【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「グアンタナモ、僕達が見た真実」:東品川一丁目バス停付近の会話

2007-02-07 | ★品93系統(大井競馬場前~目黒駅)

こんなところに灯台?
昔はこのあたりまで海だったんで、その名残らしいわよ。
灯台っていえば、「グアンタナモ、僕達が見た真実」を思い出すな。
どうして?
「グアンタナモ、僕達が見た真実」、これこそアメリカにとって不都合な真実だ。
アメリカがグアンタナモというキューバの土地に法律も国際法も通用しない施設をつくり、パキスタン系のイギリス人をアフガニスタンにいたっていうだけでテロリストとして無実の罪で何年にも渡り拘束した事件の映画化。アメリカってひどい国ねってつくづく思ったわ。
いやいや、他人事じゃない。無実の罪の人間を拘束するなんて、日本だってやっている。
そういえば、「それでもボクはやってない」なんていう映画があったばかりね。
日本のことは棚にあげてアメリカを非難するなんて、灯台もと暗しってやつだ。
ははあ、それで灯台っていえば「グアンタナモ」ってつながるわけね。
ああ。いったん国ににらまれたら個人なんてわめこうが叫ぼうがどうしようもないっていう意味では、この事件も対岸のできごとじゃない。アメリカも日本もない、恐い話だ。
だけど、「それでもボクはやってない」は痴漢事件だったけど、「グアンタナモ」は、話がはるかに国際的で複雑よね。イギリス国籍のパキスタン人がアフガニスタンでアメリカに捕まり、なぜかキューバに移送されるなんて、80日間世界一周じゃないっていうのよ。
そもそもキューバなんてアメリカと敵対している国なのに、そこにアメリカの軍事施設があるなんて奇怪きまわりないもんな。
しかも、テロを防ぐには「怪しきは罰せず」じゃなくて「怪しきは隔離」でなければ防ぎきれないっていう理由で無実の若者を拘束しちゃうんだから。
その理屈は日本の痴漢事件だって同じだ。ことの大小によらず、「怪しきは罰せず」じゃなくて「怪しきは隔離」っていうのは最近の世界の隠れた常識になっちまったのかい?
でも、ついこの間もパキスタン系のイギリス人が実際にロンドンでテロを起こしたばかりだし、人種的に疑いの目で見られてもしかたないのかしら。
そういう理屈でいうと、男はみんな痴漢を起こす可能性があるんだから疑いの目で見られてもしかたない、って理屈になる。
テロリストも痴漢も同じ問題を抱えているってこと?
まさしく、そのとおり。テロの問題はエロの問題につながる。
でも、冷静に考えれば、片方は世界の行方を左右する大きな事件で片方は通勤電車の中の小さなできごとよ。
いつまでもそういうセンスでいるから世界はよくならないんだ。テロにどう対応するかって問題は、痴漢にどう対応するかって問題に通じる。どちらも世界のあり方を方向づける大問題なんだ。
じゃあ、どうすればいいのかしら。
ああ、難しいな。「グアンタナモ」の場合は、アフガニスタンにいただろうっていう期間、実はイギリスで恐喝かなにかで保護観察処分になっていたんでアリバイがあったっていう、つまり、自分が小さな悪いことをしていたんで、大きな疑いを晴らすことができた、っていう皮肉な話だもんな。
画面は拷問、拷問の連続で冷や汗が出たわ。しかも、正確なドキュメンタリーみたいな撮り方をしているから、やたら迫真感があるのよね。
再現ドラマってやつなんだろうけど、びっくりするほど本格的だから日本のテレビなんか足元にも及ばない説得力がある。
正直、日本人がイラクで人質になったときの映像を思い出したわ。あんな感覚が延々と続くような。
あれは、テロリスト側の映像だったが、アメリカ軍だって同じようなことをしているんじゃないかっていう不信感。
うん、結局、このイギリス人たちは無実が認められて釈放されるんだけど、彼らはきっとアメリカを許さないだろうし、アメリカはこうして敵を確実に増やしていくんだ、って「リング」を観終わったときのような妙な寒気を覚えたわ。
正義を照らし出す灯台はいったいどこにあるんだろうな。


ブログランキング参加中。よろしければクリックを。


ふたりが乗ったのは、都バス<品93系統>
大井競馬場前⇒新浜川橋⇒勝島⇒勝島一丁目⇒東京運輸支所前⇒都立高専前⇒都立八潮高校前⇒品川警察署入口⇒東品川三丁目⇒昭和橋⇒天王洲橋⇒東品川一丁目⇒品川車庫前⇒品川駅前⇒新高輪プリンスホテル前⇒高輪三丁目⇒高輪警察署前⇒明治学院前⇒白金小学校前⇒白金台駅前⇒白金台五丁目⇒上大崎⇒目黒駅前



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TBさせて戴きました (YOSHIYU機)
2007-09-24 22:55:49
テロとエロを結びつけるとは、画期的ですね(笑)

あの英国人は、あの時期にアフガンに行くとは
アンポンタンですけど、拷問にも耐え
当時の出来事を良い経験になったと語るとは
凄いな~!と思いました。
返信する
コメントありがとうございます。 (ジョー)
2007-09-25 21:18:22
■YOSHIYU機さんへ
マイケル・ムーアの映画「シッコ」の中では、このグアンタナモが無料で先進医療を受けられる最高の場所だと説明されていてびっくりしました。真相はどうなんでしょうね。
返信する

コメントを投稿