アーバンライフの愉しみ

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逃避行~吉村昭著「彰義隊」

2015年10月14日 | 読書三昧

吉村昭フォーリックがまだ続いている。

今回読んだのは、幕末、上野で官軍と対峙した輪王寺宮(北白川宮能久親王)の逃避行を詳述した吉村氏の「彰義隊」。2004年10月~05年8月朝日新聞連載。395頁の大作。



物語~皇族ながら上野寛永寺に入り日光輪王寺門跡を継承した輪王寺宮は、徳川慶喜の(朝廷への)恭順と嘆願のため京へ向かうが、駿府城で会った官軍の東征大総督有栖川宮熾仁親王に叱責され江戸に引き返す。彰義隊は、慶喜と輪王寺宮を警護するとして2,000人を越える勢力に膨張するも、官軍に敗れ敗走する・・・。

上野を脱出した輪王寺宮は北上して会津から仙台に入り、奥州越列藩同盟の盟主となるも同盟の瓦解と会津藩の敗北に伴い、朝廷側に帰順、謹慎する。

その後京都で蟄居し、明治2年10月謹慎を解かれ伏見宮に復帰、ドイツ留学を経て陸軍軍人となった。日清戦争によって日本に割譲された台湾征討近衛師団長として出征するも、全土平定直前に病死する。

激動の幕末にあって、皇族ながら朝廷に歯向かう破目になった輪王寺宮の数奇の運命には同情を禁じ得ない。広くは知られていないこうした事実をを克明に綴った点で意義あるものと思った。

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