Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

SOMPO美術館「ブルターニュの光と風」展

2023年04月02日 | 美術
 「ブルターニュの光と風」展が始まった。フランス北西部の大西洋に突き出したブルターニュの小都市カンペール。そこの美術館の引越し展だ。

 全体は3章で構成されている。第1章は「ブルターニュの風景―豊饒な海と大地」。サロン(官展)の画家の作品が中心だ。サロンに反抗した印象派の画家たちの視点からは、保守的な作品に見えるかもしれない。でも、穏やかで品がある。個性を競った近代絵画を追って疲れた目には、ホッとするものがある。

 チラシ(↑)に使われた作品は、アルフレッド・ギユ(1844‐1926)の「さらば!」だ。漁船が難破して、息子が波にのまれる。父親が最後の口づけをする。ブルターニュ地方ではこのような事故は日常的にあったそうだ。わたしはチラシを見たときには、上半身裸の人物は女性だと思った。どのような状況かと思った。キャプションを読んで納得した。もしカンペール美術館に行ってこの作品を見たら、どんな状況かわからなかったろう。引越し展のありがたい点だ。

 先を急ぎたいが、もう一点、テオフィル・デイロール(1844‐1920)の「鯖漁」もあげておきたい。画面の3分の2を海が占めている。男たちが小さな漁船に乗って鯖(さば)漁をしている。漁船は波にもまれている。男たちは漁に夢中だ。空は夕焼けに染まる。夕日が海に反映する。男たちを祝福するように。

 第2章は「ブルターニュに集う画家たち―印象派からナビ派へ」。モネ、ゴーギャンなどの作品もあるが、比較的まとまっているのは、ナビ派の画家たちの作品だ。その中でも強い印象を受けたのは、セリュジエ(1864‐1927)の「ル・ブールデュの老婦人」だ。海岸沿いの崖を背景に、老婦人の顔が大きく描かれる。その絵肌が(絵の具が退色したように)艶を失っている。キャプションによれば、下地を施さずに、古拙さを意図した技法だそうだ。どこかの倉庫から発見された由来不明の作品のような趣がある。

 第3章「新たな眼差し―多様な表現の探求」では、19世紀末から20世紀前半の作品が並ぶ。美術史的には「バンド・ノワール(黒い一団)」と呼ばれる画家たちの作品がいくつかある。たとえばシャルル・コッテ(1863‐1925)の「嵐から逃げる漁師たち」は、嵐をはらんだ暗雲の描写がリアルだ(本展のHP↓に画像がある)。

 「バンド・ノワール」以外の画家では、ド・ブレ(1890‐1947)の「ブルターニュの女性」に惹かれた(本展のHP↓)。点描法のようでもあるが、それともちがう「トレイスム(格子状技法)」と自称する技法で描かれている。明るくポジティブな作品だ。
(2023.3.31.SOMPO美術館)

(※)本展のHP

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