【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「魍魎の匣」:豊洲駅前バス停付近の会話

2007-12-23 | ★東16系統(東京駅~ビッグサイト)

遠くのほうにぼんやりと浮かび上るあの建物は何かしら?
うーん、魍魎の匣かな。
そんな縁起の悪いこと、言わないでよ。「魍魎の匣」は映画だけでたくさんよ。
でも、意外におもしろかったぜ、原田真人の「魍魎の匣」。
まあ、人は好き好きだから、ああいう猟奇的な世界に魅力を感じる人もいるんだろうけどね。
いや、そういう意味じゃなくて、観ている間中、いろんな映画を思い出しておもしろかったって言ってるんだ。
たとえば?
ミステリアスかつユーモラス雰囲気は「犬神家の一族」をはじめとする市川崑の金田一耕助シリーズみたいだし、会話やストーリー展開の強引なまでの速さは大林宣彦の「理由」みたいだし、阿部寛が出てくれば当然「トリック」を思い出すし、東京の風景はTBSのテレビドラマ「華麗なる一族」みたいだし、猟奇的な部分は江戸川乱歩の小説みたいだし、無数の線でつながれた人体はなぜか「羊たちの沈黙」を思い出すし、手足を失った体を見たときには「ジョニーは戦場へ行った」まで浮かんでしまった。
よく、そんないろんな映画を思い出すわね。でも、映画フリークの原田真人監督だから、どこかで見たような映像が出てきてもしかたないわね。
いや、俺が言いたいのはそういうしかたないってレベルの話じゃなくて、そんなぼんやりとした映画の記憶みたいなものが、この映画の全体にまとわりついているっていうことなんだ。
ぼんやりとまとわりついてくる存在?それこそが、魍魎なんじゃないの?この世界を覆うあいまいな空気みたいなもの。
なるほど、うまいこと、言うね。じゃあ、この映画全体が、魍魎の匣という話の本質を表現しているってことか。
そう考えると、宮藤官九郎の恐ろしい顔とか、寺島咲や谷村美月の最期の姿を見て、ただ単に気持ち悪いとばかり言ってられないわね。
気持ち悪い?そんなことはないだろう。本来陰気な話なのに、息を抜ける部分もあるし、妙に明るい部分もある。お祓いの場面の堤真一の立ち居振る舞いなんて、歌舞伎役者みたいで、男でも惚れ惚れする。
男たちの立ち姿は魅力的よね。堤真一、阿部寛、椎名桔平、宮迫博之がそろって乗り込んでいく場面なんて、もう少しで鳥肌が立ちそうだったわ。
黒木瞳だってよかったぜ。特に、映画中映画の時代劇の立ち回り。
というか、あれが一番印象に残った。あの場面をブローアップして原田真人監督に一本時代劇を撮らせたら、傑作ができあがるかもね。
ALWAYS 続・三丁目の夕日」を観て、山崎貴監督に怪獣映画を撮ってほしくなったようなもんだな。
謎解きっていう意味ではあんまりすっきりしないし、人間関係もなんかつくりものって感じがするけど、そうじゃない部分に目を向ければ結構おもしろい映画だったのかもしれないわね。
なんだよ、その中途半端な感想は。
だから、言ってるじゃない、魍魎って本来あいまいなものなのよ。
じゃあ、あそこに浮かぶ建物、あれの正体もあいまいなままでいいってことか。
そうね。何だか知らないほうがいいかもね。


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ふたりが乗ったのは、都バス<東16系統>
東京駅八重洲口⇒通り三丁目⇒八丁堀二丁目⇒亀島橋⇒新川⇒住友ツインビル前⇒リバーシティ21⇒佃二丁目⇒月島駅前⇒新月島公園前⇒日本ユニシス本社前⇒IHI前⇒豊洲二丁目⇒豊洲駅前⇒深川五中前⇒東雲橋交差点⇒東雲一丁目⇒ジャパン・エア・ガシズ前⇒東雲都橋⇒都橋住宅前⇒かえつ有明中高前⇒有明二丁目⇒有明テニスの森⇒有明一丁目⇒フェリー埠頭入口⇒東京ビッグサイト





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4 コメント

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こんばんは♪ (ミチ)
2007-12-25 00:13:24
TBありがとうございました!
原作を読んでいる者とすれば、よく2時間にまとめたな~と感心する気持ちと、やっぱり映像化は難しかったなと思う気持ちが半々でした。
一番の見所は
>堤真一、阿部寛、椎名桔平、宮迫博之がそろって乗り込んでいく場面
ですよね~!!
あとは最後の方でセリフが被るのもお構いなしにぺちゃくちゃ喋ってるシーンでしょうか。
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コメントありがとうございます。 (ジョー)
2007-12-31 09:25:49
■ミチさんへ
原作は、その長さにたじろいでしまってまだ読んでいないのですが、ちょっと読んでみたくなりました。男たちがグダグダつるんでるようすが印象に残る映画でしたね。
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なるほど、なるほど。。。 (かめ)
2008-02-15 11:39:25
いいお話をきかせていただきました。
私もこの映画を見ながらいろんな映画を思い出していました。
確かに魍魎ですね。。。
私は原作を敢えて読まずにこの映画を見ました。細かいことは考えても仕方ないので、映画全体を楽しみました。原田監督は映画大好きの映画人です。それだけに、映画大好きな人にはとても面白く仕上がって見えます。この映画は推理小説を読むように見たのでは、ちっともよさが分かりませんね。原作ファンの方にもこの映画そのものを楽しんでいただきたい。
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コメントありがとうございます。 (ジョー)
2008-02-16 22:25:25
■かめさんへ
そうですね、遊び心を感じて観るのが正解なんでしょうね、この映画は。
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