コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

未来・嘉田由紀子党首の問題発言にネット沸く

2012-12-07 23:52:00 | 政治
う~む、これとは逆の放言を自民党・安倍総裁がやらかすのではないかと期待していましたが、嘉田さんが「お先にイ」するとは。

 第二次世界大戦は2つの原爆で、戦後、日本は戦中の軍国主義から抜けでました。
 今回の原発事故は大きな犠牲を国民に強いたが、これを乗り越える新しい社会システムが求められる、今回の選挙はそういう選挙です。




選挙期間中のためか、いまのところメディアはとりあげず、ネットのみで鬼の首をとったように騒いでいるが、これは「放言」ではない。「問題発言」でもない。メディアがとりあげにくいのは、こういう「天災史観」を共有してきたからだ。

さきの大戦において、日本が敗戦を受け入れ、降伏するきっかけとなったのは、アメリカによる原爆の投下ではなく、ソ連の参戦だった。今日では、それが定説であるが、戦後の物語はそうではなかった。沖縄の玉砕、東京大空襲、原爆の投下など、国民のこれ以上の苦難を払うために、天皇陛下が終戦のご聖断を下された。それが国民が共有する物語だ。

アメリカが占領にやってくる以前から、「鬼畜米英」は捨て去られ、アメリカによる戦争犯罪にひとしい日本国民虐殺の数々を、まるで天災のように日本人は受け入れた。そこでは敗戦を終戦と読み換えるの同じ没主体的な心理がはたらいていた。

右がかった人たちは、アメリカの原爆のおかげで、日本は民主国家に生まれ変わることができた。そういわんばかりではないかと嘉田発言にお怒りなのだが、的外れなのである。空から降ってくるナパーム弾や原爆を、雨や嵐のような自然災害にみなすところから、戦争の被害者どころか、被災者として自らを瞞着して戦後は続いてきた。加害の責任など、国民の意識には上がらなかった。

したがって、この前段の発言は、間違ってはいるけれど、戦後の大多数の国民意識を代弁するもので、とりたてて奇異ではない。むしろ問題は、後段にある。戦争の惨禍を天災とする欺瞞をフクイチの原発事故でも繰り返そうというのか。そう憤るべきだと思う。東北を主とする東日本を襲った地震と津波は天災だが、フクイチの原発事故はけっして天災ではない。

もちろん天災ではなく人災だというのでさえ、じつはきわめてふじゅうぶんで、東電と政府機関の怠慢と隠蔽は、原子力関連法を適用するだけでも、あきらかな不正であり、犯罪的行為だと思う。原子力関連法以外の刑事罰に問われても、なんら不思議はないと思う。責任と責任者は、明らかにされないだけで、必ずいる。

これもやはり、今日の定説といえるが、先の戦争において、日本国民の総意に基づき戦争をしたように、フクイチをはじめ54基もの原発を建設したのには、日本国民の合意を抜きには考えられない。フクイチ事故を引き起こした、そうした「社会システム」を問わずして、どのようにそれを乗り越え、「新しい社会システム」を構築できるのか。理念どころか理屈にもなっていないじゃないか。怒るならそこに怒るべきだと思う。 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする