【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「コネクテッド」:北砂二丁目バス停付近の会話

2009-08-15 | ★亀29系統(なぎさニュータウン~亀戸駅)

あ、警察、警察。
なに、ほっとしてるんだ?
あなたにいじめられたら駆け込めばいいな、と思って。
なーに、言ってるんだよ。いつもいじめられてるのは、俺のほうだろ。第一、お巡りさんとか国際警察とか、市民を守ってくれる存在だと思ったら大間違いだぞ。
国際警察?
ああ、国際警察。お前も観たろ、「コネクテッド」の憎たらしい国際警察。
うん、正義の味方だと思ったらとんでもない食わせ物だった・・・って、この会話の始め方、「3時10分、決断のとき」を観たときの二人の会話に似てない?
そりゃ、そうだろ。「コネクテッド」は、近来稀にみる傑作西部劇「3時10分、決断のとき」の香港版なんだから。
えっ。「コネクテッド」って、「セルラー」の香港版リメイクじゃなかったの?携帯電話でつながれた男女が窮地を脱する現代劇よ。
ストーリーを追えばそうだけど、真の狙いは「3時10分、決断のとき」だって俺は踏んだね。
どうして?
3時10分、決断のとき」でラッセル・クロウを乗せた列車が出発するのは、3時10分。「コネクテッド」で主人公の息子を乗せた飛行機が出発するのも、3時10分。
そういえば、最後の対決は、片や駅舎、片や空港。どちらも交通の要所。
逃げてもいい立場の主人公に逃げない決断をさせるのは、愛する息子に自分の存在を認めさせたいという行動の動機までが一緒だ。
そして「コネクテッド」の主人公は「明日からバットマンになれ」と言われる。
バットマンといえば、クリスチャン・ベール。クリスチャン・ベールといえば?
3時10分、決断のとき」の主人公!
な、これだけ証拠がそろってりゃ、偶然の一致とは思えないだろ。
でも、そんな深読みしなくても、「コネクテッド」はすごくおもしろかったわよ。
廃屋に監禁されてしまった女性が壊れた電話で外部へ連絡を試みたら、見ず知らずのサラリーマンの携帯電話に繋がってしまうところから始まる、上等なサスペンス。
監禁したのは、国際警察を名乗る悪党一味。
たまたま女性の電話を受けてしまったサラリーマンは、望みもしないのに彼女を救うために駆けずり回る羽目に陥る。
巻き込まれ型サスペンスの典型的な設定よね。
昔ならヒチコックあたりが映画にしていそうな上等な題材だ。
香港映画だから描写は相当荒っぽいけど、女性を救おうとする男の前に、次から次に障害が立ちふさがって、ハラハラドキドキがまったく途切れない。
しかも、ヒチコックばりに上等なユーモアも随所に用意して、緩急自在に観客を翻弄する。
携帯の電池が切れそうになったときのエピソードなんて、これでもか、これでもか、っていうくらいてんこ盛りにハードルを用意して、一体どこまでやるの?っていう気にさせる。
街角に携帯ショップを見つけてほっとしたら、そこはなんとビルの三階で、そこまで行ってほっとしたら、こんどは客の順番待ちがすごくて、偶然割り込めてほっとしたら、こんどは店員にどの電池にするってやたらしつこく聞かれて、ようやく充電池を取りに行ったんでほっとしたら、店員は店の裏でいちゃいちゃして一向に戻って来ないっていうんだからな。
絶対あきさせないぞっていうスタッフの強い意志まで感じさせる。
サービス精神が違うんだよな。隅々にまで上等なサービス精神が行きわたっていて、ヒチコックでさえ脱帽するんじゃないかって思うほど上等な質の、いたって上等な一本ができあがった。
って、あなた、突然、上等、上等、ってちょっと言いすぎじゃない?
そりゃ、あたりまえだろ。俺たちが居るのは“上等警察署”の前だぜ。
あのねえ、それを言うなら、“城東警察署”。
わかってるって。俺にもそういうしゃれを言うサービス精神があるってことさ。
下等なサービス精神がね。











この記事、まあまあかなと思ったら、クリックをお願いします。



ふたりが乗ったのは、都バス<亀29系統>
なぎさニュータウン⇒南葛西小学校前⇒堀江団地⇒堀江団地入口⇒葛西南高校前⇒新田⇒第四葛西小学校前⇒葛西駅通り⇒中葛西五丁目⇒西葛西六丁目⇒西葛西駅前⇒スポーツセンター前⇒宇喜田⇒葛西橋東詰⇒東砂六丁目⇒旧葛西橋⇒東砂四丁目⇒亀高橋⇒北砂四丁目⇒境川⇒北砂二丁目⇒北砂三丁目⇒大島一丁目⇒西大島駅前⇒五ノ橋⇒亀戸駅通り⇒亀戸駅前