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河合案里さんを擁護する

2020-06-19 05:06:00 | 政治
豊田真由子さんの騒ぎのときと同じことを思いました。河合案里さんの「事件」にも、その人格形成にも、この国の政治や教育の「歪み」を見出すことができる優れた記事です。

週刊文春(2020.6.25号)
「もらい事故って感じですよ」
河合案里<独占告白>3時間
自殺未遂、全裸事件、買収・・・すべてを聞いた
(常井健一)


まだネットで読むことはできないはずなので、いくつか記事の背景について記しておきます。

第一に、記者と河合案里さんは約一年前に、彼女が参院選に初当選したときに、「代議士の妻が国会議員になる時」という特集記事の取材をきっかけに交流を続けていて、じゅうぶんな信頼関係を前提としたインタビューであること。

第二に、河合案里さんはかつて創設期の慶応大学総合政策学部から、大学院政策・メディア研究科に進み、「政策と民営化・民間活力の導入」を研究テーマにしにしていたこと。

第三に、その後、海洋研究開発機構や科学技術振興事業団に勤務経験を経て、当時は落選中の広島を選挙区とする元衆議院議員の河井克行氏と知り合い、27歳で結婚する。出身は宮崎県ながら、夫の地元の広島県議を4期つとめ、県知事選に立候補したこともある。

第二の学歴については、約30年前に神奈川県のど田舎に創設され、大学改革の先進モデルとして注目されたKFC(慶応藤沢キャンパス)の特異性を考慮しなければなりません。その看板学部である総合政策学部(加藤寛学部長)に全国から集まった初期の学生には、優秀でユニークな人材が少なくなかったことが、後に企業社会に入った彼らの「毀誉褒貶」によって裏づけられています。

第三は、つまり、ほとんど実務経験はなく、若くして国会議員の妻から県議と政治生活が彼女の半生の大半を占めてきたということです。政策づくりを研究していた学生時代から、志望どおり政治に関わる幸運な人生を歩み出したわけです。

以上を踏まえたうえで、下記の応答を読むと、ある痛ましさを私は感じざるを得ません。

夫(河合克之氏)はスキャンダルが多い。例えば文春が報じた秘書への暴行やパワハラ疑惑、どう見ていました?、女性記者の身体を触るなど、セクハラ疑惑も過去に報道されました。

「あれには怒った。『ちゃんと最後までやらないからこんなことになるのよ。途中でやめちゃダメ』って」(29p)

参院選選挙期間中に、ウグイス嬢に規定を越える報酬を支払ったことで公職選挙法違反を問われ、検察の家宅捜査を受けたときの話。

『調べさせてもらう』と(検察官が)言うので、『そんなに言うなら全部調べれば』と言って、私は部屋着をパーッと脱いで、生理中だったから、『ナプキンの中も調べたらいいでしょう』って、ポンと投げたんです。皆さん、なんか、見ないようにしていましたよ。だから言ったんです。『膣の穴でも、お尻の穴でも見ればいいじゃない』(29p)

前段は、夫にハッパをかける「気丈な妻」として、後段は「武勇伝」として語られています。若き日に志した「政策づくり」に直接携わる立場に身を置きながら、30年を経てみれば、「下世話」にも通じたくらいしかアピールすることがなかったのでしょうか。

戦後日本の政治学において、欧米政治学の翻訳や紹介ではない、数少ないオリジナリティを持った「市民自治」の政治理論や政策論を唱導した松下圭一は、自治体・国・国際と政治を分節化して構想することを強調しました。

たしかに、自治体については市民自治の政策は広がり深まりましたが、国の政治や国際政治はアメリカの属国である限り、松下の構想する「分節主権」などあらかじめ成立しないのは明らかです。もちろん、それは承知のうえで、市民自治を対置させることで統治を問い直させるのが松下の戦略だったのかもしれません。

つまり、主権国家ではない日本にほんとうの意味で政治はないし、したがって政治家も必要とされず、いないと考えてみれば、政党や政治家の腐敗や劣化は原因ではなく、結果であることが見えてきます。

Chantal Chamberland - What a Difference a Day Made


(止め)
コメント
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