Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラ・フォル・ジュルネ(3)

2014年05月07日 | 音楽
 今年のラ・フォル・ジュルネは2公演しか聴かなかったが、ヴォックス・クラマンティスを聴いた後で、沼野雄司氏の講演会に行った。よみうり大手町ホールから東京国際フォーラムまでの移動は無料シャトルバスを使ってみた。5分くらい待ったらすぐに来た。

 講演会のテーマは「アメリカ音楽8つの秘密~ガーシュウィンからライヒまで~」。1時間ちょうどの充実の講演だった。内容はアメリカ音楽の誕生から今に至るまでの8つの‘秘話’。その項目を記すと――

(1)ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」は‘アメリカ音楽’の見本だった。
(2)20世紀アメリカ音楽はリリー・ブーランジェ(ナディア・ブーランジェの妹)の早逝によってもたらされた。
(3)ジョン・ケージの「4分33秒」の初演時のタイトルは「4つの小品」だった。
(4)ガーシュウィンはアルバン・ベルクに憧れ、ひそかに影響を受けていた。
(5)アメリカ音楽はメキシコ音楽でもある。逆もまた然り。
(6)ヴァレーズはディズニーとのコラボレーションを望んでいた。
(7)コープランドは共産主義に強いシンパシーを感じていた。
(8)ライヒは自分の名字の読み方をわかっていない?

 以上、正確なメモを取ることができなかったので、一部記憶を頼りに書いているが、ともかく、大意そのような‘秘話’で興味深かった。

 本題以外で、沼野氏は「自分が死ぬときに聴く音楽は『4分33秒』がいいかな」と語っていた。半ば冗談だろうが、わたしは共感した。自分が生きてきたこの世の中の音、地球の音、たしかにそれが一番いいかもしれないと思った。

 その翌日は、ヴァネッサ・ワーグナーってどういうピアニストだったんだろうと気になった。ライブ・エレクトロニクスとの協演だったので、よくわからなかったのだ。ナクソス・ミュージック・ライブラリーを覗いたら、何枚かのCDが登録されていたので、少し聴いてみた。

 ベリオの「5つの変奏」が抜群に面白かった。水際立った演奏だ。ドビュッシーの「版画」とラヴェルの「夜のガスパール」も面白かった。昔の大家のような強烈なファンタジーで覆う演奏ではなく、音のすべてを(音の運動性を)白日の下にさらす演奏だ。

 もう一つ、ハイドンのピアノ・ソナタヘ短調HobⅩⅦ‐6がニュアンス豊かで敏感な演奏だった。そもそもこの曲は、ハイドンがもっともモーツァルトに近づいた例ではないだろうか。
コメント
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