コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

諸先輩方のご指導ご鞭撻を賜りまして

2009-07-08 00:15:00 | ノンジャンル
 6月にN氏が亡くなり、この10年で世話になった先輩3人を失ったことになる。3人と郷里は別だし、学校や会社を同じくしたことはないが、私を後輩のように世話してくれた人たちだった。何の用もないのに、「元気かい」と電話をくれる人はいなくなった。説教じみたことは一切いわず、自分や家族について語らず、いったいどんな話をしてきたか、もう思い出せないくらいだ。

 私も何かを相談したり、頼んだ覚えはない。仕事や人の紹介をしてくれるときも、彼らが私に頼むという形だった。金を借りようとすると、たいてい、「飯でも食うか」と自宅や酒場に呼ばれた。面倒くさいな、と勝手なことを思った。中元や歳暮を贈ったことはない。賀状も出したことはない。彼らが、とくに私を気に入っていたわけではなかったのだと思う。ただ、いつまでも腰の定まらぬ暮らしをしている人間が、周囲には私だけだったのだと思う。

 たぶん、彼らの先輩も同じように彼らを世話したのだろう。そのお返しを私にしているのだろう。そんな風に思っている。先輩に恩返しするのではなく、受けた恩義を後輩に返す。彼らは互いを知らなかったが、彼らの流儀のように思えたほど、その淡々とした態度は共通していた。私も、彼らの流儀に従うべきなのだろう。何の見返りも求めず、他人を気づかい、できるかぎりの世話をする。

 そんな酔狂な真似は、とてもできそうにない。


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