良く、個人的には色々あるでしょうが、私は「GOOD」を演じたチョン・ウソンに痺れました。187cmの長身には、拳銃よりもライフルやショットガンといった長物が良く似合い、馬を走らせながらウィンチェスターを片手でくるっと回転させて撃ちまくる姿の美しさは、ジョン・ウェインもクリント・イーストウッドもスティーヴ・マックイーンもジュリアーノ・ジェンマも舌を巻くほど!
 三人が持つ銃も凝っていて、チョン・ウソンが西部を制したウィンチェスターのレバー給弾式ライフルに長銃身の水平二連ショットガン、イ・ビョンホンが珍しい中折れ式リボルバーのウェブリ―&スコットMK5、ソン・ガンホが当時最新鋭のワルサ―P38(ルパン3世も使ってますね)を二挺、という具合に個性的。強いて言うなら、ソン・ガンホにはこの時代の馬賊が愛用したモーゼルミリタリーを両手に持たせて、怒涛のフルオート射撃でバッタバッタと敵をなぎ倒しても面白かったと思います。チョン・ウソンにはP38より一世代古いけれど優雅さでは比類のないルガ―P08の長銃身6インチ・ネイビーモデルをショルダーホルスターに吊るして欲しかったなあ~。これって、かのフィリップ・マーロウも一時期使っていた拳銃です(4インチのルガ―は、不二子ちゃんご愛用)。

 最後は銃器オタクになってしまいましたが、(CGなしの)アクション映画って、本当にカッコイイですね~。あっ、また「悲しき願い」が流れてきました。それでは、ハイヤ~♪(と馬にまたがったつもり)

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