【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「はやぶさ 遥かなる帰還」

2012-02-14 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


「私はメーカーの人間です!」名セリフだな。
どこで誰が言うかはこれから映画を観る人のために伏せておくけど、サラリーマンなら誰もが身に覚えがあることばよね。
でも、劇的な対立の場面はその一瞬で、あとは淡々と事が運んで行く。
はやぶさの打ち上げから帰還までを丁寧に追っているんだけど、いろんな危機が訪れながらもドラマチックな展開というより、冷静に対処して乗り越えていくという印象。
主演の渡辺謙も現場のリーダーとして、指示や決断をするだけだから、どうしても静的な演技になって、手持無沙汰とは言わないけど、地味な見せ場に終始する。
まあ、実際のはやぶさのチームはプロフェッショナルの集まりなんだからそうかもしれないけど、もう少し熱い思いの噴出する場面や葛藤を表に現す場面があってもよかったかもしれない。
いまや、機器の操作はすべてコンピュータ上で行われるから、コンピュータの画面を眺めているばかりで映画的な見せ場にはならないというハンデもある。
通信の波形がひょいと上がったっていうのは、現場の技術者たちには凄いことなんだろうと想像はつくけど、それを画で見せられても素人は興奮できない。
下手な作為を施さず、あくまで誠実に映画をつくっているのは好感が持てるんだけど、そこをもうひとつ超えて行く表現がほしかった。
7年という途方もない時間の経過を何かで感じさせる工夫とか、60億キロという途方もない距離を感じさせる工夫とかあってもよかった。
そうまでしてサンプルを持ち帰ってくることの重要性を語る場面とか。
チーム員たちの家庭の事情とか人生模様とか、物語に起伏をもたらすためについつい手を出しがちな枝葉がいっさいなかったのは見苦しくなくてよかったけど、一方であまりにストイック過ぎる印象もある。
そういう意味では、不器用な映画なんだな。
技術は素晴らしいんだけど、それを飾り立てる術が足りない。
朴訥とした日本の技術開発者たちの姿そのままを体現しているような映画。
だからこそ、応援したくなっちゃうんだけどね。
瀧本智行監督、プロの仕事には間違いないからな。




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1 コメント

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rousse--@hotmail.com (Sohbet Chat)
2012-03-17 01:52:33
瀧本智行監督、プロの仕事には間違いないからな。

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