Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山田和樹/日本フィル

2014年05月12日 | 音楽
 山田和樹指揮の日本フィル横浜定期。さすがに意欲的なプログラムだ。1曲目はコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。当初発表ではチャイコフスキーだったと記憶するが、コルンゴルトに変わった。そのことでプログラム全体が一変した。

 第1楽章が始まると、オーケストラの透明で艶のある音に惹きつけられた。山田和樹が望むそのとおりの音が出ているのではないかと、そう思うほど、音に山田和樹の意思が感じられた。

 ヴァイオリン独奏は小林美樹。大柄の美人だ。どこか日本人離れしている。演奏も逞しい。男性的というと語弊があるが、線の細さを感じさせず、ぐいぐい弾いていく。まだ多少粗削りかもしれない。でも、それは文句をいっているのではなく、これからの急速な進歩を予感させるからだ。

 おそらく山田和樹の発案だろうが、ハープが指揮者の斜め前(第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの間)に、チェレスタが指揮者の真ん前に置かれていた。これが大成功だった。ハープは独奏ヴァイオリンと密接に絡み、ほとんどパートナーのような役割を果たしていることがよくわかった。またチェレスタは、とくに第3楽章でオーケストラに重要な装飾を付けていることがわかった。

 コルンゴルトの中ではこの曲が一番好きだ。映画音楽の再利用という方法は、現代でも有効ではないかと想像する――もっとも、本物の才能をもった人の場合は、ということだろうが――。例としては、あまり適切ではないかもしれないが、武満徹の「3つの映画音楽」が思い浮かぶ。あの曲も好きだ。

 2曲目はラフマニノフの交響曲第2番。これは‘大演奏’というべき演奏だった。どっしりと構えて、深掘りした演奏。とくに第3楽章は、遅めのテンポで隅々まで歌い尽くす演奏だった。

 端的にいって、山田和樹の一面を見た思いがした。ラフマニノフのこの曲は、ラザレフの指揮で聴いたばかりだし――その記憶がまだ耳に残っている――、また、広上純一の十八番でもあるので何度か聴いた。山田和樹の指揮はそのどれともちがっていた。ざっくりいって、一番‘保守的’だった。それは批判ではなくて、感性のありようとして、だ。一つの志向として、それもあり得る。

 こういう指揮者がどこかのオーケストラに腰を据えて、定期の半分くらいを振るようになれば、そのオーケストラの定期会員は幸せだ。
(2014.5.10.横浜みなとみらいホール)
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