Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

至上の印象派展 ビュールレ・コレクション

2018年03月08日 | 美術
 チューリヒのビュールレ・コレクションは、一度行ってみたいと思っていた美術館。オペラを観るために同地を訪れることは何度かあったが、その都度(同コレクションが気になってはいたが)きちんと場所を調べて行かなかったので、結局はチューリヒ美術館を見るだけで終わった。そのうち、2008年に同コレクションで盗難事件が起きて、その後は入館が難しくなったと聞き、訪れる機会を失った。

 そのコレクションが日本に来た。願ってもない機会。なお、同コレクションは2020年にチューリヒ美術館に移管されるそうなので、その後は見るのが楽になる。

 本展は、印象派・ポスト印象派を中心として、その前はクールベ、アングル、さらにはカナレットやフランス・ハルスまで遡り、またポスト印象派以降は、フォーヴィスム、キュビスムへと辿る構成。語弊があるかもしれないが、西洋美術史の“教科書”的な感じがする。個々の画家では、セザンヌやゴッホなどは、初期の作品から晩年の作品まで、作風の変遷を辿る構成。

 会場を一巡して、その全貌をつかんだ後は、さて、どこをどう見ようかと思案した。何か新しい見方を提案するとか、知られざる画家を紹介するとか、そういう展覧会ではないので。

 試しに、気に入った作品を3点選んでみた。3点は、考えるまでもなく、すぐ決まった。ルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」、セザンヌの「赤いチョッキの少年」そしてモネの「睡蓮の池、緑の反映」。どれも当たり前すぎて、自分でも拍子抜けした。

 ルノワールの「可愛いイレーヌ」は、今までいったい何人の人に見られたのだろう、何百万人か、何千万人か‥と考えた。美しすぎて、手垢のついた永遠の少女。セザンヌの「赤いチョッキ‥」は、よく指摘される“長すぎる腕”が必然と思えた。そう思えたことが嬉しかった。モネの「睡蓮‥」は、もっと離れて見たかった。写真撮影が許されているので、多くの人々が群がっていた。

 会場ではプロモーション・ヴィデオが放映されていた。同コレクションはE.G.ビュールレ(1890‐1956)の個人コレクション。ドイツに生まれたビュールレは、1920年に銀行家の娘と結婚。義父が買収した会社の再建のため、チューリヒに移った。会社は武器の商売で成功。ビュールレは武器商人だったことを隠さない点が好ましかった。
(2018.3.5.新国立美術館)

(※)本展のHP

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 下野竜也/日本フィル(追記) | トップ | イル・カンピエッロ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

美術」カテゴリの最新記事