コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

バルタザールどこへ行く

2009-03-13 17:14:00 | レンタルDVD映画



風邪ひいた。鼻ズルズル。脳が溶けて流れ出している。そう思えるほど止めどない。頭はぼんやり。長谷川穂積が見事1RKO防衛。日本ボクシング史上、最高のボクサーの一人ではないか。CATVのシネフィル・イマジカにチャンネルする。今月はロベール・ブレッソン監督特集らしい。『バルタザールどこへ行く』(1964)を放映していた。バルタザールはロバの名前。ロバが主人公。始終出ているという意味では。擬人化はない。人間にこき使われる、ただのロバ。ロバ視点はないが、ロバの長い顔のクローズアップは多い。大きく黒濡れた眼。ロバの姿を借りた人間の物語。かもしれない。俺たちもこき使われ、くたびれ、涙ぐむ。文句はいえない。滅入る。音楽ほとんど無し。ピアノがときどき鳴る。ピレネーの農村が舞台。バルタザールはあちこち転々。たいてい、重い荷物を運ぶ辛い仕事だ。サーカスにも売られた。かけ算ができる天才ロバになる。一ケタずつの答えを脚を上げて答える。合図通りに。歓声。サーカスに売った飼い主の貧乏男を会場で見つける。ワインを瓶からラッパ飲みしている。死人のように生気がない。バルタザール答えそっちのけ。ウオーウオーと歯をむき出して鳴き出す。4、5人がかりでも抑えられない。観客大拍手。サーカス赤っ恥。追い出される。元の貧乏男の家に。いろいろなことが起きる。悪い若者たちに連れていかれるバルタザール。闇夜に荷物を積んで月の丘を上る。ひどく尻を叩かれながら。後ろから銃声が。立ち尽くすバルタザール。かすめる弾丸。逃げ去る若者たち。傷口から流れる血。流れ弾に当たった。茂みに隠れて一夜を明かす。羊飼いの犬の鳴き声。羊の群のなかに座っているバルタザール。もう動けない。犬は鳴き通しだ。羊はみなロバに尻を向けている。その中心で横たわる。大きな瞳を閉じるバルタザール。fin。鼻ズルズル。鼻ズルズル。

(名) バルタザール(Balthazar) 東洋から来て赤ん坊のイエスに贈り物をした東方の三博士の一人(聖書)、 男子名; 姓 、12.3リットル(13クォート)入っているワインボトル

(敬称略)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする