日曜日に第62回新潟定期公演会を開催した東京交響楽団が小学生向けのプログラムを6回程開催して、昨日帰京したようだ。お疲れ様と一言声を掛けたい。
98年のりゅーとぴあのオープンとともに東京交響楽団は新潟市と準フランチャイズオーケストラ契約を締結、以来、年5回のペースで定期公演会が開催されていたが、07年からは年6回にペースが引き上げられ、今では新潟のクラシック・ファンの間で東響新潟定期公演会は完全に定着していると言えるだろう。
東京交響楽団が新潟市と準フランチャイズ契約を結んだ経緯については、紆余曲折があったようだが、結果的に見て、この契約はオーケストラにとっても新潟のクラシック・ファンにとっても幸福な結果をもたらしたと言えるのではないだろうか?
ファンにとっては東京交響楽団という質の高いオーケストラの定期公演を年6回安定的に聴くことができるのは実にありがたいことだ。しかも、定期公演ということでプログラムもかなり意欲的なものが多い。(というか最近は意欲的過ぎか?)地方でのオーケストラ・コンサートと言えば、ともすると名曲コンサート状態になりがちなのだが、東響新潟定期のおかげで、いろいろな曲を生で聴けるのは大きなメリットである。あと、子供たちへの普及活動も長い目でみれば成果をあげているだろう。
「まがいなりにも政令指定都市になったのだから、地元の名を冠したプロ・オーケストラがなくては…」と言うクラシック・ファンもいることだろう。実際、新潟市よりも規模の小さい都市ながらプロ・オーケストラを擁している都市もないわけではない。(金沢市のオーケストラ・アンサンブル・金沢、高崎市の群馬交響楽団、山形市の山形交響楽団など)
しかし、漏れ伝え聞くところによると、自治体の財政状況が悪化する中、補助金の削減などが続き、運営の困難さは増すばかりのようだ。つい最近も大阪センチュリー交響楽団の財政危機が報道されていたが、ヨーロッパならともかく、日本では自前のオーケストラを持って運営していくというのは生半可なことではないということだろう。個人的にはそれなりの水準のフル・オーケストラを維持していくのは最低でも150万人規模の都市でないと無理のような気がする。
そういう面で、現在の準フランチャイズ制はイージーと言えばイージーなのかもしれないが、財政的な負担を抑えつつ、本格的なオーケストラを無理なく市民に提供するという点で極めて秀逸なアイディアで、現実的な選択だったと個人的には評価したい。
オーケストラ側としても経営の安定化という点でこの制度はそれなりのメリットを受けているのだろうが、受けているメリットという面では新潟のクラシック・ファンの方が遥かに大きいような気がする。
実際の話、東京交響楽団のメンバーにとっては新潟公演はかなり大変だと思う。土曜日に東京又は川崎公演を行ったのに続き、日曜日の朝、新幹線に乗って新潟に移動、ゲネプロして本番、終演後すぐさま新幹線に飛び乗って帰京というパターンはかなりハード・スケジュールだ。(それでなくても東京交響楽団は年間180回程の演奏会をこなす日本有数の多忙なオーケストラだし…)
それでも、新潟のファンはそのような東京交響楽団のがんばりに良く答えているのではないだろうか?客席は7~8割方埋まっているし、プログラム、指揮者(飯森さんあたり)によってはソールド・アウトすることもある。それに観客の出迎えも(あきらかに川崎・サントリー定期よりも)温かい。
マンネリズムに陥ることもあるだろうが、新潟の1クラシック・ファンとして、東京交響楽団と新潟市の幸福な関係が末長く続くことを切に祈りたい。