同一条件での期間更新の解釈の方が時代の変化(解雇濫用法理の確立)にあっていると思われる
例えば、3か月の有期労働契約を結び、3か月の契約期間が過ぎても、契約期間の更新をせず、そのままその労働者が出勤して働き、使用者もそのまま何も言わず認めているいうことはないだろうか。さすがに最近ではあまり見かけなくなったようであるが、というのも、そういうことをしていると、いざ雇止めをしようとする場合に、困難な状況に使用者が陥ることが認識されるようになったからだと思われる。
この黙示の契約更新については、民法629条で次のように述べられている。
「(有期労働契約において)雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件でさらに雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は第627条の規定により解約の申し入れをすることができる。」(民法629条) すなわち、更新をしなくて労働者が引き続き労働に従事して、使用者も何も言わない時は、「従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたもの」と推定されるといっているのです。
更新後は、前と同一の条件で雇用ということですが、例えば、賃金、労働時間、勤務場所、勤務内容などは、前の条件で雇用されるということなのですが、雇用の期間だけは、ちょっと検討が必要です。というのも、続く条文で、「この場合において、各当事者は第627条の規定により、解約の申し入れをすることができる」となっています。なーんだ解約について記したものではないかと思われるかも知れません・・が、確かに民法627条は解約の規定ですが、民法627条をよーく見てください。
627条「当事者が雇用の期間を定めなかったときは各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができる。」
となっており、雇用期間を定めなかった(=無期労働契約)場合の解約になっています。黙示の期間更新を規定した629条は、私が( )書きで条文を書き足していましたが、これはあくまでも有期労働契約についての規定です。したがって、黙示の契約更新した場合にあっては、その労働契約の期間について、有期労働契約であったのが無期の労働契約に移行するとの解釈が定説になっていました。
そして、「第627条の解約の規定により」とは、無期の労働契約になった上で、解約申し入れはいつでも可能とする規定だったのです。
しかし、これもおかしいと思いませんか。民法627条は、労使双方ともいつでも解約できるとしていますが、今では無期労働契約であっては、使用者は解雇をするときは、簡単にはできません。期間の定めのない無期の労働契約の解雇については、裁判で解雇権濫用法理が確立され、労働契約法においても、その内容が盛り込まれました。解雇権濫用法理とは、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして無効とする」というあの規定です。民法627条は、無期労働契約において、いつでも労働者からでも使用者からでも解約できるとしたところですが、少なくとも使用者が解雇する場合においては、いつでもできるとは限らず、「客観的に合理的な理由」かつ「社会通念上相当」かどうかという眼を通して、行わなければならないということです。
そこで、素朴に629条の黙示更新の規定は、解雇濫用法理ができる前からの規定でして、契約更新後は、更新後無期契約になっても、民法627条の規定によって、使用者もいつでも解約=解雇ができる時代でしたので、それはそれでよかったのですが、解雇権濫用法理が確立されてからは、なかなか使用者の解雇が困難になってきました。
そこで、新しい解釈として、黙示の契約更新をしても、更新後の契約の期間も従前と同じとして、当初のケースでいうと更新後も3か月の労働契約の期間は変わらず、もちろんその他の賃金等も前と同じ条件で契約したと推定するものです。そうでないと、3か月の有期契約で雇ったアルバイトを、契約更新をせず、3か月を経過して雇ってしまった場合は、解雇がなかなか困難な、雇止めということももちろんできない無期契約になってしまうというのは、実態からしておかしいといえ、契約期間も同じ3か月として更新されると考えるべきであるとしているところです。
判例は、更新契約後も同じ契約期間としたのは、平成15年のタイカン事件(東京地裁)で支持されているが、無期に変わるとしたものも平成9年の紀伊高原事件(大阪地裁)等の最近までみられるところであり、立法的に整理し解決した方が良いように思われる。
参考;雇用法改正 日本経済新聞出版 安西愈著
なお、黙示更新後も契約期間が同じ条件とするのは、菅野和夫「労働法(第10版)p228」に詳しく述べられている。
例えば、3か月の有期労働契約を結び、3か月の契約期間が過ぎても、契約期間の更新をせず、そのままその労働者が出勤して働き、使用者もそのまま何も言わず認めているいうことはないだろうか。さすがに最近ではあまり見かけなくなったようであるが、というのも、そういうことをしていると、いざ雇止めをしようとする場合に、困難な状況に使用者が陥ることが認識されるようになったからだと思われる。
この黙示の契約更新については、民法629条で次のように述べられている。
「(有期労働契約において)雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件でさらに雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は第627条の規定により解約の申し入れをすることができる。」(民法629条) すなわち、更新をしなくて労働者が引き続き労働に従事して、使用者も何も言わない時は、「従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたもの」と推定されるといっているのです。
更新後は、前と同一の条件で雇用ということですが、例えば、賃金、労働時間、勤務場所、勤務内容などは、前の条件で雇用されるということなのですが、雇用の期間だけは、ちょっと検討が必要です。というのも、続く条文で、「この場合において、各当事者は第627条の規定により、解約の申し入れをすることができる」となっています。なーんだ解約について記したものではないかと思われるかも知れません・・が、確かに民法627条は解約の規定ですが、民法627条をよーく見てください。
627条「当事者が雇用の期間を定めなかったときは各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができる。」
となっており、雇用期間を定めなかった(=無期労働契約)場合の解約になっています。黙示の期間更新を規定した629条は、私が( )書きで条文を書き足していましたが、これはあくまでも有期労働契約についての規定です。したがって、黙示の契約更新した場合にあっては、その労働契約の期間について、有期労働契約であったのが無期の労働契約に移行するとの解釈が定説になっていました。
そして、「第627条の解約の規定により」とは、無期の労働契約になった上で、解約申し入れはいつでも可能とする規定だったのです。
しかし、これもおかしいと思いませんか。民法627条は、労使双方ともいつでも解約できるとしていますが、今では無期労働契約であっては、使用者は解雇をするときは、簡単にはできません。期間の定めのない無期の労働契約の解雇については、裁判で解雇権濫用法理が確立され、労働契約法においても、その内容が盛り込まれました。解雇権濫用法理とは、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして無効とする」というあの規定です。民法627条は、無期労働契約において、いつでも労働者からでも使用者からでも解約できるとしたところですが、少なくとも使用者が解雇する場合においては、いつでもできるとは限らず、「客観的に合理的な理由」かつ「社会通念上相当」かどうかという眼を通して、行わなければならないということです。
そこで、素朴に629条の黙示更新の規定は、解雇濫用法理ができる前からの規定でして、契約更新後は、更新後無期契約になっても、民法627条の規定によって、使用者もいつでも解約=解雇ができる時代でしたので、それはそれでよかったのですが、解雇権濫用法理が確立されてからは、なかなか使用者の解雇が困難になってきました。
そこで、新しい解釈として、黙示の契約更新をしても、更新後の契約の期間も従前と同じとして、当初のケースでいうと更新後も3か月の労働契約の期間は変わらず、もちろんその他の賃金等も前と同じ条件で契約したと推定するものです。そうでないと、3か月の有期契約で雇ったアルバイトを、契約更新をせず、3か月を経過して雇ってしまった場合は、解雇がなかなか困難な、雇止めということももちろんできない無期契約になってしまうというのは、実態からしておかしいといえ、契約期間も同じ3か月として更新されると考えるべきであるとしているところです。
判例は、更新契約後も同じ契約期間としたのは、平成15年のタイカン事件(東京地裁)で支持されているが、無期に変わるとしたものも平成9年の紀伊高原事件(大阪地裁)等の最近までみられるところであり、立法的に整理し解決した方が良いように思われる。
参考;雇用法改正 日本経済新聞出版 安西愈著
なお、黙示更新後も契約期間が同じ条件とするのは、菅野和夫「労働法(第10版)p228」に詳しく述べられている。