【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「バッタ君町に行く」:西浅草三丁目バス停付近の会話

2010-01-13 | ★草63系統(池袋駅~浅草雷門)

ここが、佃煮で有名な鮒金よ。
バッタの佃煮もあるかな。
バッタの佃煮?イナゴの佃煮の間違いじゃないの?
同じようなもんだろ。
そんなこと、言ったらバッタにもイナゴにも失礼よ。そういうのを人間の横暴って言うんじゃないの?
人間の横暴にバッタが立ち向かうアメリカ映画といえば、「バッタ君町に行く」だ。
1941年。なんと太平洋戦争が始まったときに製作されたアニメーション。
そのわりには、アニメの技術もテーマも古くない。
土の上に暮らす虫の視点で描かれているんだけど、その平和な土地を人間たちが開発しようとして、虫たちが追いだされそうになる話は、日本で言えば「平成狸合戦ぽんぽこ」と同じような構図だし、最近の「アバター」だってそういう話だって言えないこともない。
わがままな人間に蹂躙される平和な楽園っていうことだな。
時代を超えた、普遍的なテーマなのよ。
それを表現するアニメの動きが、また、異様になめらかなんで、虫たちの話なのに妙になまめかしい。
ディズニーでいえば、「白雪姫」と同じような印象よね。動きに省略がないから、実写以上に丁寧に動いているように見える。
といっても、これはディズニー映画じゃなくて、「ポパイ」や「ベティ・ブープ」などのフライシャー兄弟の映画。
だからかあ。感覚がどこかしらアートっぽいというか、都会的。
見どころは、なんといっても、建設中のビルに虫たちが上っていくシーンだろう。
ビルをつくる機械や組み上げられていく鉄骨のめまぐるしい動きをかいくぐって、虫たちの列が、上へ、上へと進んでいく。そのリズム、色彩、構図がひっくり返るほどモダンなのよね。
戦争の始まった1941年にこんな映画をつくっているんだから、日本はアメリカに負けるわけだ。
でも、当時はアメリカでもあまりヒットしなかったそうよ。
ヒットしてれば、続編も出来てかもしれないのにな。
続編?
「イナゴ君町に行く」とかね。
そして、佃煮になっちゃうとか?
そう、もぐもぐ・・・って言わせるな。







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「(500)日のサマー」:千束バス停付近の会話

2010-01-09 | ★草63系統(池袋駅~浅草雷門)

山形水ラーメン?
おお、こんなところにあったのか、山形水ラーメン。
知ってるの?
俺たちラーメン通の間では、伝説のラーメンだ。こんなところで出会うとは、まさに運命。
単なる偶然だと思うけど。
運命か、偶然か。それは議論を呼ぶところだな。マーク・ウェブ監督のアメリカ映画「(500日)のサマー」でも取り上げられている大問題だ。
この映画、恋愛映画かと思ったら、冒頭から、これは恋愛映画ではない、って宣言しちゃってるんだもんね。
そう、「運命と偶然に関する一考察」というサブタイトルでもつけたいような映画だった。
でも、内容は、サマーという名前の女の子と彼女に恋した男の子の軽妙な物語。どう見ても、いわゆる恋愛映画よ。
ああ、499日目まではな。
そうなのよね。500日目に至って、ああ、これはたしかにハリウッド流の恋愛観映画じゃなかった、って初めてわかる。
むしろ、ヨーロッパ映画のような恋愛観だ。
アンハッピーエンドのようなハッピーエンド。
「(500)日のサマー」というタイトルに隠された本当の意味もまた初めてわかって、思わずニクイね、と思ってしまう。
499日は、500日目までの長い長い前振りだったんだから、驚く。
でも、その499日間も、ミュージカル風のシーンやら、アニメ風のシーンやら、画面の二分割やらの趣向が凝らされていて、しかもそれぞれにみな、分をわきまえているから、観ていてうっとうしくもならない。
出演者も、流行のことばでいえば、いかにも草食系の男の子には好感が持てるし、サマーのほうもエイミー・アダムス系のごく普通の女の子なんだけど、男の子が恋に落ちても仕方がないなと思うチャーミングな魅力を持っている。
それでいて、品が落ちない。節度を知っている。
その二人が映画館で観る映画は、名作「卒業」のラストシーン。
若きダスティン・ホフマンがキャサリン・ロスを結婚式場から奪い取る有名なシーンじゃなくて、そのあと、二人でバスに飛び乗ってからのシーン。
とうとう好き同士が結ばれて喜びにあふれていていいはずなのに、二人ともなにか戸惑ったようなうつろな表情になって終わる奇妙なシーン。
「卒業」は略奪愛ばかり話題になったけど、そのあと、バスに乗ったあとの二人の表情にこそ、映画の真髄があったってことだ。
映画は終わり、人生が始まる。浮かれてばかりはいられないぞ、ってことかしら。
ああ、そのシーンをこういう映画の中に使うとは、マーク・ウェブ監督、なんてものごとをわかっている監督だと感心してしまう。
この映画もまた、映画が終わり、人生が始まるって、言えないこともないもんね。
それは、運命か、偶然か。
どっちでもいいけどね。
軽快なタッチのとっつきやすい映画なんだけど、案外、観れば観るほど味が出てくる映画かもしれない。
かめばかむほど味が出てくるラーメンみたいなもんかしらね。
ラーメンは、すすればすするほど味が出るんだ。
そうなの?
いや、山形水ラーメンはどうかわからないけど。





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「アンナと過ごした4日間」:竜泉バス停付近の会話

2010-01-06 | ★草63系統(池袋駅~浅草雷門)

ここは、一葉記念館。
どうして、こんなところにあるの?
このあたりは、樋口一葉の名作「たけくらべ」の舞台になった場所なんだ。
ああ、いずれは吉原の遊女となる女と僧侶となる男のすれ違いの恋物語ね。
いつの時代にも、男女の仲というのは、うまくいかないもんだな・・・。
あら、柄にもなく、いきなりもの思いに耽っちゃってどうしたの?
いや、イエジ・スコリモフスキ監督の17年ぶりの新作「アンナと過ごした4日間」もまた、報われない愛の物語だったなあと思ってさ。
報われないもなにも、完全な片思いだからねえ。
ポーランドの寒村に住む中年の男が、近くに住むアンナの部屋を夜な夜なのぞきこむ物語。
って、ストーリーだけを追うと、完全にストーカーの話じゃない。
まあ、まあ。そう言うな。物語だけじゃなく、田舎町の寒々とした風景や、さびれた建物の風情を味わう映画なんだから。
そうなの?こんな、面白味のない風景のどこに魅力があるの?
あれ、この風景の魅力がわからないなんて、お前もまだ若いねえ。
ありがと。
誉めてるわけじゃないんだけど。
百歩譲って、ほとんどセリフもしゃべらない野暮ったい中年男は、アキ・カウリスマキの映画に出てくる男たちみたいで、ちょっとおもしろかった。
そう、そう。俺はそれを言いたかったの。この男、ストーカーというより、世間ずれしていないぶん、愛の表現方法を知らないだけなんだよ、きっと。その証拠に、アンナの寝ている部屋に忍び込んでもそれ以上何もしない。
なんか、異様に肩を持つわね、この中年ストーカーの。ひょっとして、あなたにも思い当たるところがあるんじゃないの?
そう、俺も実は・・・って、そんなわけないだろ。
でも、アキ・カウリスマキの映画には、もう少しユーモアというか、愛すべきところがあるわよ。
それに比べれば、この映画のほうが厳しいというか、容赦ない。そこが、スコリモフスキ監督たる所以かもしれないな。
最後なんて、男の思いを断ち切る衝撃の風景がそそり立つ。
あれは、ドイツとソ連によって翻弄された国、ポーランドの映画だってことを頭の片隅に置いて観ると、また一段と感慨深い光景になってくる。
あ、そういう政治的意図のある映画だったの?
そんなことはないと思うけど、そういう歴史や文化が知らず知らずにじみ出してくる奥の深い映画だったってことさ。どうして、寒々とした風景でないといけないかわかるような気がしないか。
「たけくらべ」のラストのような花一輪ほどの救いも、ポーランドにはないってことかしらね。
ポーランドの歴史をずっと見てきた71歳のスコリモフスキ監督にはそう映るのかもしれないな。
“若い”私には、退屈にしか映らなかったけどね。
あらら。





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2009年総集篇

2010-01-02 | ■2009年総集篇

2009年話した映画の一覧です。興味のある映画をクリックするとその映画の会話にとびます。
2009年かあ。ベスト1はずっと「3時10分、決断のとき」だと思っていたのに、年末ギリギリになって「アバター」という怪物が現れた。もはや甲乙つけがたい。
アバター」は映画の革命。個人的な思い入れからすれば「3時10分、決断のとき」だってことでしょ。
わかってるねえ。常識的に考えれば、ベスト3は、1位「アバター」、2位「グラン・トリノ」、3位「母なる証明」ってところなんだろうけど、まだ誇れることを何もしていない男としては、1位「3時10分、決断のとき」、2位「ミルク」、3位「レスラー」とならざるを得ない。
じゃあ、女から見たべスト3を。1位文字どおり狂い咲いた愛の映画「愛のむきだし」、2位婚活ブームに冷や水を浴びせる「レイチェルの結婚」、3位女の強さを見せつけた「チョコレート・ファイター」。
さすが、ひねくれた選択だ。
相変わらずのへらず口ね。
なにはともあれ、2010年もよろしくな。
あいよっ。


錦25系統
●⇒亀戸九丁目:「ブロークン・イングリッシュ
⇒亀戸七丁目:「K-20 怪人二十面相・伝
⇒亀戸六丁目:「ウォーリー
⇒水神森:「チェ 28歳の革命
⇒亀戸駅通り:「エグザイル/絆
⇒亀戸一丁目:「我が至上の愛~アストレとセラドン
⇒江東車庫前:「チェチェンへ アレクサンドラの旅
⇒錦糸町駅前:「誰も守ってくれない

品97系統
●品川車庫前:「チェ 39歳別れの手紙
⇒品川駅前:「レボリューショナリー・ロード~燃え尽きるまで
⇒高輪北町:「ベンジャミン・バトン 数奇な人生
⇒泉岳寺前:「天使の眼、野獣の街
⇒高輪一丁目:「エレジー
⇒魚籃坂下:「イントゥ・ザ・ワイルド
⇒古川橋:「チェンジリング
⇒四ノ橋:「シリアの花嫁
⇒光林寺前:「愛のむきだし
⇒天現寺橋:「ジェネラル・ルージュの凱旋
⇒広尾橋:「ダウト~あるカトリック学校で~
⇒日赤医療センター下:「ワルキューレ
⇒西麻布:「リリィ、はちみつ色の秘密
⇒墓地下:「フロスト×ニクソン
⇒青山斎場:「フィッシュストーリー
⇒赤坂高校前:「レッドクリフPartⅡ-未来への最終決戦-
⇒青山一丁目駅前:「スラムドッグ$ミリオネア
⇒北青山一丁目アパート前:「グラン・トリノ
⇒信濃町駅南口:「ミルク
⇒信濃町駅前:「バーン・アフター・リーディング
⇒左門町:「チェイサー
⇒四谷三丁目:「レイチェルの結婚
⇒四谷四丁目:「ウェディング・ベルを鳴らせ!
⇒新宿一丁目:「子供の情景
⇒新宿二丁目:「ブッシュ
⇒新宿三丁目:「重力ピエロ
⇒新宿追分:「チョコレート・ファイター
⇒新宿駅東口:「スター・トレック
⇒新宿駅西口:「ハゲタカ

亀29系統
●なぎさニュータウン:「ターミネーター4
⇒南葛西小学校前:「ウルトラミラクルラブストーリー
⇒堀江団地:「レスラー
⇒堀江団地入口:「マン・オン・ワイヤー
⇒葛西南高校前:「剱岳 点の記
⇒新田:「愛を読むひと
⇒第四葛西小学校前:「人生に乾杯!
⇒葛西駅通り:「ディア・ドクター
⇒中葛西五丁目:「それでも恋するバルセロナ
⇒西葛西六丁目:「サンシャイン・クリーニング
⇒西葛西駅前:「HACHI 約束の犬
⇒スポーツセンター前:「美代子阿佐ヶ谷気分
⇒宇喜田:「アマルフィ 女神の報酬
⇒葛西橋東詰:「嗚呼 満蒙開拓団
⇒東砂六丁目:「バーダー・マインホフ 理想の果てに
⇒旧葛西橋:「湖のほとりで
⇒東砂四丁目:「サマーウォーズ
⇒亀高橋:「愛のそよ風
⇒北砂四丁目:「3時10分、決断のとき
⇒境川:「ポー川のひかり
⇒北砂二丁目:「コネクテッド
⇒北砂三丁目:「ノーボーイズ、ノークライ
⇒大島一丁目:「南極料理人
⇒西大島駅前:「ちゃんと伝える
⇒五ノ橋:「女の子ものがたり
⇒亀戸駅通り:「グッド・バッド・ウィアード
⇒亀戸駅前:「BALLAD 名もなき恋のうた

草63系統
●池袋駅東口:「クリーン
⇒豊島区役所前:「プール
⇒上池袋一丁目:「正義のゆくえ I.C.E特別捜査官
⇒上池袋三丁目:「九月に降る風
⇒上池袋四丁目:「リミッツ・オブ・コントロール
⇒堀割:「空気人形
⇒西巣鴨:「あの日、欲望の大地で
⇒新庚申塚:「のんちゃんのり弁
⇒巣鴨四丁目:「クヒオ大佐
⇒とげぬき地蔵前:「私の中のあなた
⇒巣鴨駅前:「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~
⇒巣鴨駅南口:「エスター
⇒本駒込六丁目:「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち
⇒千石一丁目:「沈まぬ太陽
⇒本駒込二丁目:「風が強く吹いている
⇒白山五丁目:「母なる証明
⇒東洋大学前:「スペル
⇒白山上:「わたし出すわ
⇒駒込千駄木町:「ゼロの焦点
⇒千駄木一丁目:「千年の祈り
⇒団子坂下:「イングロリアス・バスターズ
⇒千駄木三丁目:「脳内ニューヨーク
⇒道灌山下:「ジェイン・オースティン 秘められた恋」 
⇒西日暮里駅前:「戦場でワルツを
⇒西日暮里五丁目:「カールじいさんの空飛ぶ家
⇒西日暮里一丁目:「キャピタリズム マネーは踊る
⇒荒川四丁目:「パブリック・エネミーズ
⇒荒川三丁目:「ジュリー&ジュリア
⇒荒川区役所前:「誰がため
⇒荒川一丁目:「アバター
⇒大関横丁:「海角七号 君想う、国境の南
⇒三ノ輪駅前:「カティンの森





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