Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

藤岡幸夫/東京シティ・フィル

2022年08月05日 | 音楽
 フェスタサマーミューザで藤岡幸夫指揮東京シティ・フィル。いかにもサマーコンサートらしいプログラムだ。1曲目はコープランドのクラリネット協奏曲。クラリネット独奏は現代のレジェンド、リチャード・ストルツマン。御年80歳だ。椅子に座ってこの曲を吹くストルツマンの姿が目に焼き付いた。

 椅子に座ってとはいうが、ストルツマンは元気だ。演奏終了後、カーテンコールでは小走りに出てくる。勢いあまって指揮台の先まで行ってしまい、Uターンする。満場の喝さいを浴びたのち、また小走りに引っ込む。拍手が鳴り止まないので、もう一度小走りに出てくる。今度も指揮台の先まで行ってしまい、Uターンする。お茶目だ。

 2曲目はチック・コリアの「スペイン」。「アランフェス協奏曲」の第2楽章のテーマがチラッと出てくる曲だ。それをジャズの六重奏(ピアノ、ベース、ドラムス、トロンボーン、ソプラノサックス、ソプラノサックス/フルート持ち替え)とオーケストラとの協演用に編曲したものという予告だったが、実際にはマリンバも加わり、ジャズの七重奏とオーケストラとの協演になった。

 個々の名前は省くが、六重奏のメンバーはいずれ劣らぬ名手らしい。マリンバはリチャード・ストルツマン夫人のミカ・ストルツマン。日本人だが、この方も世界的に活躍するマリンバ奏者とのこと。これらの人々が繰り広げるアドリブ演奏に、聴衆はその都度拍手を送った。

 余談だが、なにか特別な機会のクラシック・コンサートにジャズが入ると、会場はなぜこんなに活気づくのだろう。日本でもそうだが、ヨーロッパでも、みんな(演奏者も聴衆も)ノリノリになる。サマーコンサートとか大晦日のコンサートとか、そんな機会にジャズは特別な出し物だ。

 休憩をはさんでリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」とレスピーギの「ローマの松」。ともにサマーコンサートの定番だ。演奏は「ローマの松」のほうが練れていた。第1部「ボルゲーゼ荘の松」の各パートの正確な演奏、第2部「カタコンバ付近の松」のステージ裏からのトランペットの見事な演奏、第3部「ジャニコロの松」のクラリネットのしっとりした音色と弦楽器のこみ上げるような熱い演奏、第4部「アッピア街道の松」の壮麗な演奏と、各部それぞれ聴きどころのある演奏だった。

 コンサート全体を通して、オーケストラの音が鮮明で、しっかり構築され、豊かに鳴ることが印象的だった。東京シティ・フィルの好調さを感じた。また藤岡幸夫のポジティブなキャラクターがコンサート全体に反映していたことも特筆ものだ。
(2022.8.4.ミューザ川崎)

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