元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

チェックオフは労働協約によっても組合員が使用者に支払委任解除を申し出ればできない!!

2016-07-23 16:18:06 | 社会保険労務士
 組合費を使用者に労働組合は取立委任・組合員は支払委任・労使協定を締結することがチェックオフの適法な手続き!!
 
 労働組合が組合員から組合費を確実に徴収するための制度として、チェック・オフというのがある。このチェックオフというのは、簡単にいうと、使用者に組合員の給料から組合費を控除してもらい、それを組合に納入してもらうという方法である。

 チェックオフが法律的に適性に行われるためには、
 1、労働組合が使用者に組合費の取立依頼をするという、労働組合と使用者の間で取立委任契約を結ぶこと(チェックオフ協定)
 2、組合員が使用者に対して、給料の中から組合費分を控除してそれを労働組合に支払ってもらうという、組合員と使用者の間で組合費の支払委任契約を結ぶこと
 3、当該事業場において、使用者と過半数労働組合(又はその過半数労働者の代表者。以下「過半数労働組合」という。)との間で、チェックオフについての労使協定を締結する必要があること
という3つの関係があることが必要で、どれが欠けても、このチェックオフは適法ではない。 

 まず1、2はセットであり、労働組合と使用者と組合員との三者契約であるので、労働組合から使用者への取立委任契約だけでは足りず、組合員から使用者へ組合費の支払委任契約という2つの委任契約があって初めて、チェックオフの民事上の委任関係が完全に成立することになる。

 では、3、はなにかと言うと、給料については、賃金全額払いの原則(労働者の経済生活の安定を確保するために労働者に全額の賃金を確実に受領させることが必要で、給料からの控除はしてはならないという原則。労基法24条1項)があるので、給料から組合費を適法に控除するためには、チェックオフについて過半数労働組合等と使用者の間で労使協定を締結しなければならないからである。(全額払いの「労使協定」による例外。労基法24条1項) これは、違反すれば罰則になるのであるが、この労使協定によって、30万円以下の罰金から逃れることになるのである。

 1、2、3、そろって民事・刑事(=労基法)の両方で、適法になることになる。

 ある組合員が組合費の会計に疑惑を抱き、一時組合費を納入するのを止めたいと思った場合は、2、の支払委任契約をやめることを使用者に申し出ればよい。いつでも委任契約については、解除できることになっているからである。(民法651条)
 
 ちょっと考えると、3、で使用者と過半数労働組合等との間で労使協定を結んでいるので、一(いち)組合員である者が、2の組合費支払委任契約の解除はできないように思えます。しかし、3の労使協定は、あくまでも先に説明したように、賃金全額払いの例外の「免罰」としての労使協定であって、2の組合費委任契約以上のそれに勝る民事上の意味を持つものではありません。

 また、この労使協定が「労働協約」(労働組合と使用者等との書面による正式に確認したもの)として結ばれていた場合はどうでしょう。一般的には、労働協約は組合員には労働契約としての効力(規範的効力)を持ちますので、組合員はその労働協約に従わなければならないことになります。(労組法16条) しかし、組合員に対して上記の規範的効力を持つ場合とは、「労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」に該当する協約を結んだ場合ですが、チェックオフ制度は、この待遇に関する基準に当たらないとされています。したがって、労働協約であっても、チェックオフに関しては使用者と労働者を拘束する規範的効力は持たないとされています。(判例支持)
 
 したがって、労働組合等と使用者の労使協定であっても、さらにはそれが労働協約で締結されていたとしても、2.の一(いち)組合員の意思が組合費の支払委任契約の解除となります。一組合員が自分の組合費の支払いをやめることを使用者に申し出ればよいことになるのです。

 2の一(いち)組合員の委任契約解除は、組合にとっっても厳しいものであるとはいえ、組合財政健全化に関する観点からは、組合にとって必要なものとも考えられるのです。

 参考:労働法 水町勇一郎 有斐閣
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする