散歩中にふと見上げた道路標識。
この歩道は、歩行者と自転車が通行できる。
この標識の絵、
上の、大人が子供の手を引いて歩く絵をご覧になって欲しい。
この絵柄は昔から見ていたものだが、
こんな都市伝説がある事をご存じだろうか。
新しい道路標識を制作するにあたって、
標識の図柄のコンペが行われたそうだ。
お題目は、歩道の標識。
とあるデザイナーがこの仕事を請け負ったのだが、
中々良いアイデアが浮かばなかった。
そういう時はどうするのかというと、
気分転換も兼ねて、カメラを片手に街へ出るそうな。
公園や道端、様々な風景をカメラに収めた。
現像した写真を眺めながら、イメージを膨らませる日々が続いた。
頭が煮詰まってきたある日、
ふと、一枚の写真が目に止まった。
男性が女の子の手を引いて歩く姿。
「これだ!」
と、彼はデスクに向かい始める。
得体の知れない違和感が頭を過ったが、
直前にまで迫った仕事の締め切りがそれを打ち消した。
幸いな事に仕事は締め切りに間に合ったばかりか、
正式に標識の絵柄として採用された。
ホッと胸を撫で下ろした彼だが、仕事に追われる身である。
暫らく此の事は忘れていた。
1ヵ月後。
女児誘拐殺人犯が逮捕されたニュースが。
先月、連れ去られた女の子が遺体となって発見されたのだ。
ああ、そんなニュースあったな、と彼は思い出す。
仕事に没頭すると、あまり世間の事は気に掛けなくなるのだ。
どうやら事件直後から警察にマークされていた男が逮捕されたらしい。
決め手になったのは、防犯カメラに偶然映った、犯人と女の子。
誘拐直後と思われるその映像が、ニュースで流された。
・・・・・・・・・・・!
彼は硬直した。
そう、あの写真だ。
デスクの上を掻き回し、あの写真を探した。
あった。
ああ、全く同じなのだ!
あの時感じた、違和感。
そう、この二人、親子というには何かがおかしい。
女の子が軽装なのに対して、男は帽子を被り身を隠すような上着を着ている。
二人で出掛けるには、何かちぐはぐだ。
しかも、その風貌から、
親子とは言い難い年齢差がないだろうか?
あの時、この違和感をもっと早く気付いていたら。
あの時、ニュースにもっと目を向けていたら。
あの女の子は・・・・・・・・・・。
もう一度良くこの図柄を見て欲しい。
心なしか、女の子が嫌がっている様に見えないか・・・・・・?
※このお話はフィクションです。