賃金は月1回支払としており年俸も月給制と同様に給与計算期間の前半に退職意思表示をすれば当該期間終了日で労働契約終了か<627条2項適用>
使用者からの一方的な労働契約の解約については、これを「解雇」といい、労働基準法により少なくとも30日前の予告期間又は30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされている。(労働基準法20条)
もともと民法では、次のとおり、使用者からでも労働者からでも、いつでもどんな理由であれ、2週間の予告期間をおけば、労働契約を解約できるとなっている。しかし、使用者については、先の労働基準法の方が特例法になっているため、予告期間など14日ではなく30日前となる。使用者からの予告期間は14日ではあまりにも短く労働者が路頭に迷ってしまうので30日に修正変更したものである。
<民法627条1項> 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
労働者からの労働契約の解約申入れについては、労働基準法などのこういった特例はないので、この627条1項の条文どおり、2週間の予告期間をおけば、いつでも解約可能となる。
<民法627条2項> 期間によって報酬を定めた場合は、使用者からの解約の申し入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申し入れは、当期の前半にしなければならない。
<同条3項> 6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申し入れは3か月前にしなければならない。 (注)赤字の「使用者からの」は改正民法部分
この規定は、給与計算期間との兼ね合いからすると、次のとおり整理できる。(人事総務検定2級テキスト)
ア、給与計算期間の前半に退職の意思表示
⇒その給与計算の終了日をもって労働契約が終了することとになる。
イ、給与計算期間の後半に退職の意思表示
⇒次の給与計算の終了日をもって労働契約が終了することとになる。
これでは3項を含んだ説明、になっていないのではないかという疑問が出てくる。期間によって給料(=報酬)を定める場合とは、月給や年俸が考えられ、3項が6か月以上の期間となっているので、3項は具体的には年俸の事をいい、2項は月給の事を指していることになる。菅野労働法では、3項をもって「年俸制の場合は3か月前の予告が必要である」(3項)としている。
しかし、この3項の年俸制の解釈については、これを適用しないとする有力な説があるようだ。労働基準法では、毎月1回以上の支払いをしなければならない(労基法24条)としているので、年俸制であっても月給制と同じと考え、2項を適用または準用するのである。というのも、労働者からの労働契約の解約申入れに対し、3か月の予告期間はあまりにも長いというわけである。(野田進氏本人はどちらの説かは分からないがそのように述べている。)また、石嵜弁護士は、簡単明瞭に「年俸制であっても、労基法24条により毎月1回払いの原則があるため、・・民法627条第2項の対象になる」(就業規則の法律実務)と述べています。よく考えてみれば、月の支払いは年俸を12か月+ボーナス相当の月数でもって割ったもののような単なる年俸といったものについては、前もって、年の始めに年の俸給でもって決めらる他は、それによって年の始めに「給料」がアップダウンすることはあれ、月給とあまり変わらないような年俸もあるような気がする。
一方、3項は「6か月以上期間によって報酬を定めた場合は」となっていて、素直に読めば、あくまでも、「6か月以上の期間によって(の)報酬」=具体的には「年俸の場合」を想定しているといえる。年俸でもって決める場合に、例えばその人に大きなプロジェクトを任している場合など、3か月前の予告期間が必要とされるようなことも想定される。よって、そのような本来の年俸制であれば、3項はまだ意義があり適用になると考えるべきであろう。
注意したいのは、今回の改正民法では、2項は使用者からの解雇の申し入れ規定であり、3項においても「前項の解約の申し入れ」となっており、使用者からの解雇の申し入れの規定である。したがって、労働者からの解雇の申し入れは、1項に戻って、2週間の予告期間をおけば、解約できる。 従前からこういった解釈をするものもいたが、今回改正の「使用者からの」という文言が加わったことにより、より明確になった。確認すると、労働者からの解約の申し入れは、あくまでも2週間前であることになる。2・3項において適用すべきは、使用者側からの解約の申し入れということになる。
なお、この予告期間中には労働契約が継続しているので、労働者は未だ労働義務及び誠実義務を負っており、例えば、無断欠勤して引継ぎを怠ったり、会社のデータを持ち出したりしたら、労働者は相応の責任を負うことになる。
参考 労働法 菅野著 弘文堂
労働法第6版 水町勇一郎著 有斐閣
労働法概説 土田道夫著 弘文堂
労働法実務講義第3版 大内伸哉著 日本法令
人事総務検定2級講義テキスト LEC東京リーガルマインド
就業規則の法律実務 石嵜信盛編 中央経済社 (2021年6月14日追加分)
使用者からの一方的な労働契約の解約については、これを「解雇」といい、労働基準法により少なくとも30日前の予告期間又は30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされている。(労働基準法20条)
もともと民法では、次のとおり、使用者からでも労働者からでも、いつでもどんな理由であれ、2週間の予告期間をおけば、労働契約を解約できるとなっている。しかし、使用者については、先の労働基準法の方が特例法になっているため、予告期間など14日ではなく30日前となる。使用者からの予告期間は14日ではあまりにも短く労働者が路頭に迷ってしまうので30日に修正変更したものである。
<民法627条1項> 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
労働者からの労働契約の解約申入れについては、労働基準法などのこういった特例はないので、この627条1項の条文どおり、2週間の予告期間をおけば、いつでも解約可能となる。
<民法627条2項> 期間によって報酬を定めた場合は、使用者からの解約の申し入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申し入れは、当期の前半にしなければならない。
<同条3項> 6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申し入れは3か月前にしなければならない。 (注)赤字の「使用者からの」は改正民法部分
この規定は、給与計算期間との兼ね合いからすると、次のとおり整理できる。(人事総務検定2級テキスト)
ア、給与計算期間の前半に退職の意思表示
⇒その給与計算の終了日をもって労働契約が終了することとになる。
イ、給与計算期間の後半に退職の意思表示
⇒次の給与計算の終了日をもって労働契約が終了することとになる。
これでは3項を含んだ説明、になっていないのではないかという疑問が出てくる。期間によって給料(=報酬)を定める場合とは、月給や年俸が考えられ、3項が6か月以上の期間となっているので、3項は具体的には年俸の事をいい、2項は月給の事を指していることになる。菅野労働法では、3項をもって「年俸制の場合は3か月前の予告が必要である」(3項)としている。
しかし、この3項の年俸制の解釈については、これを適用しないとする有力な説があるようだ。労働基準法では、毎月1回以上の支払いをしなければならない(労基法24条)としているので、年俸制であっても月給制と同じと考え、2項を適用または準用するのである。というのも、労働者からの労働契約の解約申入れに対し、3か月の予告期間はあまりにも長いというわけである。(野田進氏本人はどちらの説かは分からないがそのように述べている。)また、石嵜弁護士は、簡単明瞭に「年俸制であっても、労基法24条により毎月1回払いの原則があるため、・・民法627条第2項の対象になる」(就業規則の法律実務)と述べています。よく考えてみれば、月の支払いは年俸を12か月+ボーナス相当の月数でもって割ったもののような単なる年俸といったものについては、前もって、年の始めに年の俸給でもって決めらる他は、それによって年の始めに「給料」がアップダウンすることはあれ、月給とあまり変わらないような年俸もあるような気がする。
一方、3項は「6か月以上期間によって報酬を定めた場合は」となっていて、素直に読めば、あくまでも、「6か月以上の期間によって(の)報酬」=具体的には「年俸の場合」を想定しているといえる。年俸でもって決める場合に、例えばその人に大きなプロジェクトを任している場合など、3か月前の予告期間が必要とされるようなことも想定される。よって、そのような本来の年俸制であれば、3項はまだ意義があり適用になると考えるべきであろう。
注意したいのは、今回の改正民法では、2項は使用者からの解雇の申し入れ規定であり、3項においても「前項の解約の申し入れ」となっており、使用者からの解雇の申し入れの規定である。したがって、労働者からの解雇の申し入れは、1項に戻って、2週間の予告期間をおけば、解約できる。 従前からこういった解釈をするものもいたが、今回改正の「使用者からの」という文言が加わったことにより、より明確になった。確認すると、労働者からの解約の申し入れは、あくまでも2週間前であることになる。2・3項において適用すべきは、使用者側からの解約の申し入れということになる。
なお、この予告期間中には労働契約が継続しているので、労働者は未だ労働義務及び誠実義務を負っており、例えば、無断欠勤して引継ぎを怠ったり、会社のデータを持ち出したりしたら、労働者は相応の責任を負うことになる。
参考 労働法 菅野著 弘文堂
労働法第6版 水町勇一郎著 有斐閣
労働法概説 土田道夫著 弘文堂
労働法実務講義第3版 大内伸哉著 日本法令
人事総務検定2級講義テキスト LEC東京リーガルマインド
就業規則の法律実務 石嵜信盛編 中央経済社 (2021年6月14日追加分)